映画レビュー1060 『恐怖の報酬(1977)』
この週もネトフリは特に無かったのでBSから。
この映画は以前観たフランス映画「恐怖の報酬」のアメリカリメイク版になりますが、日本では割と最近(2018年)に「オリジナル完全版」が劇場公開されたため、結構話題に上るのを目にしていて観たかったのでBSありがたいぜと。本当にBSプレミアムはNHKの数少ない良心だと思います。
ちなみにこの映画もバージョンがいくつかあるようですが、今回観たのは2018年に劇場公開されたものと同じバージョン(オリジナル完全版=北米公開版)です。
恐怖の報酬

より見どころ多く、オチも良い。
- 大まかな内容はオリジナルと同じく、大金のために危険な仕事に就く4人を描く
- 4人はそれぞれ“ワケアリ”であり、その理由を序盤で描くもわかりづらい
- 道中の危険度はオリジナル以上で見せ場多し
- ガッカリオチだったオリジナルより良いエンディング
あらすじ
オリジナルの「恐怖の報酬」は古典的名作として今でも名高い映画ですが、しかし僕は観た当時(今読むと結構荒いレビューで若さが見える)オチが不満すぎて頭にきたぐらいの記憶があり、それと比べるとだいぶ味のある良いエンディングになっていて、リメイク版のほうが良かったという珍しいケースになりました。
オープニングはとある“殺し”のシーンから。よくわからない男がサイレンサー付きの銃でよくわからない男を殺し、逃走。
その後場所が変わって爆破テロを実行するテロリストの姿を追い、さらに場面が変わってフランスの銀行家の窮地、そして現金強奪犯のエピソードを描いたあと、ようやくこの映画の舞台である南米のとある町に舞台が移ります。
ここはまあ…オリジナル版から想像できるように結構なアウトロータウンでして、身分を隠した文字通り“ワケアリ”な連中だったりひたすら貧しい人たちだったりが多く暮らす、実際こんな町あるんかいなと言いたくなるぐらいに絵に描いたようなスラム感ですよ。
ここの近く(と言っても数百キロ先ですが)の油田で爆発事故が起こり、一向に収まる気配のない火災を消火するためには「爆薬による爆風で消すしかない」ということになりまして、しかし保管してあったニトログリセリンは大部分が乾燥し液体が箱の底の方に流れ出ているために「運びたくてもかなり危険な状態」になってしまっている、と。
ヘリで運ぼうにも難しい、ということで高額報酬を餌に有志を募り、オンボロトラックで現地まで運んでくれるやつを募集するぞ、となった結果選ばれたのが冒頭に出てきたワケアリ4人衆でしたとさ。
果たして彼らは無事仕事を終え、大金を得ることができるんでしょうか…!
わかりやすい設定は今でも十分楽しめる
「1台に2名乗り込み、2台のトラックでニトログリセリンを運ぶ」というベースはオリジナルのシナリオと同じ、しかし主要メンバーの背景であったりエンディングであったりがだいぶ違っているおかげで映画の印象も結構違うものになっていて、どちらが優れているということもなくフランス版・アメリカ版双方に良いところがある「良いリメイク」だと思います。
まったく説明もなく「これニトログリセリンとか出てくるの?」と思わせるような謎のオープニングに困惑したんですが、これは“後々運び役となる4人”のご紹介ムービーなんですね。こうして彼らは“この町にやって来ざるを得ないぐらいに落ちぶれた”ところをご紹介して頂きました、と。
オリジナル版はそこまで詳細を覚えているわけではないんですが、話としてはもっと単純で「お金がないから高額報酬がほしい」というような単純な理由でこの仕事を得たメンバーだったような記憶があります。
一方こちらは明確に「かつていたところにいられない」逃走中という状況のメンバーだらけで、よりワケアリ感が強くなっています。それだけ動機も強いと言えるでしょう。
彼らが大金を得て何をしようとしたのかはあまり語られませんが、おそらくは「こんな町でくすぶるよりももっと良いところで楽に暮らしたい」みたいな方向性と思われます。それだけ現状が、この町での暮らしがしんどいぞと。そう感じさせるようなエピソードも若干登場します。
しかしそのためにはご存知“恐怖込みの報酬”をゲットするために危険を冒しなさいよ、ということでバイヤーな運搬作業にやんややんやと観客が沸くわけです。
当然のようにこのミッションは文字通り「ほんの少しのミスが命取り」なのでその緊張感も面白さも非常にわかりやすく、それ故誰が観ても素直にワクワクドキドキできる良さがある映画でしょう。
果たして「爆風で消化する」方法がベストなのか、そしてニトログリセリンの扱いの描写が正しいのか等気になる点もあるものの、「そういう話なんで」と割り切って観ちゃえばそこまで引っかかるようなところでもないし、これはそういう世界のお話だと思ってどっぷり乗っかってあげるのが正しい観方ではないかと思います。要は科学的整合性みたいなものを気にしちゃアカンで、と。
道中もパワーアップ、エンディングも良し
また一番の見せ場である「オンボロトラックでニトログリセリンを運ぶ」内容についても、せいぜい落石や落下ぐらいしか危険がなさそうなオリジナル版(それでも十分キツいけど)からよりパワーアップしていて、こちらはジャングル的な道なき道を行きつつ、例によって崖的な危険もあったり通れない場所があったり邪魔者が登場したりとよりハラドキ度もマシマシです。
特にジャケットでも描かれている吊橋のシーンは緊張感も半端なく、「いやこんなの絶対ムリだろwww」と笑いながら観ることウケアイですよ。最高です。
また僕としてはオリジナル版で激怒しただけにやっぱり一番気になったのは「どういうオチを持ってくるのか」という点だったわけですが、そこも完璧…とまでは言いませんがさすがにオリジナル版のようなお粗末さは無く、「なるほどー」と思わず唸るような良い仕上がり。
万が一、オリジナル版と同じようなウッカリエンドだったらどうしようと身構えていたんですが、それが無かっただけでもこちらの方を評価するに足る理由になります。
主演がロイ・シャイダーというのも渋くて良い。芯のある男臭い役をきっちり演じてくれました。
両方観てみてほしい
そういうわけで、大体映画というのは(鑑賞順も先に観た方が評価しやすいし)元になった方が良くてリメイク版はイマイチ…というのが定番だと思いますが、この「恐怖の報酬」シリーズについては後発のリメイク版の方が上かな、と僕は思います。
ただ(オチに特大の不満があるとは言え)オリジナル版の方ももちろんよくできた良い映画ではあるので、両方観ても良いと思うし、違いを楽しむのもまた一興でしょう。
「ほぼ一緒で面白くない」ということもなく、人間ドラマ重視のオリジナル版に対してよりわかりやすい見所が多いリメイク版、という対比は元の良さを壊さずに双方を活かす良いリメイクだと思います。
この舞台設定なんてまさに「テクノロジーが進化していないからこそ描けるサスペンス」そのものなので、古い映画ならではのアイデアが活きた物語は今の時代には生まれにくい良さなのがまたいいですね。
もちろん現代の映画でも古い時代に設定すればこういう話は作れますが、じゃあ「古い時代にしよう」で果たしてこの設定を思いつくのかというとそれもまた別問題だし、「ファミコンは制約が多いが故に良い作品が生まれやすかった」というようなエピソードと同じように、やっぱりアイデアが限られていた時代だからこそ生まれた極端な“仕事”がドラマを生んだ側面はあると思うので、古い映画は大事だよねというまとめです。
なにせこのリメイク版ですらもう40年以上前の映画ですからね。どっちも古い、だから古い映画を観ようぜという話。公開日、おっさん生誕の直前なんやで…。(突然の哀愁)
このシーンがイイ!
いやー、やっぱりこれは吊橋のシーンでしょう。あの「絶対ムリでしょ」感、どうやって撮ったんだろ…。スゴイ。あんな吊橋通っちゃったら絶対恋も芽生えますよ。(吊橋効果)
ココが○
単純に見所が多くて飽きないので、この辺の年代の映画でも「古くて気後れしちゃう」ような人でもきっと楽しめるのではないかと思います。やっぱり設定がわかりやすくて強いのが大きい。
ココが×
舞台となるヤバそげな町での話が始まるまでが結構長く、その上意味がよくわからないので最初に面白くねーな、で脱落する人もいるかも。序盤戦は我慢しましょう。
MVA
至って無難にこちらの方。
ロイ・シャイダー(ジャッキー・スキャンロン(ジャン・ドミンゲス)役)
主人公。いかにも主人公らしい強さとまともさが目立つ…んですが強盗です。
少し前に観た「フレンチ・コネクション2」でロイ・シャイダーが出てこなかったのを残念に思っていたので、その時から残っていたロイ・シャイダー不足を補ってくれる良質なサプリでした。
ちなみに当初はスティーブ・マックイーンの主演も企画されていたそうで…それも観たかったなー!!


