映画レビュー0865 『ラッシュ/プライドと友情』
本当は前回で今年の鑑賞は終わりの予定だったんですが、観たいと思っていたこの映画の配信終了がこの年末に迫ってきてしまい、やむなく仕事納めの夜に急遽鑑賞しました。
今年はなんだか本当にネトフリに行動を左右されていたような気がしないでもない…ですがその分いろいろ観ることもできたし、まあよかったんでしょう。
ということで今年の更新はこれでおしまいです。今年も一部のごく僅かな皆さんありがとうございました。
きっと世界人口の中からこのブログに訪れる人たちの割合を測ると年末ジャンボ宝くじに当選するよりも低い数字になると思いますが、残念ながらお金は出ません。来年もよろしくお願い致します。
年明け一発目は例のやつでご機嫌をお伺いする予定です。良いお年を!
ラッシュ/プライドと友情

バッチバチのライバル同士が文字通り命をかけて戦うなんて熱くないわけがない。
- 実在した二人のレーサーの実際にあった1年が中心の物語
- 死と隣り合わせの世界でプライドを賭けて戦う二人が激熱
- どちらかが中心ということはなく、完全に両主人公なのも◎
♪テテテ テテ テテ テテ テテ テテ テ テテテ テテ テテ テテ テテ テテ テテ
ジャジャーン ジャジャーン ジャジャーン ジャジャーン
ってことでF1グランプリですよ。
僕が中学ぐらいのときでしょうか、妙なブームがあったんですよね。周りもみんな観てた気がする。
僕も録画して(基本的に深夜放送だった)観たりはしたんですがあまりハマらず、でも冒頭のF1のテーマでおなじみの「TRUTH」を演奏するバンド、T-SQUAREにはハマったりしまして。妙な角度から思い入れがあります、F1。
そのF1で実際にレーサーとして活動していた二人、ジェームス・ハントとニキ・ラウダが主人公の映画です。
二人の関係性については若干脚色があるようですが、ベースとなる登場人物とメインとなる1976年のグランプリについては実際にあった出来事のようで、まあ一言で言って壮絶ですよ。マジで。こんな壮絶なバトルが繰り広げられた年があったとは…。
もちろん詳細は書きませんが、単なる「勝って負けてのシーソーゲーム」なんて単純なものではなく、文字通り生死をかけたドラマチックな戦いがあっての1年間の戦いはマンガじゃねーかよ的なドラマに満ちていて、むしろよくここまで映画にならなかったよねという劇的な内容。いやそりゃ面白いでしょというお話です。
主人公の一人、ジェームス・ハント。彼はいわゆる天才肌のレーサーで、鋭い勝負勘とピーク能力の高さで一流になったドライバー。クリヘムが演じていることからもわかる通り、かなりのイケメンのプレイボーイとして知られていて、死を間近に感じるレースで生を感じた流れで性も感じちゃうぜみたいな。ダジャレだぜみたいな。
劇中でも彼が言っている通り、「人生楽しまなきゃ損だ」とその日その日を懸命に楽しく生きようとする、眩しいまでの情熱を持った方です。
ただレース前は嘔吐することもしょっちゅうで、実際は恐怖と繊細さも背負った人間らしい人でもあったんでしょう。
もう一方の主人公、ニキ・ラウダ。この人はハントとは正反対で、マシンにも精通し、理詰めで成果を出していくタイプ。彼も彼でハントとは違った形の天才であることは間違いないんですが、感覚的に見えるハントと比べるとどちらかと言えば努力家に見えるタイプで、実際「繰り返しテストコースを走って成果を得る」タイプのレーサーだったようです。
二人の出会いはF3。そこからライバルとしてF1を目指し、そしてF1の舞台で熾烈な闘いを演じた1976年のシーズンが主な舞台となります。
なにせ正反対のタイプの二人なので、お互いが自分の方が実力が上だと譲らず、それを周知するためにも直接対決で勝つんだと事あるごとに競い合います。
基本的にはラウダが先に頭角を現し、それを追うハントという構図。1976年のシーズンも同様にラウダが先行するんですが、そのまますんなりとは行かず…まああとはご覧ください。
やっぱり「ライバルの存在」って勝負の世界には必須だし超重要じゃないですか。
ついこの前27年ぶりの無冠になった将棋の羽生さんも、一強のように見えて同世代の強いライバルたちとしのぎを削って来たからこその実績なんですよね。そう聞いてます。(誰に)
やっぱり一人で上を目指す、成長し続けるのは大変だし、モチベーション的にも難しさってあると思うんですが、このF1レーサーという「毎年2人が事故死する」強烈な死亡率の職業で、バッチバチにやりあうライバルがいるっていうのは(渦中での感情は置いといて)ものすごく恵まれていたことだろうと思うし、その環境が作り出したのがこの1976年というドラマだと思うと…とても陳腐ですが「事実は小説より奇なり」だよなぁと一人唸ったわけです。いやほんっとすごいシーズンですよこれは。
二人の関係性については、やはり映画的に面白くするための脚色が入っているようではあるんですが、ただ全体的には今もご存命のニキ・ラウダご本人が「非常に正確だ」と仰っていたそうなので、大枠の部分ではかなりリアルな映画にはなっているんでしょう。
ちなみにジェームス・ハントの方は45歳という若さで亡くなってしまったそうで、まさに彼の願いどおり「短く燃え尽きる」一生を送ったんでしょう。早すぎますけどね…。
僕はロン・ハワードの映画は正直に言ってあまり好きではなく、簡単に言うと大体が「イマイチ盛り上がらない」「見せ場のチョイスがうまくない」印象が強かったんですが、ことこの映画に関しては若干見せ方に気になる部分はあるものの、概ね大きな問題もなくきっちりと良い素材をストレートに見せ、素直に感動できる良い映画に仕上げてくれたように思います。
レースシーンも元々はCGを予定していたらしいんですが、ドライバー(当時のF1ドライバーであるヨッヘン・マスらが運転しているらしい)の腕を見て考えを改め、「実写ですごい映像を撮ろう」と思ったそうで、レースシーンの迫力もなかなかでした。むしろもっと観たかった気もする。
また当然ながら極度の緊張状態を強いられるレースと混沌としたチャンピオン争いを煽る劇伴も見事で、さすがハンス・ジマー先生もいい仕事しはりますねといったところ。
総じて割と「誰が観ても良い」、想像しやすい関係性の、最上級の世界を描いたドラマといった感じで世間の高評価も頷けます。なんと言っても事実に基づいているというのがやっぱり大きいしすごい。
おすすめです。
このシーンがイイ!
これねー、ちょっと展開のネタバレになっちゃうので書けないんですよね。
わかりづらい書き方になっちゃいますが、途中と最後のラウダとハントの会話でしょうか。特に途中のほうが僕はグッと来ましたね。最後はある意味当然というか、映画としてキメに行ってるセリフでもあるので、まあ良いのは当たり前だよねと思う面もあり。
ココが○
上記にも書きましたが、やっぱりもうメインで描かれる1976年のF1グランプリ、その事実自体がとんでもないシーズンなので、これを映画にしようと決めた時点で良いに決まってる感がすごい。本当にむしろなぜここまで映画にならなかったのが不思議でしょうがないレベル。
ある意味で“最も死に近い職業”の一つなだけに、そこで起こるいろんな出来事はすべて命に直結する厳しさが、紡がれるドラマをより劇的にする環境というのは間違いなくあるんでしょう。
極限まで行くと、結局「F1の何が良いか」ってそこなのかもしれないですね。一歩間違うと死が待っている、その危うさにドラマを見るものなのかもしれません。
ココが×
仕方ないとは言えやっぱりちょっと脚色のウェイトが大きいのは少し気になるところ。
二人の関係性は根幹の部分なだけに、本当のところを知るとこの映画との違いに若干モヤっとするのは否めません。
ただ「ボヘミアン・ラプソディ」にしてもそうだし、結局娯楽としてよく見せるための脚色はやむを得ない面もあるので、“結果的に良い映画になったのであれば”これも許容範囲だとは思います。
MVA
イギリス人よりアメリカ人っぽい性格のジェームス・ハント、演じるのはオーストラリア人のクリヘムっていうね。
彼はまあイメージ通りで素晴らしいんですが、いつも通りで意外性がなかったのも事実です。よかったんだけどね。
ただ特に理由もなく、途中でいきなりふと「昔のブラピっぽいな」と思ったんですよね。当然良い意味で。なのでこれからもっと売れていくんじゃないかな、と漠然と感じましたが。っていうか売れてるけど。
とは言え今回はこちらのお方に。
ダニエル・ブリュール(ニキ・ラウダ役)
割と小悪党の役が多いような印象で、あまり役に恵まれていないような気がする彼ですが、ややモノマネ感はあったもののきちんと役作りをしてニキ・ラウダになりきっている雰囲気、良かったと思います。
クリヘムはほっといてもカッコいいし絵になるしで主人公として申し分ないと思いますが、ダブル主役として彼に渡り合い、負けじと存在感を発揮した演技はとても良かったんじゃないかなと。
余談ですが、オリヴィア・ワイルドがちょっと角張った顔を強調するような髪型&メイクだったのが気の毒だった…。
もうちょっと綺麗に撮ってあげて欲しい。


