映画レビュー0243 『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』

今回の映画は2度目の鑑賞。

「いい映画だったな」という記憶はあるものの、内容はあんまり覚えてないのでまた観てみました。

セント・オブ・ウーマン/夢の香り

Scent of a Woman
監督
脚本
原作
『闇と蜂蜜』
ジョヴァンニ・アルピーノ
出演
クリス・オドネル
ガブリエル・アンウォー
音楽
公開
1992年12月23日 アメリカ
上映時間
157分
製作国
アメリカ
視聴環境
BSプレミアム録画(TV)

セント・オブ・ウーマン/夢の香り

感謝祭の週末、貧乏苦学生のチャーリーは、金持ち同級生のお誘いにも乗れず、実家に帰るための資金を貯めようとアルバイトに行くことにしたのだが、その仕事内容は偏屈な目の見えない退役軍人のお世話というもので、しかもいきなりニューヨークでの豪遊に付き合わされることになり…。

美徳のない人間は正座して観ろ!

8.0

確か1回目に観たときは教育テレビでやっていたのを録画して観て、当時はまだ若くより醒めていて、さらに映画自体も今ほど観てはいなかったので、「なるほど確かに教育テレビでやりそうな映画だな」みたいに醒めた感想を吐き捨てていた記憶がありますが、今回、それなりにオッサンとなり、それなりに映画を観てきた上で観た感想としては、まあやっぱりいい映画だな、と。(小並感)

純粋で真面目、いわゆる「イイコ」のチャーリーが、盲目で偏屈、しかも女のことしか考えてないスケベ退役軍人(フランク)のお守りをするお話。

さらに学校でちょっとしたトラブルを起こしたところで強制的に旅の同行に駆り出され、フランクとの触れ合いで人間的に成長し…というベタっちゃーベタな内容ではありますが、実はフランクがチャーリーを教えてやる、と意気込んでいながら、フランクもまた弱さがあり、チャーリーに教えられて救われる、という関係性がイイ。

たった2日(?)の旅ながら濃厚で、雇い主とアルバイトの関係が親子のようになり、また友達のようでもあり、微笑ましい。でもそれだけじゃなくて、うまくフックとして危うさを感じさせる「計画」という存在があることで、ただの道徳的映画じゃないよ、というのがポイント。

最後まで観ると、自ずとこの映画の語りたいこと、道徳性という部分が見えてくるので、ある意味では教育テレビっぽい、他の映画で言うなら「いまを生きる」に近いようなニュアンスの内容なので、説教臭いと感じる人もいるかもしれません。

ただ、そこに至るまでのエピソードも印象的かつ効果的に描かれているし、逆に言えば、いつの世でも大事なことはこういう価値観でしょ、というメッセージを正面から語れるというのも、こういう娯楽含みの映画だからこそだと思うので、観る側も正面からしっかり受け止めて、考えて消化するような人間になりたいモンだと思います。

結局のところ、この映画が語っているものは「美徳」なんですよね。

損得勘定以外の部分で価値判断ができる人間でいましょうよ、っていう。

最近、コインパーキングで「強めにパネル踏むと金払わないで出られるぜ」みたいな輩が増えているらしいんですが、その「金払わなくていい」っていうところで思考停止するような人間はクズですよ、っていうことですよね。

そういうやり方があるのもわかるけど、でも「そういうことをする自分が嫌だ」と思えるかどうか。加えて同じ「やらない」でも、「誰かが見てるかもしれないから」からやらないんじゃなくて、「そういうことをする恥ずかしさ」の価値観。自分はこうありたいと思い続ける意志があるかどうか。

そういうのが無いからこそ、今話題の生活保護の某河本ファミリーのように、「もらえるもんはもらっとけ」「払う役所が悪い」なんて言っちゃうわけです。

そんな美徳のない人間は真正面からこういう映画を観て考えろタコが! と。青臭いと言われようが、僕はそう思います。

人からどう見られるかではなくて、自分はどういう選択をする人間でいたいのか、っていうのを考えて実践できる人間じゃないと、やっぱり早い話がカッコ悪いんですよね。とロクに女も抱けてないヤツが言ってますよ。プ。

笑うなタコ野郎!!

このシーンがイイ!

有名なタンゴのシーンはやっぱり(ガブリエル・アンウォー含め)いいんですが、でもやっぱりこの映画は最後のアル・パチーノの演説だと思うんですよね。この手の演説をやらせたらほんとーーーーにうまいしイイ。さすが。

あと全然記憶になかったけど、ドライブするシーンも良かった。

ココが○

なんだかんだ言って、やっぱりこういう映画ってそれなりに理解できる年齢、要はチャーリーぐらいの年齢で観ると、やっぱりイイコに育つんじゃないかなと思いますね。

当然、そのためにはいい親子関係を作っておく必要はありますが。「お前のオススメなんてどれもくだらねぇよ」みたいな関係性だとダメです。当然。

ココが×

言ってみれば「正義を語る」ニュアンスのある映画なので、苦手な人は苦手でしょうね。

ただ、こういう映画を「くだらない」とか「当たり前過ぎる」とか言っちゃう哀しさ、っていうのもまたあるように思いますが…。

MVA

同級生がなんかBTTFのビフっぽいなー観たことあるなーと思ったら出たてのフィリップ・シーモア・ホフマンでビックリ。やー、若い頃からいい演技してましたねぇ。で、今回は当然、

アル・パチーノ(フランク・スレード中佐役)

なわけですが、若いのに相手役をしっかり演じたクリス・オドネルも、ついでにいい味出してたリムジン運転手のジーン・キャンフィールドも良かった。やっぱり演者がいいと映画は締まりますナー。

それにしてもアル・パチーノですよ。やっぱり。「盲目」という演技のうまさもさることながら、感情の動きが細かく見える演技はやっぱりすごい。圧倒される演説にしても、ホロリと泣いた瞬間の脆さにしても、やっぱり名優だな、と。

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