映画レビュー0587 『ラウンド・ミッドナイト』
この映画はかなり前に一度観始めたことがあったんですが、うつらうつらしながら40分ぐらいまで観てどうにも眠くて一旦やめ、2年ぐらい経ったでしょうか…今回再鑑賞しました。最初から。
ラウンド・ミッドナイト
ジャズに強ければ良い映画でしょう。
実在のジャズピアニスト、バド・パウエルがパリで活動していた時期の話を元に作られた、ジャズミュージシャンと彼を慕う友人の物語。
主人公デイルを演じるデクスター・ゴードンも実際のジャズ・サックス奏者で、同じバンドでピアノを弾くのもかの有名なハービー・ハンコックという、ジャズ半分・映画半分という感じの音楽ドラマ映画です。
とにかく序盤は物語もあってないようなもので、ジャズや演奏者に興味が無い限りひどく退屈なのは間違いありません。僕もジャズは好きなんですがさして詳しいわけでもないので、まあそれはそれは退屈でした。前に観た時もそりゃ寝るわ、と。
今回は危険さがわかっていたので、最も眠くなりにくい起床直後に観ることにしたわけですが、そのおかげで眠気という意味では問題なかったものの、やっぱり内容に興味が沸きにくかったのは事実です。
当然ながらこの映画は「ジャズを聞かせる」という部分も大きな使命だと思うので、序盤はご紹介的な演奏シーンも多いし、物語もとても地味なので、しっかり集中して観るぞ! というのはよほどのジャズマニアでない限りはなかなか辛い映画だと思います。
そんなわけで、とても真摯で真面目な映画だと思いますが、あまり一般向けな感じはしません。
ただ、そうですね…1時間を少し過ぎたぐらいからでしょうか。少しずつデイルが変わり始めてきて、またデイルとフランシスの心情も窺い知れるような展開になっていくことで、徐々に映画としても味わいのある内容になってきた感じがしました。
特に“ドラマ”として重要な役割を担うデイルとフランシスの二人が、あまり多くを語らないんですよね。最後の返事を言わない感じというか。何か言いたいだろうし言うんだろうな、というところでも、二人とも言葉を呑んで語らず、その心情を観客に想像させる感じがとても思慮深く見えて、「ああ、深い会話だな」と考えさせられました。
ドラマとしてはひどく質素で地味で静かな映画なんですが、その間に流れる感情は訴えるものがあったし、序盤の退屈さからは打って変わって染みてくる何かがあったように思います。
とは言えやはり地味だし、少し突き放したような作りでもあるので、特にジャズに造詣が深いわけでもなければ今あえてわざわざ観るには少ししんどいのも事実でしょう。
観た感覚としては、一応アメリカ・フランス共作ではありますが、かなりフランス映画寄りな気がします。地味で、語りすぎず、感じさせるような映画というか。
正直、「面白かった」とは言えませんが、ただ漠然と「良い映画だな」というような感覚だけは残りました。逆説的かもしれませんが、音楽は大変心地いいので、寝られない夜に流すといいかもしれません。
このシーンがイイ!
ホームパーティーで、バターカップが歌を披露するシーン。ただの大家さんかと思いきや、めっちゃうまいっていう。ソウルフルな歌に楽しそうな面々、とても素敵なシーンでした。
ココが○
当然ながら、ジャズに関しては素晴らしいの一言。少し湿ったジャズっていうんですかね。しっとりと聞かせる感じが心地よくて。
ココが×
とにかく(特に序盤は)地味で退屈なので、かなり難易度が高い映画だと思います。うっかりすると絶対寝る。つくづく大人の映画だなぁ、と思わされる感じ。
MVA
大体ミュージシャンが自分の延長線上で演じている感じなんですが、その中で、一人だけ本業役者っぽい雰囲気が出ていたこちらの方がいいかな、と。
フランソワ・クリュゼ(フランシス役)
デイルを神と崇める友人。
デクスター・ゴードンのミュージシャン然とした大物感も見事でしたが、多分この人普段もそのままなんだろうな、というのもあり、こっちかなと。
観た後に調べたら「最強のふたり」の富豪の人でした。全然若い…けどあれから25年前の映画だし、そりゃそうか…。子どもがいながらジャズに傾倒するダメ人間な感じもありつつ、でも熱いものを感じさせる雰囲気も良かったです。