映画レビュー1087 『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』

今回はネトフリで特に終わる映画もなかったので、せっかくだからとアマプラから。ちなみにアマプラオリジナルです。

数人が絶賛していたのでこりゃ観なけりゃなるめぇと早速観ることにしました。

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~

Sound of Metal
監督
脚本

ダリウス・マーダー
エイブラハム・マーダー

原案
出演
音楽

ニコラス・ベッカー
エイブラハム・マーダー

公開

2020年11月20日 アメリカ

上映時間

120分

製作国

アメリカ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(PS4・TV)

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~

当たり前が無くなったときに現れる世界とどう向き合うのか。

8.5
聴力を失ったドラマー、その後の人生をどう生きるか
  • 「聴覚を失った後の人生」を追体験するかのようなドキュメンタリータッチのドラマ
  • 主人公のタイプ的に完全に共感はできないものの、それ故に後半が生きる良作
  • とても地味ではあるので鑑賞タイミングは注意かも
  • “音”の演出が見事

あらすじ

さすが方方から絶賛が聞こえてきただけあって、なるほどこれは考えさせられる良作だと思います。少し注意力散漫な状態で観てしまったのでちょっと後悔はしていますが…。

ドラマーのルーベン(リズ・アーメッド)は、恋人のルー(オリヴィア・クック)と共にトレーラーで暮らしながらバンド活動で暮らす日々。あまりお金は無さそうですが、恋人と好きなことをして生きているだけに幸せそうです。

しかしある時から突然聴力が急減したルーベンは、診断によって「聴力が20%程度しかない」こと、そしてそれが治る見込みがないことを知ります。

手術によってある程度聴力を確保する方法があることも教えられましたが、その手術にかかる費用は4万〜8万ドルという高額。もちろん払えません。

なんとかしてバンド継続≒今の生活を続けようと願うルーベンですが、ルーに説得されて聴覚障害者の自助グループに入って生活することに。

自暴自棄になりつつも徐々に適応していくルーベンですが…彼の今後、そしてルーとの関係やいかに。

ルーベンの聞こえ方の表現が素晴らしい

タイトルがタイトルなので、結構「メタルが好きなので観たら全然違った(けど良かった)」という声を目にしたのでその辺りご注意頂きたいと申し上げつつですね、非常に地味ながらリアリティ溢れる良いドラマでした。

ちなみになんでタイトルが「サウンド・オブ・メタル」なのかと言うと、一つは二人がやっているバンドがメタルバンドっていう単純な理由だと思いますが、もう一つ意味するところがあり…これはネタバレになるので書けませんが、なかなか良いタイトルではないかなと思います。いわゆるダブルミーニングなんでしょう。

バンドマンでタトゥーだらけ、ヤンキー上がり風の彼女とトレーラーで暮らす男…とあまりその辺の入り口で判断するのも良くないですが、確かにそこから受けるイメージ通りに生意気なタイプだし自己中心的だしいろいろ感情移入しにくい人物ではあります。ただだからこそ、その彼が聴力を失っていくことでどう自分を変えていくのか、決断の後に控える未来がどのようなものなのかがとても考えさせられる内容になっていて、非常に良く出来ている映画なのは間違いありません。

また彼が聴覚を失って以降、時折「ルーベンの耳に聞こえてきている音」が映画の音として流され、観客にも「彼がどういう状態で生きているのか」が理解しやすいように作られているんですが、この音の作り方がとても上手いし素晴らしいアイデアでした。

確かにこういう状況であればイライラするだろうな、とかストレスを感じるだろうな、というのがよーくわかる。観客も聴覚異常を追体験するように観ていくことで、自ずとルーベンの心情に寄り添いながら物語を眺めることになります。この作りが本当に素晴らしかった。

これがもし普通の映画のように、ルーベンを第三者として音が普通に流れる映画であれば、きっとこんなにこの物語を“理解”できなかったと思うんですよね。おそらくルーベンに対しても感情移入が深まらなかったでしょう。

観た後であれば特に変わったことでもない、ありがちな手法に見えてもおかしくない「ルーベン側の聞こえ方」を混ぜ込んだ作りは、それ自体が一つの発明と言っても良いぐらいにこの映画の性格を見事に表現したテクニックだったと思います。本当に素晴らしい演出でした。

疑似体験としての価値の高さ

また彼の歩む人生そのものの物語についても、詳細は避けますがありきたりな「ああそのパターンね」みたいなこともなく、それ故にリアルで深く胸に刺さります。

見せ方もややドキュメンタリーっぽい見せ方なので生々しさがあり、アメリカと日本で違いはあるでしょうがもしも自分も聴覚を失ったとき、きっとこういう選択肢があってどれを選ぶか考えることになるんだろうな…というような疑似体験にもつながる作りになっていて、それによってより身近な問題として受け取れるように感じられるのも素晴らしい。

なにせちょっと前(映画開始時)までは普通にドラマーとして活動していた人が急に障害者になるというのは、今観ている観客も同じように急に変化が訪れる可能性があることにつながるわけで、その衝撃に対する心構えを抱くにもとても良い話だと思うんですよ。

「聴覚を失うこと」そのこと自体が良いか悪いかはまた別の問題で、まさにそこについて描いた映画でもあると思うんですが、とは言えやっぱり今普通に耳が聞こえている人間が突如聞こえなくなる恐怖というのはあって当然だし、その疑似体験をすることができるというだけでもかなりの価値を感じる映画だと思います。

誰にでも起こりうる話

最初に書いた通り、正直に言うと少し集中力を欠いた状態で観てしまったのでそれが非常に悔やまれるぐらいによく出来た映画だと思います。

かなり地味ではあるものの、後発性の聴覚障害をここまでリアルに感じられる映画は他に観たことがないだけにとても考えさせられたし、心に留めておきたい物語の一つになりました。

誰にでも起こりうる話でもあるので、ぜひ一度観ることをオススメします。

それと余談ですがベタながら今後大音量は避けて行こうかなと思うようになりました。耳掃除すらちょっとこわごわやりましたよ。このあと。

ネタバレ・オブ・メタル

タイトルですが、これはきっと終盤ルーベンが手術して聞こえるようになった音を「機械の音=サウンド・オブ・メタル」とする意味合いが強いんでしょうね。

あの音の違和感とつらさ、そこからのエンディングはすごく考えさせられるものがありました。それを導くジョーの言葉がフリになっているのも良い。むしろ聞こえる世界よりも聞こえない世界がこれからの自分の居場所なのではないか、そっちにこそ自分の求める世界があるのではないか…と希望すら感じさせる終わり方、とても良かったです。

きっと誰もがそう予感したのではないかと思うんですが、終盤再会したルーが新しい彼氏作ってんじゃねーのというゲス勘繰りも見事に外してくれたのがこれまた良い。お互い待ってたし好きなままだけど、でも一緒にいられる世界ではなくなってしまったから違う道を選ぶという生き方、これがまた良かった。

綺麗事で別れを選んだわけでもなく、言葉としては“悟った”と言った方が近いのかもしれません。「住む世界が違う」とかそういう類のものでもないんだろうと思うんですよ。いろんな意味で“変わった”ルーベンが、きっとお互いの幸せを考えての決断なんだろうなと。そこが尊いしすごく良いなと。

このシーンがイイ!

すべり台のシーンが良かったなぁ。そこでの関わりとドラマーの自分との接点が浮かび上がって。

あとはやっぱりラストシーン。考えさせられる。

ココが○

やっぱり音の表現が一番のキモだろうしそこが良かったと思います。

ココが×

かなり良い映画なのでアレコレ言うことはないですが…やっぱり地味ではあるので、そこだけ注意が必要かなと。

食後に観たら絶対寝てた自信があります。タイミングは気をつけましょう。

MVA

コレはやっぱりこの人かなぁ。

リズ・アーメッド(ルーベン・ストーン役)

主人公のドラマー。

ドラムも手話も練習して臨んだそうで、その甲斐あってかとても良かったです。

彼は「ナイトクローラー」の助手役が一番メジャーだと思いますが、キャラもぜんぜん違うしスゴイ。イカツイ。役者やで。

ルー役のオリヴィア・クックの変身ぶりもすごく良かったしびっくり。あとは自助グループリーダーのジョーを演じたポール・レイシーも良かったな…。やっぱりこういうドラマはみんな良いですよね。良い映画はみんな良い。当たり前の結論。

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