映画レビュー0359 『ロック・オブ・エイジズ』
予告編を観て気になっていたシリーズ。そんなのばっかですが、まあいいじゃないかと。ホントは劇場行きたかったんですが近くでやってなかったので行けなかった映画です。
ちなみにあんまり気にしてる人もいないでしょうが、まだ咳はあるものの肺炎はだいぶ良くなって来ました。
ロック・オブ・エイジズ
十代向けか? 薄いロックミュージカル。
またもミュージカル映画なわけですが、実は観るまで全然こんな映画だとは思っていなくて。予告編でミュージカルっぽいシーンって無かった気がするんですよねー。もっと「ロックだぜ!」ってちょいコメディタッチでロックを描く音楽ドラマ的な、言ってみれば「あの頃ペニー・レインと」のもっとキワモノっぽい感じの映画なのかと思ってたんですが、蓋を開けてみると所々で歌の挟まるミュージカルでした。
まあそれはいいでしょう。ミュージカルでもいい映画がたくさんあるのは最近観てきてわかっています。ただ、この作品はどうもそれほどのレベルにないような気がします。
まず、核となるストーリーが基本恋愛モノで、いくつかの恋愛が同時進行するような形の話なので、そういう話に興味が無い僕にとってはあんまり楽しめない上に、同時進行であるが故にどれも内容が薄く、またかなり「ロックは勢いだぜ!」とばかりに勢い任せな展開、かつ(ミュージカル映画ではありがちですが)話自体もベタだったりするので、全然感情移入できないし、ぶっちゃけちゃえば話自体が面白くない。
「歌手を目指して上京してきた女の子」も「ライブハウスが倒産の危機」も「バーレスク」と同じ既視感のある展開だし、新鮮さに欠けます。かと言って単純に観た順番の問題なのかというと、こっちを先に観てから「バーレスク」を観ても、あっちはあっちで楽しめると思うんですよね。
残念ながら、どうもミュージカル部分も主演の二人も力量不足な感じがありました。歌はうまいんでしょうが、オーラに欠けるというか。
主役二人と比べれば、脇役陣は良いメンバーが揃っていたと思いますが、それでもやっぱり「バーレスク」と比べると弱かった気がしますね。あっちは「ちゃんと音楽で見せます」って感じがあったんですが、こっちは「俳優業の片手間で歌もやります」みたいな軽さ、なんというかファッションっぽい音楽っていうんですかね。映画全体にそんなやや軽めのテイストが感じられて、だったらその軽さを活かしてもう少し笑いに寄せた方がいいと思うんですが、中身はなんか変に真面目に恋愛を見せようとしている感じがして、地に足がついてないような映画に見えました。
僕は音楽としてはロックも好きなので、そういう部分も期待していたんですが、どうも曲のチョイスも似たようなものが多いように感じられて、あんまり映画の抑揚に貢献していないというか、ミュージッククリップをただ流し見しているような感じで。他のミュージカル映画って、こんなんじゃないんですよね。受ける印象。グイグイ刺さってくるし、良い意味で重たい。この映画は、なんか軽い。
ロックが軽いっていうわけじゃなくて、多分選曲と入れ方、ストーリーとの絡ませ方で軽い。あとストーリーそのものも。
うまく言えませんが、これはきっと作り手のセンスの問題なんだと思います。どうしてこうなっちゃったのかな、という感じで観てました。
唯一、ロックスター・ステイシーを演じるトム・クルーズが強烈だったんですが、それが無ければ本当にどうにも軽くてどうしようもない映画になったんじゃないかと思います。
ただ、強烈だったとは言え彼の人生に深く触れる話でもないので、彼は彼で単なるピエロ的なポジションにとどまってしまい、そこもまたダメで。おまけに彼にとってのキーマンである記者役のマリン・アッカーマンも申し訳ないけどかわいくない。ポール・ジアマッティも浅い人間像のキャラクターで良さが消されてた気がするし、全体的に残念な映画、というのが正直な感想。
もーっとノリノリでグイグイ惹き込まれる映画を期待してたんですけどね…。内容的には残念ながら浅いもので、これで「ロック最高だぜウヒョー」って言えるのは十代までかな、と。
無念ナリ。
このシーンがイイ!
うーん、唯一映画らしい感じがしたのは、マネージャーのポールがシェリーと喧嘩した直後のドリューをスカウトする場面。ありがちだけど、映画らしいシーンでよかったなと。
ココが○
はっきり言って内容がうっすいので特にどこがいいとか無いんですが、トム・クルーズの狂ってるスターっぷりはさすがで、見どころと言えるかな、と。まあ、でもそれも活かしきれてないという…。
ココが×
結局総括すると、どれもこれも薄っぺらくて作り込めてない感じ、ですかね。「バーレスク」「シカゴ」と比べて観ればわかると思います。(「レ・ミゼラブル」は全編歌なのでまた別として)
なんというか、僕はロック教ではないですが、それでも「このレベルでロックを語るのはロックがかわいそう」って思いますね。
ロックを愛してやまない人が観たら「最高!」って言うのかなぁ。むしろ逆な気がするんだよなぁ…。こんなに浅くないでしょう、ロックって。
MVA
主役その一・シェリー役のジュリアン・ハフはなんか出から「オセロの中島(占い師の方)っぽい…」と思って興ざめ、主役その二・ドリュー役のディエゴ・ボネータは単純に垢抜けてない。トム・クルーズは良かったけど“キャラだけ勝負”な感じでちょっとMVAにはそぐわないかな、と。
そんな中、候補は二人。一人はキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。「歳取ったなぁ…」と思いつつ観てましたが、さすが「シカゴ」組でもあるだけあって、歌のシーンではキレッキレ、やっぱりうまいなこの人、と。で、もう一人のこちらの方に。
ラッセル・ブランド(ロニー・バーネット役)
ライブハウスの従業員。
マイクを舐めてロックを称え、俺のチンコチンコ叫ぶ彼が最もこの映画でロックだった気がします。なので選出。