映画レビュー0815 『ソイレント・グリーン』

今回はBS録画より、古い映画です。すごく観たかったやつなので相変わらずBSプレミアムはいい仕事しはるで、ということで。

ソイレント・グリーン

Soylent Green
監督
リチャード・フライシャー
脚本
スタンリー・R・グリーンバーグ
原案
『人間がいっぱい』
ハリイ・ハリスン
出演
チャック・コナーズ
ジョゼフ・コットン
リー・テイラー=ヤング
音楽
公開
1976年5月9日 アメリカ
上映時間
97分
製作国
アメリカ
視聴環境
BSプレミアム録画

ソイレント・グリーン

2022年、貧富の差が激しくなった近未来。合成食品の製造・供給を担う「ソイレント社」の取締役・サイモンソンが殺害される事件が起こる。捜査に携わるソーン刑事は、同居人の「知識担当」ソルと共に事件を追うが、その背景にはソイレント社の隠された秘密があり…。

いかにもなディストピア&レトロフューチャーがたまらない。

8.0
後々にもいろんな影響を与えた“アレ”の元となる映画
  • 人口が爆発的に増加した近未来が舞台
  • 食事はほぼ加工食品のみで、生鮮食品は超高級品に
  • 女性の扱いも示唆的でディストピア感アリ
  • オチが有名すぎるので今から観ても結末の驚きは少なめ

タイトルの「ソイレント・グリーン」は劇中に出てくる“(確か)プランクトンを原料とした”新製品で、味が良くて評判なのだとか。唯一の配給日には我先にと奪い合いが起こるほどの人気食品、この正体に迫るのがこちらの映画ですよと。

主人公のソーン刑事は、ソルという爺さんと一緒に暮らしています。爺さんは…正式名称は忘れましたが「知識係」みたいな感じでですね、刑事であるソーンを情報面でサポートする役割。

なんでもこの時代では「本は滅多に作られない」存在だそうで、その書籍の代替としての存在がこの「知識係」ですよと。昔から残る文献を調べたり、またそこで得た知識を活用してソーンの捜査を手助けするわけです。

公的に警察から雇われている身なのかは不明ですが、ソーンの上司的な警部補が「あいつ爺さんだから他の知識係にした方が良いぞ」的なアドバイスを送っていたことからもわかる通り、おそらくこの時代の刑事の相棒としては一般的な存在のようです。

さて、そんなソーンとソルの二人は、水道もない粗末な部屋で二人暮らしをしているんですが、これはまだこの時代ではマシな方で…ソーンが部屋を出ると、目の前の階段にはびっちりと足の踏み場もないほどにそこで寝泊まりをする人たちが。

舞台は2022年…もう今から4年後の設定ですが、この映画の世界では人口が爆発的に増加したせいで環境破壊が進み、生肉や野菜は「超貴重品」として高値でやり取りされる世界になっています。まあ一昔前の近未来モノとしては割とよくある設定です。「サイレント・ランニング」あたりとまさに同じような世界観。

で、物語は一人の富裕層の殺人事件から始まります。殺されたのは「ソイレント社」の取締役、サイモンソン。彼はいわゆる富裕層にあたり、家には水道はもちろん石鹸やらお酒やらもあって野菜も肉も買い出しに行くレベル。そして「家具」として若い美女が備え付けられているんだとか。

最初「家具」って奥さんに対する比喩なのかと思って観ていたんですが、どうも女性は実際その家(部屋)に“備え付け”で常備されるという、本当の意味での「家具」的な存在らしく、住人が変われば彼女の属する対象も変わるという…すごい設定ですよね。男しか入居しないのか? とか疑問も出てきますが…きっと女性は従属的な立場でしか生きられない存在の世界なんでしょう。今だったらこの設定の時点でお蔵入りになりそうなぐらい叩かれそうですが。

さて、その殺された彼が取締役を勤めていた「ソイレント社」なんですが、この会社はろくに生鮮食品が手に入らないこの世界で、大半の人々(もちろんソーンやソルも)が生きるために食べる加工食品「ソイレントシリーズ」の製造元の会社です。大豆を元にした「ソイレント・イエロー」他いろいろ作って配給しているようなんですが、中でも大変な人気の新製品「ソイレント・グリーン」がどのようにして作られているのか…を、殺人事件を追うソーンの行動を通して明らかにする、というSFサスペンスでございます。

んで、まあもうご存知の方も多いと思うんですが…このタイトルにもなっている「ソイレント・グリーン」という固有名詞がですね、創作の世界ではものすごく有名なんですよね。

僕が触れたもので言えば「ゼノギアス」にこの設定が(いわゆるリスペクト的に)まんま使われているシーンがあり、「まんま」というのも知っていたので早い話がネタバレを知っている状態で観たわけです。

実はもっと別の何かを中心に据えた話なんじゃないか…とか思ったんですがそれもなくてですね、まんまこの「ソイレント・グリーンが実は…!!」が大オチのお話なので、うわー知ってるよ全然びっくりじゃないじゃーんと思いつつもお話自体古い割にはなかなかよく出来ていたので飽きることもなく観られました。

当然ながらそのオチがどういう話なのかは書きませんが、ただそれだけ後年の創作物に影響を与えるほどインパクトの強い話なのは疑いようがなく、それ故に新鮮さを失っているというなんとも気の毒な立ち位置の映画ではあるでしょう。もっともそれだけに一見の価値がある映画でもあると思います。

そのオチの部分以外で言うと、まずやっぱりこの頃のディストピア感とレトロフューチャー感はたまんないですね。なんかね。

ソルの設定的にもそうですが、ディストピア+レトロフューチャーという意味でも「華氏451」に近い映画だと思います。あの映画を観た時はチープ感の方が気になった記憶があるんですが、こういう映画をいくつか観ているとなんとも言えない味があるなと逆にもっと観たい感が強くなる不思議。

時代的には少し先の映画になりますが「未来世紀ブラジル」辺りにも(この映画だけというわけではなくこの頃のレトロフューチャー感が)少し影響を与えていそうな雰囲気もあり、そういった意味でもこの手の古いSF映画は観る価値がある気がしますね。間違いなくこの頃にしか描けない未来像みたいなものがあります。

幸いなことに現代はこの映画ほどディストピアに近いこともなく、生鮮食品も普通に手に入る世の中ではありますが、栄養摂取のためという理由で似たような加工食品が出てきているのはなかなか面白いものがあります。その名もそのもの「ソイレント」だったりしますからね。

ただこの映画で描く未来はいかにもなディストピアではあるんですが、ところどころなんとなく現代とリンクする部分もあるのがまた面白い&怖いところでもあって、その辺もまたこの頃のSFを観る面白さが増す要因かもしれません。

「本は滅多に作られない」なんて結構笑えない設定で、最近もよく聞くように出版業界は確実に縮小しているだけに、こういう未来が意外と近いのかもしれないというリアリティが「ソイレント・グリーン」の恐怖を増してくれるかもしれないという。面白い。

殺人事件そのものの捜査については割とサブ的というかあまり真面目に追うようなしっかりとしたものでもなく、あくまで「追って行った結果ソイレント・グリーンの秘密に触れる」のが主題になってくるお話なので、そっちには期待しないでおきましょう。ただオチを知っていてもそれなりに惹きつけてくれるうまさがある映画でもあると思うので、一回観てみるのも良いのではないでしょうか。

リアルタイムでこの映画に触れて初めてオチを知った人たちの衝撃たるや…やっぱりすごかったんだろうなと思います。僕もゼノギアスでのそのシーンは未だにトラウマですからね…。オチを知らない人はぜひ観て欲しいな〜。

このシーンがイイ!

やっぱりラストなんだろうと思うんですが、オチを知っている身からすると「ホーム」の方が印象的だったかも。これまたありそうな未来だよなぁ…。

ココが○

設定と世界観、この辺の秀逸さは唯一無二かもしれません。やっぱり古いSFの名作って何かしら残るものがあるんですよね。

ココが×

くどいようですが「有名すぎるために知っちゃってる」人が多いだろう点が辛いところ。それでも観る価値はあると思います。

あとソーンとシェリルの関係性が唐突すぎ。あそこだけものすごく違和感が。「そういうのが当たり前」な時代っていう設定なんだろうけどさ…。

MVA

主人公はチャールトン・ヘストン。さすがに僕でも名前を知っている往年の名優ですが、手癖の悪い役なのであまり惹かれず。となるとやっぱりこの人じゃないかなと。

エドワード・G・ロビンソン(ソル・ロス役)

ソーンの同居人の爺さん。

物語上でもかなり重要な役割だし、落ち着いた雰囲気と悲しげな爺感が素敵でした。

この映画が遺作になったようで、こう言ったらなんですが最後に良い演技を残してくれたと思います。

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