映画レビュー0953 『スモール・タウン・クライム -回り道の正義-』
ツイッターで仲良くしていただいている奥様から「配信終了近いよ!」とオススメ頂きました。
それなりに洋画を観てきているとは思うんですが…名前で容姿が浮かぶ人がオクタヴィア・スペンサーだけっていう…なかなか自分にとってはレアな映画です。
スモール・タウン・クライム -回り道の正義-
イアン・ネルムス
エショム・ネルムス
イアン・ネルムス
エショム・ネルムス
ジョン・ホークス
アンソニー・アンダーソン
オクタヴィア・スペンサー
ロバート・フォスター
クリフトン・コリンズ・Jr
マイケル・ヴァルタン
ダニエル・サンジャタ
ジェームズ・ラファティ
ジェレミー・ラッチフォード
ドン・ハーヴェイ
クリス・ウェストレイク
2018年1月19日 アメリカ
92分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)

物珍しさは一切ないけどずっと観ていたくなる雰囲気&キャラクター。
- アル中のためにクビになった元刑事が独自に事件の捜査を進めようと大きな事件に巻き込まれていく系
- 話の筋としては珍しいものではなく、先も読める
- それ故に観やすい安心感もありつつ主人公他キャラクターが魅力的
- 良い意味でドラマっぽく続編も期待したいけど…
あらすじ
好きだわー。この映画好きだわー。ある意味では“雰囲気映画”とも言える気がしますが、雰囲気映画の中でも抜群に好きなやつかもしれない。「ロング・グッドバイ」に近い好きさ。雰囲気好きさ。(わかりにくみ)
主人公は元刑事のマイク。ある出来事をきっかけに警察をクビになり、今は就職活動中ですがあまりうまく行っていないご様子。
なぜかっつーとアル中なんですよ。いわゆるひとつの。「アルコールが入らないと頭働かないから午前中は働けません」とか言っちゃうわけ。面接で。お、おう…みたいな。そりゃうまくいくはずないよねと。正直でいいんだけどさ。
そんな彼がある日、酔っ払って野原的なところで寝ちゃってですね。せっかくのスーツも台無しだぜ的な状態で車を飛ばしていたところ、一人の若い女性が倒れているところを発見します。
死体かと思いきや息がある…ということで急いで病院まで運び、元同僚でもある刑事に事情聴取され、ご帰宅。翌日会いに行こうと連絡すると、すでに息を引き取ったとのこと。
喪失感に苛まれつつも血だらけの愛車をクリーニングすると、座席の下に彼女の携帯を発見。警察に渡さずに中身を調査し、救えなかった贖罪とばかりに探偵と偽って遺族に会い、独自に捜査を進めようとするマイクですが…この事件は序章だったとさ…!
魅力的な主人公
タイトル通り「小さな街で起こったある事件」なんですが、その小さな街感がちょっと昔の映画を感じさせる雰囲気があってそこがまず良いよねと。「スリー・ビルボード」みたいな感じ。ジョン・ホークス出てたみたいだし。
いわゆる“顔の見えるコミュニティ”で、街中の人たちは大体顔見知りなわけですよ。そこで起こった一つの事件を追っていくうちに自らも追われる形となって事件に深入りしていく主人公…とまあ筋立てとしてはよくある話です。
ただちょっとコメディっぽい軽快さもありつつ、基本はハードでボイルド、そして何より主人公が漂わせる“枯れた男臭さ”がなんとも言えずかっこいい。かっこいいっていうかセクシーですね。多分セクシーって言うのが一番ハマる気がする。この映画のジョン・ホークスは。小泉進次郎は関係ないよ。(時間差時事ネタ)
このジョン・ホークス演じる主人公のマイク、就活中ということもあってあまりいい生活はしておらず、アンダーウェアは穴が空いてたりするし食べ物はシリアルしか出てこないし…っていうなかなか厳しそうな状況にも関わらず、それに気を病むわけでもなく割と飄々としていて、それは諦めなのかはたまた自信故なのかはわかりませんが、環境に動じない…けど「今のままではいけない」のもわかっている人間臭さがすごく魅力的なんですよね。
捜査したいけどもう警察はクビになっているので、一計を案じて探偵と偽って独自に捜査を進めようとするわけですが、その目標を持ったタイミングでお酒も控えるようになり、事件を通して“自分を取り戻していく”物語にもなっています。
これまた流れとしてはよくあるパターンではあるものの、いい感じにくたびれて枯れた男が捜査を通して再生していく姿はやっぱり何度観てもイイんですよ。僕がこっちに近い年代になってきたせいも間違いなくあると思います。
彼は結婚もしておらず、直接的には言っていないものの…“救おうとした”彼女にもちょっと希望を持っていたフシがあります。もしかしたら何かが変わるんじゃないか、みたいな。
その辺のある種の弱さもまたグッと来るんですよね。わかるわー、って。2周りぐらい若い、おまけに娼婦かもしれないけどさ、その子と結婚しようとかそういうんじゃなくてもさ、なんとなく「突如現れた一人の異性によって自分が表舞台に戻れるかもしれない」みたいな期待を持つんですよ。
そこには必ずしも性的な意味合いが込められているわけではなくて、「とにかく今の苦境から脱したい、そのためには自分が知らない人との出会いに希望があるんだ」って思っているような感じだと思います。
現に彼はオープニングで普通に車を乗っていても「ファックユー!」とか言われちゃってるわけです。人物像的になんでこんな憎まれてるのかな、って疑問なぐらいそこまでひどい人間には見えないんですけどね。きっと(後で明かされる)警察をクビになったきっかけの事件によるイメージのせいなんでしょう。
彼自信がそう訴えるシーンはまったくないものの、間違いなく「このままではまずい」という思いもありながらズルズルと現状に甘んじている状況があって、そこを変えるきっかけとして(無意識に)この女性(とその事件)を捉えて行動していく姿がなんか良いんですよ。なんかね。
素材は普通だけど味が良い
対する脇役陣も魅力的な人物が多くてですね、「物語全体は定番の流れでありつつそれぞれの日常が見えてくる描写」がサラッとなされている点も良かった。
例えばバーで働くおばちゃん…というかもう婆ちゃんに近いイメージでしたが、彼女なんて登場シーンはさほど多くは無いものの、印象に残るいいシーンがあったこともあって大体どういう人かわかっちゃうんですよね。
きっと酒の出し方はぶっきらぼうだろうなとか、悩みを打ち明けたら毒舌で尻叩いてくれそうだなとか、ものすごいヘビースモーカーだろうなとか。
そういう感じで各人どんな人なのかが伺えるのは「小さい街」を舞台にしたからこそだろうし、ありきたりの展開ながら細かい描写が丁寧なので伝わってくる巧みさがあるんだと思います。
終盤では観客が喜ぶ良い仕掛けもあるし、小粒だけどしっかり外さずに丁寧な作りで物語を楽しませてくれる、これはなかなか良い映画だと思います。目立たないけどね。
素材は普通なんだけど出てきた料理は誰もが満足できる、そんなイメージの映画でしょう。逆パターン(素材は良いけどデキが普通)の映画よりよっぽど良いですよこれは。
良い意味で連続ドラマっぽい、世界とキャラの良さでもっと観ていたくなる映画でしたが、日本ではネトフリ以外で観る方法がないぐらいにマイナーだし、世界的にもあまり興行されていないようなので…続編は期待薄なのが無念。もったいない!
好きだわーしか言えない
ベースはハードでボイルドながら軽快なタッチで観やすく、最後はちょっとほろ苦く大人の味わい。いやー好きだわこの映画。
おまけに90分ちょっとですからね。この短さでこれだけきっちり人物像が伝わる作りっていうのはなかなかですよ。
もうちょっと評価されてもいいと思うんですが…やっぱりキャスティングが地味(そこも含めて良いんだけど)なこともあり、また観ている人の絶対数も少ないせいかイマイチ評価されていないようです。これまたもったいない…。
続編作られたら劇場行くことで応援してあげたいぐらいには好きなんですが、その思いも叶いそうになく無念。っていうかネトフリ終わっちゃったら次どうやって観ればいいんだろ…。
また配信復活してくれることを祈りつつ、今日はここでお別れとしましょう。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ…。(まさかの淀川オチ)
このシーンがイイ!
終盤のあるシーンもすごく好きなんですが、まあそこはネタバレ的にやめておくとしてですね、序盤にマイクがコーヒーを一気飲みしつつ「目が覚めた」って言うシーンがすごく良かったですね。しびれた。能ある鷹が爪を出してきた感じで。
ココが○
上に散々書いたのでそれ以外で言えば、愛車ですよ。マイクの愛車。
劇中で「ノヴァ」と言っていたので、おそらくシボレー・ノヴァだと思われますが僕は詳しくないのでわかりません。ちょっと調べた感じでは3代目辺り(1970年前後)っぽいですね。
これが車好き男子なら一度は厨二病的に憧れる「ツヤ消しのブラック」の車なんですよ。これが超かっこいいの。でも運転荒いしテキトーだから大事にしてないの。でもそれがまたかっこいいの。
こだわりで乗ってるけど過度に丁寧に扱わない感じ。そこからもマイクのキャラが見て取れるしそこがまたイイわけ!
ココが×
これまた散々書いてますが、物語自体に驚きはないです。よくある展開だし、落ち着くところに落ち着くし。
ただその見せ方と雰囲気作りの良さが際立った映画だと思うので、素直に観て「損したな」っていうのもなかなか考えにくいと思います。IMDbで6.6は低すぎると思う。もっと観た人が多かったらもっと上がりそうな気はするんだけどな…。
MVA
爺さんも婆さんもすごく良かったんですが、この映画はやっぱりこの人。
ジョン・ホークス(マイク・ケンドール役)
主人公。
序盤のくたびれ感、中盤以降の本気出した感、どちらも素晴らしい。渋いおっさん好きは間違いなく「こういう渋いおっさん最高だなー!」と思うことでしょう。そのまますぎますがそうなんです。
僕はこの手の枯れた渋さとは対局に位置するので、「手に入れたいけど手に入らない」から憧れるような面もあります。男が男に惚れるタイプ。


