映画レビュー1267 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
骨折のため絶賛停滞中なんですがアマプラにスパイダーマンの最新作が来ていると知ったので、まあ気楽に観られるし観ようかなと久しぶりに休みの日に映画を観ましたよ。実際。
なお例によって続編ものなので開幕から前作のネタバレになります。気になる方はご注意を。
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
『スパイダーマン』
スタン・リー
スティーヴ・ディッコ
トム・ホランド
ゼンデイヤ
ベネディクト・カンバーバッチ
ジェイコブ・バタロン
ジョン・ファヴロー
ジェイミー・フォックス
ウィレム・デフォー
アルフレッド・モリーナ
トーマス・ヘイデン・チャーチ
リス・エヴァンス
ベネディクト・ウォン
トニー・レヴォロリ
マリサ・トメイ
2021年12月15日 各国
148分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)
良くも悪くもファンサムービーの極み。
- 前作直後、正体がバレてしまったピーターは受験も上手く行かず大ピンチに
- 時間を戻せないかドクター・ストレンジに相談したところ大問題が発生してしまう
- 見知らぬヴィランに目の敵にされたピーター、どうやら別ユニバースに原因が
- スパイダーマンに思い入れの強い人にはたまらない作品
あらすじ
相変わらずMCUはスゲーな、面白かったなと思いつつもそれなりに不満もあり、なかなか手放しでは褒められない映画だなと思います。
前作終了直後のお話。
ミステリオによって正体がバラされた挙げ句、彼の殺害容疑までかけられてしまったピーター。彼に味方するもの、敵対するもの双方から過剰な注目を浴びる形となり「世界一有名な男」として大騒ぎ。
裁判こそ不起訴で逃れられたものの、MJとネッドと3人で行こうと誓ったMITの受験も上手く行かず、意気消沈。
そこでかつて共にインフィニティ・ウォーを戦ったドクター・ストレンジの魔術の力で時間を「正体がバレる前」に戻してもらおうと頼みに行くも、もうタイム・ストーンが無いためにできないと断られてしまいます。
ですが代案としてストレンジが提案してきたのが「人々がピーターの存在を忘れる呪文」。やったぜと頼むもののやっぱりMJとネッドは外してくれ、やっぱりメイおばさんも…と詠唱中にアレコレお願いしたもんだから呪文は失敗してしまい、結果見知らぬヴィランから「おのれピーター!」と追われることになってしまう始末。
どうやら呪文の失敗によって別のユニバースからヴィランを呼び寄せてしまったようなんですが、せっかくだから彼らを善人に“治療”してから戻そうよ、と計画するピーター。これがまた問題を呼び起こしてしまい…あとはご覧くださいませ。
焼きチーズ映画
僕はもうMCUはフェーズ3(前作のスパイダーマンまで)で脱落してしまったのでその後のアレコレは観ていませんが、今作に関してはそれも特に問題なく、フェーズ3までの知識で十分な内容です。
ちなみにMCU的に言えば前作は「エターナルズ」になります。エターナルズ自体は観たいんだよな…。監督はクロエ・ジャオだしあのマ・ドンソクも出てるしさ…!
物語は前作スパイダーマン終了直後から始まるので、もうまんまあの続きという感じ。連続で観ても楽しめそうです。
相変わらず(現場がやってられねぇと反旗を翻して話題になっていましたが)CGのお仕事も巧みでスピード感溢れるバトルに目まぐるしいシーン展開が続き、約2時間半という長丁場ながらまったく飽きさせない作りなのはさすが。腐ってもMCU、まだまだ元気だぜといったところでしょうか。
また「最も青春映画寄りのスーパーヒーロー映画」のスパイダーマンだけあって学生生活とヒーローの両立的なおなじみのテーマが根底に流れつつ、青臭い主人公によって招かれる危機で世界がヤバくなっちゃう辺りも“らしい”作品だなと思います。
ただ今作はなんだかんだドクター・ストレンジも結構ポンコツじゃね疑惑が出てくるのもポイントでしょう。まああの人を完全無欠にしちゃうとなんかどうにもならない感があるから難しい気もするけど。
「さすがにちょっとストレンジのポンコツっぷりも問題過ぎないか?」と疑念が湧いたところで恒例のエンドロール後のシーンによって「その回収を描く」のであろうドクター・ストレンジ2作目に繋いでいたので、それを観ればある程度納得できるのかもしれません。相変わらず商売が上手いというかゲスいというか…。
話を戻してスパイダーマンのお話。
ある程度噂が流れていたので、僕としては「ああやっぱり」ではあったんですが、とは言え何も知らない人もいると思うので核心的なところには触れずに一言で言えば、タイトルに書いた通り「ファンサービスの極み」とも言える映画でした。
これスパイダーマン好きには相当たまらない映画だと思うんですよ。
MCU好きというよりもスパイダーマン好き。なので厳密に言えば「スパイダーマンファンへのサービス」が強い映画ですね。
ただファンサ映画の割にファン以外でもしっかり楽しめるように作られているのがさすがとしか言いようのない完成度なんですが、とは言えこの手の“ファンサ”は端的に言えば“ズルい”ものであるのは間違いなく、「観客が喜ぶに決まってる作り」を主軸に据えたのはなんと言うか手放しに褒めるには悔しい感じ。
そりゃチーズ乗せて焼けば大体のものは美味いでしょ、っていう例のアレですよ。焼きチーズズルすぎ問題。それの映画版です。焼きチーズ映画。
いや別に面白いし良いんですけどね。ただ安易な気はするんですよ。チーズ乗せて焼くのはね。
とは言え「その方向に持っていく」のに無理のないフリをシリーズ通してやってきているのはすごいなと思います。もちろんそのつもりでMCUを作ってきてはいないと思うので、「この設定ならこれができるな」と考えた監督や脚本家たちの功績なんでしょう。
逆に言えばそのフリが無かったら「なんでそうなるの?」で納得できない映画にも見えそう。もしかしたらスパイダーマンシリーズのみ観てきた人とかこの映画から入った人はそう見えたかもしれませんね。
その意味では「MCUが続いているからこそ」の映画であり、同時に過去の実績に寄りかかった映画でもあるので、いきなり一発目に何の関係もなく劇的に面白い映画を作るのとは訳が違うと思います。
つまりは最初の「アイアンマン」にはどう転がっても叶わない作りであって、今作にも登場するハッピー・ホーガンを演じたジョン・ファヴロー(監督)はやっぱり偉大だったねというお話です。
良くも悪くもMCUらしい
少々腐したような内容になってしまいましたが、最初に書いた通り「やっぱりMCUは面白いね」と素直に思ったぐらい面白かったのも事実です。ここまで2時間半費やすのに心配がいらないものもなかなか無い気がする。まったく事前情報無しの映画で2時間半はちょっと尻込みしちゃいますからね。
ただ例によって単体だけで成立するものではない(この映画はなおさら)ので、そこはどうにも難しさが残るところ。ディアゴスティーニを1冊だけ買ってもね、ってやつですよ。
おそらくMCUを追っている人であればほっといても観るだろうし、触れてきていない人にとってはスルーで間違いないだろうし、結局僕のように(しかし結構いそうな)「インフィニティ・ウォー終わってもういいや勢」にとってどうか、という話だと思いますが、そういった層でも楽しめる…けど別軸の思い入れも必要な作品でもあり、なかなか評価が難しいところです。
まあそれも「100%楽しみたいのであれば」の話であって、ただ観る分にはやっぱり面白いと思いますよ。普通に。
かと言ってこれでまたMCUに復帰するのかと言われればそこまでのものもないし、disney+以外で配信してくれればまだしもそれもないだろうと思われるので残念ですがやはり物別れとなります。
ちなみになんでこの映画はアマプラにあったのかと言うと、おそらくですがスパイダーマンはソニーが半分権利を持ってるからだと思われます。完全にディズニーだけのものはおそらく他所で配信はしないでしょう。
そのうち気が変わって短期集中的にdisney+に入ってカカッと観ていく可能性はありますが、今のところその予定はありません。残念。
このシーンがイイ!
ドクター・ストレンジとのバトルも楽しかったんですが、個人的な一番のポイントは「窓の外からレンガが投げつけられた」シーンです。
あの人を知っている人であればたまらないシーンだと思います。超チョイ役だったけど。
ココが○
面白いのは間違いないです。世間的にもかなり高評価なので、好きな人は迷わず観ましょう。
ただ絶賛評が多すぎて埋もれていると思いますが、絶対に「禁じ手だから嫌い」という人もいると思います。
上に書いた通り設定的には禁じ手とは言い切れないだけに難しいところですが、そう見えてしまう人がいても無理はないと思うのでそれはそれで尊重したい意見だなと。
ココが×
その“禁じ手”に見えてしまう部分をどう捉えるか、でしょうか。
僕は全然アリだと思いつつも、とは言えそこにそんなに思い入れが無いのでちょっと損をしたような気になってしまい、そこが良くなかったというか…「知らない人が損したような気がしてしまう」作りそのものに少々残念感がある、というところでしょうか。
MVA
まーいろんな人が出てましたね。これもさすがMCUという感じで。本当に豪華でした。
ただその分中心が薄まってしまったというか、際立ってこの人が良かったなというのもあんまりなくて悩ましいところ。ですが…この人にしましょう。
ウィレム・デフォー(ノーマン・オズボーン役)
ヴィランだったり普通のおっさんだったりの今作キーマン。
ウィレムさんはさすがに味のある佇まいだしまさかこの映画に出てくるとは思わなかった嬉しい誤算により選出です。役自体も演技的に美味しい役だったし。
あと地味ですがアルフレッド・モリーナも良かった。イラつき触手おじさん。
まあトムホも相変わらず良いし、結局みんな良かったんですけどね。特に不満はございません。