映画レビュー0455 『サイコ』
言わずと知れたヒッチコック・サスペンスの代名詞の一つ。
まだ観ていませんが、そのうち観る予定の「ヒッチコック」でも主題にあげられている映画なので、一度観ておきたかったぞ、ということで。モノクロ映画です。
サイコ
ヒッチコック、やるじゃん。
面白かったですね。今まで観たヒッチコック映画の中では一番だったかもしれません。
序盤は横領OLの逃走が主体で、「果たして捕まるのか否か…!」というような様相を呈している…と思いきや、例の超有名なシャワー絶叫シーンを経て彼女は早々に戦線離脱。そこからサスペンスとしての本編が始まる…というようなお話になっております。
古い映画だけに仕方がないものの、相変わらず今観ると非常にチープなシーンがいくつか見られ、刺すシーンにしてももうちょっとうまく撮れたんじゃないのとか、階段を落ちていくシーンにしても悪目立ちしすぎ(裏窓の落下シーンとまったく同じ感じ)な感は否めず、「あー、やっぱりヒッチコックはこういうの好きなんだなぁ」と、またも外すんじゃないかと嫌な予感がしましたが、全編通して観ると面白かったし、かなり集中して引き寄せられるように楽しみました。
最後まで観てから思い出すと「いやいやそれはちょっと無理があるんじゃないの」というような、いわゆる観客のミスリードを狙ったシーンもいくつかあったりして、そこを考えるともう少し評価を落としてもいいところではあるんですが、ただ作品を通しての緊張感と、集中力を引き出す物語の展開はすごく良かったので、結果的にこれはいい映画だぞ、という結論。「矛盾があっても面白ければ気にならない」理論に乗っかった映画ですね。
ただ、物語の内容としては当然50年以上経っているだけに想像がつくものではあるし、特に珍しいというものでもないので、結末を想像してそれに向かって追っていくだけ、という見方だと面白くないかもしれません。それだけにミスリードがある意味で生きてくるわけでもあるんですが、この映画に関してはあまり種明かしに頭を持っていかずに、展開する映像をただ追っていくことに集中したほうがいいと思います。実際、それを可能にするだけの展開力と演技力があるので、そういう意味では「
」と。退屈なサスペンスだとどうしても種明かしに頭がいきがちなので、そうさせない作りは大事だなと感じた次第です。
どことなく「シャイニング」のような薄気味悪い雰囲気と、アドベンチャーゲームのような一歩一歩進む感覚が好き。今だともっと複雑な映画にされちゃうと思うので、この時代らしいストレートな展開は「特異な人を浮き立たせる」意味でも効果的。楽しませて頂きました。
このシーンがイイ!
やー、このオープニングすごく好きだなー。
昔の映画らしい「映画の劇伴です!」という主張たっぷりのBGMに、シンプルで動きのあるグラフィック。古いんだけど、カッコイイ。クール。
「シャレード」なんかもこういう感じ(実際ヒッチコック映画っぽさを狙ったと言われてますが)でしたが、こういうオープニング本当に好き。ワクワクしますね。
ココが○
やっぱりですね、モノクロなのがいいんだと思うんですよ。
嫌いな人は逆なんでしょうが、僕の場合はモノクロ映画って逆に集中力が増す感じがするんですよね。余計な情報が入ってこないし、情報量が少ない分、より集中して見ざるを得なくなるというか。
ライティングも効果的に見えるし、昼間も薄気味悪い雰囲気が出るし。モーテルより少し高い位置にある洋館の雰囲気も抜群。
ココが×
ところどころで顔を出す、ヒッチコックの“実験”。
意欲的に撮りたい、他と違う見せ方をしたい、っていう感じなんだと思うんですが、それが出すぎてて(今の時代に観ると)うまく消化しきれていない感じが。言ってみれば「ここ注目でっせ!!」と強調されてる感じがして、もっとストレートに進めて欲しいなぁと思っちゃうんですよね。
毎回書いてますが、僕のようなド素人が偉そうに言っていい話でもないんですが。
MVA
ラストに出てきて解決編を進める精神科医の人がまー大げさで鼻につく演技で気になりましたね。
それはさておき、この映画はこの人しかいないんじゃないかということで。
アンソニー・パーキンス(ノーマン・ベイツ役)
モーテルの主人である好青年。
観ていただければ、まあこの人だろうねと思っていただけるんじゃないかと。好青年なんだけど、ちょっと怪しい感じもお見事です。