映画レビュー0512 『ヤコブへの手紙』
これまたオススメされた映画ですが、近場には全然置いていなかったのでやむなくネットで借りました。
ヤコブへの手紙
超シンプルな良作。
そんなわけでネットでレンタルして観たわけですが、なんでこんな良い映画が店頭にないのか!! と怒り狂うほど良い映画でした。「怒り狂う」とは程遠い内容なんですが、良い映画でした。
フィンランドの田舎で一人暮らす、盲目のヤコブ牧師。彼の元に届く手紙を読み、その返事を書く仕事についた元終身刑の女性と、ヤコブ牧師のやり取りがほとんど全ての映画です。あとは郵便配達のおっさんがちょろっと絡んでくるぐらいで、まあかなり地味な映画ではあります。
上映時間74分、内容は超シンプルでもはや説明するものもないんですが、そのシンプルさがしみじみと体に染みこんでくるイメージで、まあこれまた泣きましたよね。そりゃあ。泣けないわけがない。
よくぞ74分でここまでの感情を、という思いがありつつも、ここまでシンプルな物語にすればこれ以上長い物語も不要だと思えるし、無駄を極力省いて、技に走らずきちんと物語を届けようとする、ある意味愚直なスタイルはとても好感が持てました。
いけ好かない元終身刑囚と、世界一献身的なんじゃないかと思える盲目の牧師様、アイコンとしてはこれ以上ないわかりやすい組み合わせですが、それだけに無駄な前フリもいらず、短く綺麗にまとめやすいわけで、その“割り切った作り”がうまく作用している映画ではないでしょうか。
反面、わかりやすすぎる組み合わせなだけに、素直に感動できなかった、というような人もいそうな気はします。展開だって読めるものではあるし、その気持ちもわかりますが、ただそこに説得力を与えていたのが、やっぱり主演二人の演技だと思うんですよね。マジで終身刑だったんじゃないの、って女優さんと、いやこの人本当に盲目の牧師でしょ、って俳優さん。
フィンランドの役者さんだけに、一般的な日本人としては他の映画のイメージがないというのも大きい気がします。いくら演技がうまかったとしても、これがメリル・ストリープとモーガン・フリーマンだったら全然観え方が変わってきたのは間違いないでしょう。全然知らない役者さんが出てくる映画、っていうのもまたいいもんだな、と改めて思った次第。
これで「あのヤコブ牧師が帰ってきた!」とか言って「ヤコブへの手紙2」とか作られたら興醒めですが、まあその心配は無いでしょう。
個人的に、配役が極力少ない、1人とか2人で展開する映画は割と外さない印象が強いんですが、それは人が少ないとシンプルでわかりやすくなるためだからなのか、はたまた内容勝負の自信の現れでしっかり作られているものが多いからなのかその辺はわかりませんが、今回もまた、その印象を裏切らない名作が観られて大満足でした。
誰かとこの映画を知っている、観たことがある、って話で盛り上がったりすれば「おっ、この人本当に映画好きなんだな」ってわかるような、ちょっと“通”を気取れる映画かもしれません。ですが、そんな不純な気持ちで観る必要もないほど良い映画なので、興味がある方はぜひ一度観て頂きたいですね。
ただあんまり置いてないという…。ほんとにね、ビッグデータ頼りのTS●TAYAはダメだなと改めて思いましたね。まあ、借りたのはT●UTAYA DISCASっていうオチなんですが。
このシーンがイイ!
もうそりゃあ、ベタですが牧師さんが例の手紙を持ってきたところですよね。その前からもうウルウル来てたんですが。どうも感情込めた泣きの演技に弱い。
ココが○
とにかくシンプルな点でしょう。本当にストレートでシンプルなストーリーがすごく良かったです。余計な話を盛らない、大きく見せようとしない潔さ。
ココが×
とても地味で、ある意味では非常に単館系っぽい映画なので、アクション映画大好きー♪ みたいな人にはオススメできません。ダメな人はダメなんだろうな、こういうの…。
MVA
主演の二人は本当にどっちも素晴らしかったんですが、どちらか選ぶとすれば、こっちかな。
ヘイッキ・ノウシアイネン(ヤコブ牧師役)
もう本当にリアル過ぎてリアル過ぎて。
お爺ちゃんらしいかわいさみたいなものもほんのりあって、爺ファン必見と言えましょう。素晴らしい演技でした。