映画レビュー0795 『スラップ・ショット』
今回は久しぶりにBS録画より、しかも観たのは放送翌週という鼻息の荒さで鑑賞に至った映画です。
やっぱりこういう「ネトフリには当然無い、借りに行く候補にも挙がらないようなレアで古い映画」を放送してくれるのはものすごくありがたいですね。
スラップ・ショット
最終的な「えー」感がすごい。
- ジョージ・ロイ・ヒル監督×ポール・ニューマンコンビのスポーツコメディ
- 街の衰退と夫婦の関係改善が添え物
- ルールはかなりいい加減っぽいのでアイスホッケーに詳しくなくてもOK
- メガネの三兄弟は今でも人気だとか
なんでそんな鼻息荒く急いで観たのかと言うと、やっぱりジョージ・ロイ・ヒル監督とポール・ニューマンのコンビっていうのが期待させるじゃないですか。
おそらくこの二人のコンビ作としては3作目にあたり、前2作は言わずもがなのあの名作2本ですよ。そう、「明日に向って撃て!」と「スティング」です。
もーね、映画好きとしてはどっちも避けて通れない名作中の名作ですからね。それだけの冠がつく名作なんて指で数える程度しかないわけで、その中の2席を確保するこのコンビの映画となれば…そりゃあ面白いに違いない! と思って観たんですが…ちょっとハードルが上がりすぎちゃったかもしれません。
舞台はアメリカのとある小さな町。この頃の環境としてよくあるタイプの「町工場に経済を依存している」町で、その(スポンサーである)工場が閉鎖になるためにその煽りを食らって主人公たちが所属するアイスホッケーチームが存続の危機に陥る、というところから物語はスタート。
このホッケーチーム「チーフス」は一応プロチームなんですが、ただ万年最下位っぽい雰囲気な上に選手紹介では地元サポーター(なのか?)からことごとく罵声を浴びせられ、まあなかなか厳しいチーム状況のようです。
有望選手も見当たらない弱小チームでファンからも愛されていないとなると、閉鎖=即失業という危機である上に、ポール・ニューマン演じる主人公のレジーはすでに物語開始時点でロートル扱いでさっさとやめろと言われているような状況なだけに、このままではまずいわけです。っていうかロートルなんて今どき言わねーよと思いますが書いてる方も立派なおっさんなのでお許しください。要は老人扱いってことです。
まあこの時点ですでにポール・ニューマンも50代なので、さすがにイケオジとは言えスポーツ的には厳しく見られがちなのはやむを得ないところでしょう。「明日に向って撃て!」「スティング」における相棒だったロバート・レッドフォードが50手前で高校生役をちらっと演じた「ナチュラル」が全然ナチュラルではなかったことが思い出されます。余談。
で、なんとかしないと、ということで途中加入した若手のメガネ三兄弟「ハンセン兄弟」を試合に送り出したところ大泉洋も憧れるレベルで荒々しいバトルを繰り広げるとんでもない野郎たちだったんですが、その結果チーフスはまさかの連勝を重ね、「もはやラフプレーしかないぜ」とばかりに毎試合タックルからのパンチにキックでボコボコのボコですよ。しかもそれが妙な人気を呼んでおっかけまでつく始末。どないなっとんねんアメリカ。
一方、快進撃を始める前の段階でレジーは一計を案じ、「どうやら西の方から引き合いがあるらしいぞ?」的な偽情報を流してチームメンバーのモチベーションを維持させ、まあ言ってみればモラトリアム的に先延ばしさせることで、「嘘から真の買収話」に仕立てようと画策するんですが…あとは観てくださいまし。
ポール・ニューマンはじめ、役者陣も見事にアイスホッケープレイヤーと化しているところがスゴイなーと思いつつ序盤はなかなか楽しめました。基本はコメディなので、まあバカバカしいんですがやっぱり気楽にニヤニヤ楽しめるのは良いですね。
主役のレジーは奥さんと別居中っぽいんですが未だベタぼれ、そしてチームで(多分)唯一の大学出身で将来を嘱望されているネッドは、「クソ過ぎてこの町にいたくないんですけど」と町及びレジー含めたチームメイトを全否定する無愛想の権化である妻との関係に悩んでいるという状況。ここからチームの快進撃に伴って夫婦仲も…的なおなじみの展開ではあるんですが、ただこのネッド夫妻の話がどーもピンとこなくて、これに引きずられて最終的には「うーん」という感じで終えました。
コメディ的には悪くなかったし、そこに家族の話が混ざってくるのもありがちですが良いと思うんですよ。それぞれが問題を抱えていて、本筋をがんばることでそこに新たな展開が訪れる、っていうのは。
ただ、やっぱりいくつか引っかかった点があって、まずは単純に「ラフプレーでのし上がる」というのが結構微妙なんですよね。血が出て引いちゃうとか暴力的すぎるとかそんな綺麗事を言うつもりはなくて、やっぱり正攻法じゃないだけにそんなに愛されないんじゃないの? っていうのがまず気になって。
アイスホッケーは詳しくないので的はずれな可能性もあると思いますが、それにしてもちょっと「試合」として成立するにはあり得ないレベルのラフプレーで毎回血だらけ、みたいになっているので…日大なんてかわいいもんじゃん、みたいな。まさに最近(コレ書いてるのは6月頭です)の流行りに乗っちゃうと、っていう。
いやあれは良くないんですが、あれ以上にひどい流血プレー(っていうかもうまるっきり犯罪レベル)で人気になってきました、っていうのが「えー」っていう。時代の違い+コメディということを加味してもなかなかに厳しい価値観。
おまけに報復的に相手もラフプレーで応じてきたりするんですが、それがもう完全に犯罪者なんですよ。相手が。なんで収監されてないの、っていうレベルのご紹介とか入ってきて、アイスホッケーって言うよりキン肉マンかよみたいなマンガ的なヒールがまた「えー」って。いや、あそこまで振り切ってると面白いんですけどね。ただ、純コメディなら良いんだけど人間ドラマも含んでいるだけに、そんなやり方でヨリ戻るのか? っていう腑に落ちない感が強かったです。
おまけに展開がいろいろ雑。この辺は時代ゆえの「雑だから良い」っていうのもあるとは思いますが、それにしても流れが結構いい加減なので、最終的な展開にも納得感が薄いというのが厳しい。
結局のところ「ラフプレーで人気になり勝っていくことでチームを救う」という方針そのものを愛せなかったので、それ故に登場人物に感情移入もできない、っていうのが大きかったのかなと思います。
もちろん詳細は避けますが、最後の展開も急で「え? なにそれ」という感じなのでまったく納得できずに終わっていき、「そ、そうなんだ」という感じで終わるという…残念です。真面目にストーリーを追う映画ではないですね。
コメディだからいいじゃん、っていうご意見もあるとは思うんですが、とは言えコメディに振り切ってもいないのでやや中途半端な感覚もあり、イマイチ詰めきれていないような印象がありました。
やっぱりスポーツが絡んでくる以上、多少は感動的な「やっぱり良いよね」みたいな部分もちょっと期待したんですがその辺もまったくなく、とは言えドコメディでもないからなんとも微妙な感覚の残る映画でしたね…。もう一歩、納得感が欲しかったなぁ…。
このシーンがイイ!
これだ! っていうほどのシーンはなかったですが…序盤のやけに飛ばす車のシーンとかはコメディ的な期待感をもたせてくれて良かったんだけどなぁ。
ココが○
やっぱりところどころ笑っちゃうところはあるので、気楽に観られる良さはあると思います。
結構厳し目に書いちゃった気はしますが、基本的にこの映画嫌いじゃないんですよね。やっぱり70年代のアメリカ映画っぽい雰囲気が良くて。
ココが×
終盤の強引な展開と、中身の割に長めの上映時間。この内容だったら90分ぐらいで良いんじゃないかと…。
MVA
んーーー、なかなかこの人! っていうのがいないんですが…消去法的にコチラの方に。
ポール・ニューマン(レジー・ダンロップ役)
まーやっぱり往年の大スターですからね。特に気負うこともなく、自然体できっちりそれっぽく演じるのはさすが。
アイススケートもまったく違和感のないうまさでかっこいい。さすがです。