映画レビュー0927『スノーデン』

ご存知ネトフリ終了シリーズで、ご存知いまだホットな事件を扱ったこちらの映画でございます。

スノーデン

Snowden
監督
脚本

キーラン・フィッツジェラルド
オリバー・ストーン

原作

『スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実』
ルーク・ハーディング
『Time of the Octopus』
アナトリー・クチェレナ

出演
音楽

クレイグ・アームストロング
アダム・ピーターズ

公開

2016年9月16日 アメリカ

上映時間

134分

製作国

アメリカ

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

スノーデン

事件の影響の大きさと映画としての面白さが比例した良作。

8.5
NSAによる国際的監視網を暴露した人物の半生
  • エドワード・スノーデンの経歴と現在をサスペンスフルに描く
  • テンポよく、社会派サスペンスとして観てもノンフィクション映画として観ても良く出来ていて面白い
  • アメリカの“属国”日本にとっても他人事ではない内容
  • 間違いなく現代を生きる人間として一見の価値あり

あらすじ

この映画で描かれる人物、エドワード・スノーデンはご存知の通り実在する人物で、彼がやったこともある程度知っている人がほとんどだと思います。僕もそうです。

が、彼がどのような人物で、実際にどのような意味合いの行動を取り、それが“事件”となったのか…までを詳しく知っている人は(よほど興味がある人でもない限りは)ほとんどいないでしょう。僕もそうです。デジャヴ。デジャヴュ。

そんな「なんか大変なことをしたのは知ってるけど実際何をしたのか」を興味を持って楽しみながら(これ重要)知ることが出来る、まさにノンフィクション系映画のお手本のような作品だと思います。

この手の実話系告発モノにありがちな「現在の主人公」の姿から始まり、そこから彼の語りをきっかけに過去に遡って「彼がここに至るまで」を振り返りつつ、たまに現在に戻ってまた遡ってを繰り返す、流れとしてはよくある定番の形です。それ故観やすいよと。

元々軍隊にいたスノーデンは怪我によって除隊を余儀なくされ、元々プログラミングに強かった彼はCIAのエンジニアとして就職、その後いろいろありつつNSAに転職後、例の暴露事件を起こすまでを描きます。

保守故の行動

映画ではおなじみなので映画好きの方は大体ご存知だと思いますが、NSAとは「国家安全保障局」のことで、日本で言うところの国家公安庁に近いイメージでしょうか。

CIAとの違いも(映画ファン的に)曖昧なところはありますが、CIAは昔ながらの人間主体で、ある意味古臭いスパイ活動(ヒューミント)が中心、NSAは電子機器を利用したデータ解析や情報収集(シギント)の方が中心だそうですよ奥さん。

両方に在籍した経験を持ち、また若いながら非常に優秀で即戦力となるプログラムの開発も行っていた彼は、その分よりコアな情報に接する機会も多く、そしてそれ故に「こんなことが許されて良いのか」という悩みを深めていったんでしょう。

序盤、彼女と初めて出会ったときに政治談義をする場面があります。

そこでの彼は保守寄りで(あの)ブッシュ大統領すら擁護するぐらいの人物だったんですが、(リベラルな彼女に影響されていったのもあってか)やはり「国を守るため」を大義名分に行われていた数々の情報収集とその利用方法に疑問を感じ、その最初の政治的思考とはかけ離れたような「暴露」に至ることになります。

ですが、よくよく考えればわかる通り、スノーデンの保守的な考え方は愛国心故なので、「愛する国がこんなことをしていいのか」という正義感・義憤から行動を起こしたというのはある意味最初の態度から一貫しているとも言えます。

どうも日本ではネトウヨ(及び現政府)のような頭の悪い人たちのせいで保守のイメージが実際の保守とズレて行っていると思いますが、この現在の「日本的保守」とは違う、芯を持った保守がスノーデンであり、それ故の行動があの告発だったというのは結構重要なポイントでしょう。

僕もこの映画を観るまでは、ふんわりと「頭来て(私怨で)やったのかな」とか「お金欲しかったのかな」とか「承認欲求が強かったのかな」とかいろいろとうっすら理由を考えていたんですが、彼の側に立って描いた映画であることを差し引いても、損得からすれば告発なんてしない方が良いに決まっている状況で告発するに至った彼の信念は、もっと高潔で、尊い行為だったことがこの映画から理解できました。

話によると彼がNSAに在籍していた頃は20万ドルもの報酬を受け取っていたらしいので、劇中の彼のセリフにもある通り、「お金にも困らずハワイで彼女と幸せに暮らす人生を手放し、一生追われる人生を選ぶ」ことの重さというのは、やはりよほどの信念がない限りは取れない判断だと…改めてとんでもない行動を起こした人なんだなと思いましたね…。

一生消えない疑念を埋め込まれる

映画としては最初に書いた通り、割とオーソドックスな作りで珍しいものでもないんですが、ただテーマ(告発した内容)の重さ故に緊迫感もすごいし、また純粋に映画好き的に興味を持ちやすい「諜報機関内部の実際」が描かれる興味深さも手伝って、ただのノンフィクションを観るのとはわけが違う、むしろ政治サスペンスドラマとしてとても見応えのある、良い意味での娯楽感がある映画に仕上がっているのが素晴らしいですね。この辺はさすがオリバー・ストーン手慣れたもんやでと言ったところでしょうか。

んでもって当たり前ですがこれは実際にあった話である、という点ですよ。その重さったらないですね。本当に。

彼は日本で仕事をしていた時期もあり、そのため少しだけですが日本の話も出てきます。それは「他人事ではない」どころかモロ当事者の話だし、本当に日本人もこの話はしっかり知っておくべき内容だと思いますね。

この話の厄介なところは、スタートが“秘密裏に”情報収集をしていたので、つまり「やめました」って言われたところでまったく信用できない点にあるんですよね。

そもそも日本に対しても、一応日本側からは「許可できない」と言われていたにも関わらず情報収集を実行していたという話なので、その事実が知られたあとに「やめてくれ」「わかった」って言われてもまったく信用できないじゃないですか。「情報収集してないよ」って証拠は出せないわけで。

そういうことを考えれば余計にコトの重大さに気付かされるし、もはやネットを使う以上はすべて監視されている前提でいないといけないという…なんとも気の重くなる“事実”ですね…。

またNSAの情報収集はいわゆるGAFAのさらに上に位置するものなので、GAFAですら信用ならないのにさらにその上にもっとやべぇやつがいんぞ、みたいな恐怖ですよ。フリーザなんか宇宙に出たら雑魚ですよ、みたいな。これはねー…本当に考えれば考えるほど重い話で、それ故に考えるのをやめたくなるような…非常に困ったお話だと思います。

ネットの使い方を考えないと…

とは言えそんな話もこうしてネットに上げているわけで、危機意識が薄いと言われればそれまでですが…。

ただ「知っていて利用する」のと「知らずに利用する」のは雲泥の差なのも事実なので、知った上でどこまで許容するのか、その考えるきっかけとしても知っておくべき話でしょう。

僕もおそらくもっと裕福であればかなり守ろうとするんじゃないかなと思いますが、幸い(?)お金も無ければ奥さんもいないという気楽なポジションにいるし、犯罪行為に手を染めているわけでもないので「まあ別に知られたところで」みたいな面はあります。(ただし冤罪で疑われたときに利用される可能性もあるのでリスクゼロではないのも確か)

それなりに立場も資産もあり、守るべき存在がいる人たちは、僕なんかよりももっと真剣にネットの使い方について考えるべきだし、便利の先に何があるのかは知っておいた方が良いでしょう。

今さらネットなしの生活なんて…とは思いますが、ある程度資産があれば仙人みたいな生活でも良いかもしれない、と思うぐらいには考えさせられる話でした。まあその「ある程度の資産」を作るのが難しいんだけど。

もしかしたらスノーデンご本人はその域に達したのかもしれませんね。今ね。

このシーンがイイ!

映画的には特に重要なシーンでも無いんですが、序盤彼女と出会った直後に散歩しながら政治談義して、結構な口論になりつつキスするんですよ。で、(リベラルが正しいと思っている)彼女が「世界が見えるようになった?」って聞くわけです。勝利宣言のように。するとスノーデンが言うんですよ。「リベラルの味しかしない」って。

このやり取りがねー。日本とアメリカの一般市民(しかも若い)の政治的成熟度の違いをまざまざと見せつけられた気がして、すごく羨ましいと同時に悲しくもなりましたね…。日本だったらまずキスまで行かないし、なんならこの後付き合わずに終わるでしょう。こんな口論したら。

そもそもこんな政治的な口論なんてしないですからね。避けようとする傾向もあるし、そこまで学んでもいないし。

現在進行系でいろいろ問題のあるアメリカではありますが、この成熟度の違いが救いでもあるなと考えさせられるシーンでした。

あと余談ですが、手話覚えたいなと思いましたね。すごい良い使い方だなって。

ココが○

問題自体に興味がなかったとしても、映画として十分に楽しめる点。まず面白い、っていうのはとても大事です。勉強のために観なさいだけじゃしんどいので。

ココが×

反面、面白いということはおそらくだいぶ脚色も入っているはずなので、例えばいかにも映画っぽい存在のニコラス・ケイジとか、実際はいないかちょっと違うんだろうなと思います。そこは少し気になるところ。

MVA

シェイリーン・ウッドリーは「ファミリー・ツリー」以来に観ましたが、なんならちょっとおばちゃんっぽくなっちゃってたのは残念にしてもなかなか体を張ったいい演技でした。

あと個人的ポイントは実在するジャーナリストの役で出てきたメリッサ・レオがすごく良いなと。そう言いつつ結局この人です。

ジョセフ・ゴードン=レヴィット(エドワード・スノーデン役)

この人がお上手なのはいつものことですが、やっぱりある種リスクのある役柄を演じ、さらに「対話を促進するのを助ける」ために出演料は全額寄付したそうで、その心意気に敬意を表したいじゃないですか。やっぱり。

演技的にも抑えた口ぶりが雰囲気あったし、さすがでしたね。

あとすっかり老けちゃったリス・エヴァンスもとても良かったです。随分渋い良いおっさんになりましたね…。

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