映画レビュー0685 『ロスト・フロア』

ネトフリ配信終了間際シリーズ。

結構ネットの評価は散々だったんですが、なんとなく可能性を感じて観てみました。

ロスト・フロア

Septimo
監督
パチ・アメスクア
脚本
パチ・アメスクア
アレホ・フラ
出演
オズバルド・サントロ
ホルヘ・デリア
音楽
公開
2013年9月5日 アルゼンチン
上映時間
88分
製作国
スペイン・アルゼンチン
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

ロスト・フロア

毎朝子ども2人を学校に送り届けている、妻と別居中の弁護士・セバスチャン。その日も2人を送ろうと子どもたちを連れ、マンションの7階からエレベーターに乗ろうとしたところ、2人が「エレベーターよりも早く階段で降りるもんね!」と勢い良く降りて行ってしまう。しかし先に1階に着いたセバスチャンがしばらく待っていても2人は降りてこず、管理人も姿を見ていないと言う。一体子どもたちはどこへ行ってしまったのか…。

全体的には悪くないものの、決定的にダメな部分で損してる。

5.5

スペイン・アルゼンチン合作ですが、基本はスペイン映画のようです。今回は「春はSA-RA SA-RA」は流れません。(当然)

舞台はブエノスアイレスでした。確か。スペインで働いていたのが無一文になり、引っ越してきて家庭を築いた的な前フリ。「スペイン映画なのに南米舞台なのかー」と思って観ていましたが、考えてみれば日本中心の世界地図だと正反対に位置しているように見えるものの、ヨーロッパの人にとっては日本なんかよりもよっぽど近いんですよね、南米。割とこういう舞台設定ってありがちなのかなーと思いつつ。言語的なものもあるんでしょうね。

で、主人公はリカルド・ダリン演じる弁護士、セバスチャン。「どっかで観たことある気がするなーああ歌手の小金沢くんのスペイン版か」と勝手に納得していましたが、途中で「人生スイッチ」に出てたな、と気付きました。「ヒーローになるために」のあの人です。

妻とは別居中ですが、子ども2人を学校に送り届けるために毎朝3人が住むマンションに来る模様。その部屋は7階にあり、1階に降りようとエレベーター(ワクワクするぐらいえらく年季の入ったやつ)に乗ったところ、「階段を使って先に着くか競争しよう!」と子どもらしい遊びを提案され、妻からも「階段競争は禁止」と言われていたにも関わらず流されて許可してしまい、結果いつまで待っても降りてこない子どもたち。なんかありそうでコワイ。

最初は隠れてるんでしょ、と探し回るもまったく見当たらず、これは誘拐事件なんじゃないか…ということで同じマンションの住民である警視他警察も巻き込んでの事件となるお話です。

これ、小さい子どもをお持ちの親御さんたちはなかなか他人事ではない怖さがあるんじゃないでしょうかねー。

僕も幼少期に母親と車で買い物に行った時、買い物待ちが退屈すぎて一人歩いて家に帰ったことがあって、探し回りながら帰ってきた母親に泣きながらものすごい心配したんだぞと怒られたことを思い出しました。今思えばそりゃあ怒るよなと思いますが、そんなわけでちょっと目を離すといなくなるのが子どもというもの。それがわかっているからこそ最初は「いい加減怒るぞ」と言いつつ探していたセバスチャンですが、段々とこれは事件に巻き込まれたんじゃないか…ということで焦りを募らせていきます。わかる。そしてそれがどんな内容なのか…は観ていただくとして、映画についてのアレコレを。

まず「子どもが消えた」という単純な事件だけに、その事件そのものよりも背景に重点を置いた作り自体は悪くなかったと思います。それに変なファンタジーだったり変なサスペンス的なお話に持って行かなかったのも良かった。散々引っ張っておいて「実はマンションが異空間につながっていて子どもたちは向こうの世界で殺されていた」的な話だったら目も当てられないですからね。好き嫌いはあるでしょうが、内容的には基本真っ当な話だったのはグッド。

演出的にもマイナー映画っぽさはまるでなく、短めの尺故かヘタに引っ張らず、しっかりきっちり観られるテンポの良さと緊張感は思っていた以上によく出来ていたと思います。良い意味で観やすい、間口の広いサスペンスという印象。

ただ、一点どうしても納得できない部分がとても重要な部分で登場してしまったため、「それはおかしいだろー」と一気に醒めてしまい。具体的な言及は避けますが、普通に観ていて違和感を感じる展開だったので、事件の当事者であればなおさら引っかかるはずなんですよ。そこをスルーして先に進めるのはちょっと…ご都合主義というか、結局「こういう話にしたかったので」感が拭えません。そこがすごく残念でした。

それと一つすごく気になったのが、主人公がまったく謝らない点。問い詰めて勘違いだったとか、強硬手段に訴えたりとかしても「すまん」の一言すら出てこないという。これがものすごく嫌でしたね。事件的に仕方ないとは言え、疑心暗鬼の塊でなおかつ謝らないという。

そのせいで主人公に感情移入できないし、好きになれないので最後まで観ても「ふーん」って感じになっちゃう。結末を考えると、なんでこんな嫌な人間に描いたのかがよくわかりません。向こうじゃこれが普通なのかなぁ。男性像的に。

ただ事前に見ていたネット上の酷評からすると全然マシだったなというのが正直なところで、その僕が引っかかったある一点を除けば、それなりにしっかりとした良い映画だったんじゃないかなと思います。それだけに「あそこをスルー」したのが意味わからないんですけどね。とても惜しい映画でしたね…。

「惜しい映画」ってしょっちゅう言ってるけどね…。

ネタバレ・フロア

正直なところ、この手の映画のありがちな展開を考えれば「黒幕が奥さん」っていうのはある意味でよくあるパターンなので、もう一捻り欲しいところではありましたね。

実際僕もカンも込みではありますが、始まって10分ぐらいで「これ奥さん犯人だろ」と思っちゃったんですが、ただそこがわかってても中身の面白さにはあまり影響のない話ではある気がするし、作ってる側もそこは「どんでん返しだぜ!」というつもりもないのかなぁとも思います。

途中でもっとも恐れていた「階段から落っこちて死角になる場所で死んでいた」的なオチじゃなかったのは良かったんだけど。

ただ、やっぱり…子どもが帰ってきた時、管理人に「4Aにずっといたらしい」と言われてそれをそのまま受け入れて進んじゃう、っていうのはまったく解せない展開。

多分4Aは空き部屋だったんだろう(その説明が無いのも結構な悪手だとは思う)けど、主人公としてはそこに犯人はいたのか、マンションの住人なのか、金はどう受け取ったのか、協力者はいたんじゃないのか…とかいろいろと疑問が浮かんでくるはずで、「とりあえず子ども戻ってよかった」でそのまま進んじゃうのはどう考えても納得がいかない。

その辺のモロモロを考えると、犯罪紛いの行為で用意した大金の存在が軽すぎる。

そんなわけで、「作りは悪くないんだけど話がダメすぎる」映画の典型例かなと。あそこで一気にすべての説得力を失くしちゃったな…。

あとは最初の展開的に、子どもたちがグルじゃないと難しい話のような気もしますね。

ただその辺は、一応言い訳的には「日頃から階段競争をしたがる子どもたちが階段競争を実行した日が決行日になった」と考えることは可能なので、書いといてなんですが子どもグル説はちょっと意地が悪すぎるかもしれません。

それとついでに言えば、犯罪紛いの行動をいろいろしていた主人公が、最後に「お前がやったのは犯罪だぞ」っていうのはよくお前が言えるね? と思いました。まる。

このシーンがイイ!

オープニングで隠れてた子どもたちが出てくる時の笑顔が最高。ルナかわいい。かわいかった頃()のアビゲイル・ブレスリンっぽい。

ココが○

短めの尺で無理に話を広げていない点。ホント、言うほど悪くない映画だと思います。

ココが×

ただまあそんなわけでね。ある一点に目を瞑って進むのがどうしても解せなかったです。「そこはいいからとりあえず話進めようぜ!」感がハンパない。

MVA

特にビシっと「この人だ!」っていうのはいなかったんですが、消去法的に。

オズバルド・サントロ(ロサレス警視役)

マンションの住人の警視。ハゲ。

ハゲた爺さんの存在感は万国共通です。引き締まります。

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