映画レビュー0912 『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
改めて今更GWに観た映画アップしてんのかと我ながら驚愕してますが、ここで一旦先週観てきたこちらの映画を挟みます。
ということでスパイダーマン。
正直「エンドゲーム」でもうMCUは一旦良いかなぐらいには思ってました。機会があれば観るかぐらいで、劇場行ってまで観るつもりはないぜみたいな。
ただこれまたご多分に漏れず評判が良いのと、トムホのパーカー君好きなのと、MCUフェイズ3ラストを飾る映画であるのと、ライスちゃん出てるのといろいろあって結局行っちゃったよということで。
当然ながら最寄りの劇場のイチオシはIMAXレーザー3Dなんですが、いよいよもってもう3Dでは観たくないという強い意志によって通常のスクリーンでの鑑賞です。ただ割と大きめのスクリーンだったからまあ良かったんですけどね。
ちなみに作品の性質上、極力避けるようにはしますがある程度は「エンドゲーム」のネタバレに触れざるを得ないので、未見の方は読まない方が良いでしょう。っていうか「インフィニティ・ウォー」で止まってる人からすれば「は? スパイダーマンできんの?」って話だし。やるよ、って時点でネタバレですからねある意味。
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
CG全盛時代を逆手に取ったストーリーで新たな世界の見せ方もお上手。
- 2週間の研修旅行中にMJに告白したいピーター、しかしニック・フューリーによって計画台無し
- またも訪れた世界の危機に謎のヒーローが参戦
- 学生生活を優先したいピーターにそうはさせないフューリーの構図は前作と逆の様相
- 相変わらず「青春ヒーローモノ」としてオンリーワンの立ち位置
あらすじ
えー、いつも通りのご紹介からスタートってことでね、一応書きますが。
今作はマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)23作目となりまして、前作に当たるのが例の「アベンジャーズ/エンドゲーム」、次作は今のところ(多分)未発表です。んで最初に書いた通り、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」以来続いていたフェイズ3の最終作となりますよと。
大体マーベルの映画を観に行くと次の作品の予告編を流してくれるんですが、今回はそういったこともなく、もしかしたらここからまた少し間が空くのかもしれませんね。
ちなみに今後のMCU作品として決まっている(と噂されている)のは何作かあるようですが、なにせエンドゲームがアレ(わかりまっしゃろ的なアレ)だったのでフェイズ4以降は新しいヒーローが多く登場してくるんじゃないでしょうか。わかんないけど。
ってことで今回のスパイダーマン。いろいろありつつも学校生活に戻っていったピーター・パーカー=スパイダーマンですが、今回は2週間の研修旅行(夏休みも兼ねた学校のイベントっぽい)でヨーロッパに行くぜということで、そこでMJとお近付きになって告白するプランを練り、ネッドにお披露目しております。青春ですなぁ。
一方「エンドゲーム」で救われたはずの世界にはまたも驚異がやってきて、何やらヤバイ自然災害系ヴィラン的なやつらがご登場したんですが、そこに颯爽と現れた謎のヒーロー・ミステリオがひとまず地球を救ってくれ、事なきを得ましたよと。やったねと。
しかしその自然災害系ヴィラン、今度はなんとタイミング悪くピーターたちが訪れていたヴェネツィアにご登場、これまたミステリオが対処したもののまだ残ってるぞってことでニック・フューリーはピーターに手伝えと迫ってきます。もう学校優先の「近所のトラブル解決ヒーロー」じゃ困るんだぜと。むしろ今後はアベンジャーズの中心メンバーとして活躍してくれよとグイグイ来るわけです。
本人は「旅行中はスパイダーマン封印!」のつもりがスーパーセクシーメイおばさんの機転によって図らずもスーツ持参となったスパイダーマン、やむなくミステリオと共闘しつつ驚異に立ち向かい、せっかくの計画も台無しだぁ…としょんぼりしつつも世界の危機に対応しなければならない辛い状況の中、果たしてピーターはどうなる、ミステリオは何者だ、そしてMJは…! とティーンエイジャーらしい「自分とヒーローの葛藤」に悩まされるストーリーになっております。ハイ。
ヒーロー像に対するリアルな悩みとの対峙
スパイダーマン単体で観た場合、前作では「僕もアベンジャーズに入りたい入れるのかな入るぞ」と気合いが空回りしているぐらいに前のめりにヒーロー活動に熱中していたピーターが、今度はまったく反対の「学校優先(というかMJのことしか頭にない)にしたいのにヒーロー活動が邪魔してくる」的に逃げる方向に動くのが面白いところですね。「ピーターはんも偉うなりはりましたなぁ」と嫌味の一つでも言ってやりたくなるぐらいの変わりっぷり。
最もそれは前作と今作での彼のヒーロー序列に関わってくるお話なので「アベンジャーズ側視点」で見れば当たり前。エンドゲームでいろいろあった(一応ボカします)だけに、まあいわゆる世代交代と言うか「そろそろ君が中心になるぐらいの気概でやってもらわんとかなわんで!」っていう。
しかしピーターとしてはその現状にまだ頭が追いついていないのか、はたまたそういう“モード”に切り替わっていないのか、ヒーローとしての責任感よりもMJ、とにかくMJと良い感じになりたいという気持ちしか無いという思春期大爆発な一本でございますよと。
結局この映画のスタート時点では、ピーターは「ヒーロー活動の意味」を正しく理解していない状態から始まっているんだと思うんですよ。
「ヒーロー」とはどんな存在で、どういう犠牲を伴うのか、そしてそれに対してどのような覚悟が必要なのか、それがわかっていないピーターがその「こうあるべきヒーロー像」に直面し、それを乗り越えるまでの物語が今作なんだろうと思います。
この「ヒーロー像に悩む」ヒーローというのはしょっちゅう出てくるテーマだと思いますが、しかしこの映画は思春期の等身大な少年が主人公ということも手伝って、非常にリアリティのある身近なテーマになってきているのが良いところですね。今まで以上に誰でもわかる悩みに落とし込まれている感じで。
ピーターの頭の良さ際立つ
また前作以上にピーターの“頭”の部分が重要なお話でもあると思います。
彼は観てると(主にバトル中は)本当に臨機応変に対応していて、「この能力持ってても相当頭の回転が速くないとこれだけ戦えないよな」と感心するぐらいに一瞬一瞬の判断力が素晴らしい。
その場その場での切り替え、リカバリー能力の高さはもしかしたらアベンジャーズでも随一なんじゃないか、というぐらいにかなり地頭の良い動きをするのが印象的で、それだけに“頭の良い人”であることは間違いない、と思うんですが…。
一方で彼のその“頭の良さ”に付け込むかのようなトラップもあったりして、前作以上にピーターの個の部分が大事な話でもあるし、「頭は良いものの経験が少ない善良なヒーロー」の姿をきっちり捉えるストーリーはなかなか良く出来ているんじゃないかと思います。
それもこれ見よがしに優秀さを見せつけているわけではなく、さり気なく「ピーターって頭いいんじゃないか?」と感じさせるさじ加減も◎。
ただ…大きな流れとしてはちょっと残念な部分(これはネタバレ回避のためここでの詳細は避けます)も結構あり、そこもうちょっとうまくできんかったんかいなと思わないでも無いです。まあこれは観客の無責任な感想でしかないんですけどね。
ちょっと予想を裏切るような良さがなかったのが残念だし、ヴィランが魅力的だった前作と比べると少し弱いかなぁと言うのも確か。
新しい世界の見せ方がお上手
お話的にはですね、これまた詳細は控えますがなかなかこのCG全盛時代を逆手に取ったかのような、なんならちょっと皮肉なぐらいのストーリーで新しい世界を見せてくれている感があり、その辺やっぱりMCUだなと思いますね。
僕のようなおっさん的には、CGってやっぱりなんだかんだいまだに「現実の補完をいかに違和感なく描けるのか」が大事な印象が強いんですよ。リアルで描けないことをCGで描いてリアルに寄せていく、そのためのツールというか。
現実でやれることも予算とか倫理的な部分でCGに置き換えたり、逆に現実では描けないものをCGの力を借りて描いたりとか。SFなんかそっち方面ですが。
で、一昔前であれば「CGがちょっと軽い」とか違和感の有無を気にしながら観ていたのが当たり前だったのが、もうここ10年ぐらいはそんなことは気にならなくなり、現実とCGの境目を気にしながら観るなんてことは無くなってきたと思うんですよ。少なくとも僕の場合は。(人によっては最初から気にしてないのかもしれません)
そうやって「CGと現実の境目を気にする必要がなくなった」今だからこそのストーリーと言うか、それ故に説得力を持たせる内容になっているのがとても面白い話だと思います。今のテクノロジーがあれば「実際のこういうことあり得るよね」と思わせる作りの巧みさと言うか。
こういう現実とのリンクのさせ方のうまさはさすがだし、「青春ヒーローモノ」の影に隠れがちな側面ですが、意外とこの話の核の部分というのは今後の映画に影響を与える可能性があるんじゃないかなと適当なことを言っておきたいわけです。
種まきが足りてないのが不満
MCU全体で観ると、「エンドゲーム後」をきっちり受け止めるストーリーだとは思うんですが、ただ「うおーこれはやっぱりフェイズ4も観ないと…!」と思わせるほどのパワーも無かったのは残念。あくまで僕個人の話ですが。
コレ書いちゃうとアレかもしれませんが…まあ早い話がフェイズ4に向けての種まきが圧倒的に足りてないので、もう本当にこれで「よし一旦終了だな」ってなっちゃう感じなんですよね。一息つけちゃう。
なにせエンドゲームがエンドゲームだっただけに、ここでもう一度「やっぱりこれは今後もMCU気になりまくりやないか…!」とさせるだけの何かが欲しかったなと思います。
一応スパイダーマン的に気になる布石は打っているので、シリーズ3作目となる次作も当然観るとは思うんですが、ただそれはあくまで「スパイダーマン的に」気になるだけであって、MCU全体にはあんまり関係ないしそこが弱いのが残念でっせ、と思うわけです。
まあとは言えね、さすがにあの「エンドゲーム」後とは言えMCU、当然ながら面白いしよく出来てます。外さない感がすごい。
位置付け的には「エンドゲーム後の喪失感を観客と共有」的な側面もあるし、まあキリも良いからここまで観てフェイズ4以降はどうしようか各々その時考えましょうね、って感じでしょうか。
このシーンがイイ!
なんだかんだ言ってバーでのピーターとミステリオのやり取りのシーンかなと思います。あそこはうまいなぁと。
でも本当は職場でのメイおばさんかもしれない。メガネで谷間見せてエロ過ぎるんですけどなんなのマリサ・トメイ。おかしい。50代であのエロかわいさおかしいでしょ!!
ココが○
青春とスーパーヒーローの掛け合わせ方がとてもお上手なので、その辺唯一無二になってきている点と、上に書いたようなCGの使い方&ピーターのキャラクターの描き方。
ココが×
一番は「フェイズ4に向けての種まきが足りない」ところでしょう。ってことは本編とはあんまり関係のない不満かもしれませんが、なにせポジションがポジション(エンドゲームの直後)なので、その辺もう少し頑張った方が後々効いてくるんじゃないの、と余計なことを思わなくもないです。
MVA
今回アンガーリー・ライスちゃんがなかなか出番も多く、それ故彼女と良い感じになるネッドに振り回された徒労感もあったなというファン心理の中、相変わらずトムホも良いしマリサ・トメイはエロいしコビー・スマルダーズも久々に見せ場あったしゼンデイヤも素敵さ増してきたしで候補が多い中、結局この人かなぁというチョイス。
ジェイク・ジレンホール(ミステリオ役)
昔の記事にも書いている通り、元々そんなに好きではなかった人なんですが、しかしやっぱりウマいんですよねこの人。良い役も悪い役もウマい。
まさかヒーローモノになんて出ないだろうと思っていたところにまさかの参戦、そして今作の活躍と。さすがですねホントに。
いかにもヒーロー的なスーツも意外と似合ってたりして、見た目的にも意外とイケるやんっていう。