映画レビュー0810 『第十七捕虜収容所』

今回はBS録画より。

かつてTSUTAYA DISCASに入会していた頃もリストに載せていたという、まー長いこと観たくても観る機会がなかった映画の一つ。運良くBSでやってくれたんですよね。久々のワイルダー映画です。

第十七捕虜収容所

Stalag 17
監督
脚本
ビリー・ワイルダー
エドウィン・ブラム
原作
ドナルド・ビーヴァン
エドモンド・トルチンスキー
出演
オットー・プレミンジャー
ロバート・ストラウス
ハーヴェイ・レンベック
ネヴィル・ブランド
ピーター・グレイブス
シグ・ルーマン
ドン・テイラー
音楽
公開
1953年7月1日 アメリカ
上映時間
120分
製作国
アメリカ
視聴環境
BSプレミアム録画(TV)

第十七捕虜収容所

アメリカ人の下士官ばかりが収容されているドイツの第十七捕虜収容所・第4兵舎。ある日2人の捕虜が脱走を試みるも待ち伏せしていたドイツ兵に射殺され、捕虜たちは「兵舎内にスパイがいるのではないか」と疑い始める。

地味でシンプルな捕虜映画。

6.5
戦争捕虜・脱走映画の先駆け(?)
  • 戦争捕虜の日常と人間関係と脱走を描いた捕虜映画の基本的物語
  • 改めて希望を持つこと、楽しみを見出すことの大切さを感じる
  • 軸になる話も割とあっさり目なので、今から観れば盛り上がりに欠ける面も

冒頭に「戦争映画は数あれど、捕虜を描いた映画はない」的なナレーションが入るので、おそらくは捕虜を描いた映画としては最初期の部類に入るんでしょうね。自称でしかないので詳しいところはわからないんですが。ただまあこの手の映画がまだ珍しい頃だったのは間違いないんでしょう。ちなみにモノクロです。

舞台となる「第十七捕虜収容所」は、おなじみ第二次世界大戦中のドイツにある収容所で、その中の第4兵舎という一つの兵舎が中心に描かれます。当然他にも兵舎はいくつもあるんですが、元が舞台劇だったためか他の兵舎は話だけで出てこず、後はたまーに収容所全体(屋外)のシーンが出てくるぐらいで、大半は一つの兵舎内で展開します。

この第4兵舎はアメリカ人の下士官ばかりが集められた兵舎で、基本的にはみんな仲良くアンチドイツで頑張ってます的な雰囲気なんですが…中に一人だけ、異彩を放つ人物がいるわけです。

それが主人公のセフトン。おなじみウィリアム・ホールデンが演じます。彼は商売上手なタイプで、兵舎内の仲間に作った酒を売ったり女性捕虜の覗き見を商売にしたり賭場を開帳したりして、仲間たちから兵舎内通貨と言えるタバコをむしり取ってはドイツ兵に横流しして買収し、いろんな嗜好品を入手しています。

物語冒頭に2人の捕虜が脱走計画を実行に移すも待ち伏せしていたドイツ兵に射殺されてしまうんですが、そのときも彼は「失敗に賭ける」と即席の賭場を開帳、仲間たちから怒りを買いつつも見事に大量のタバコをせしめたことで、反感を買うと同時に一つの疑惑の目を向けられます。

「脱走失敗は内通者がいたからじゃないのか、そしてそれは最初から失敗に賭け、なおかつドイツ兵ともよろしくやってるセフトンに違いない」と。

こうしてセフトンと彼の助手であるクッキー vs その他の兵舎内捕虜たちのちょっとした緊張感もありつつ、他愛のない希望の中、日々を過ごす捕虜たち。果たしてスパイはセフトンなのか、それとも…というお話です。

スパイが誰だ的なスパイス(スパイだけに)はありつつ、全体的には「捕虜たちの日常」という感じで特に派手さも無ければ緊張感もない、割とゆるい感じの戦争映画だと思います。所長は嫌なやつですが「シンドラーのリスト」のゲートのような極悪非道感はないし、第4兵舎担当のドイツ人軍曹も上から厳しく接するようなタイプではなく、割と捕虜たちに軽く扱われてるようなタイプだし。

雰囲気としては非常に「大脱走」に似たものがあり、おそらくあの映画にも影響を与えたんじゃないかなという気がします。ただあっちは「脱走」という大きな柱一本で勝負するという点で面白さがわかりやすかったと思いますが、こっちは脱走話もありつつ中心はほぼ普通の日常で少しずつ状況が動いていく、というようなものなので、イマイチ乗りにくい面がありました。

おそらくは「(多分)最初期の捕虜映画」ということもあって、「捕虜を顔の見えないその他大勢ではなく普通の人間として見せる」ことに主眼を置いた映画なんじゃないかなーと思うんですよね。

捕虜にも当然ながら生活があり、どうやって希望を持って“正気を保つ”ようにしているのか…という部分だったり、仲の良い人悪い人がいて、どうやって集団生活を送っているのかだったり、捕虜を「顔の見える近い人」として認知させることで戦争をよりリアルで身近なものに描こうとしたんじゃないか…と。

そしてこの映画のそういう実績を踏まえた上で「大脱走」のような傑作が生まれたんじゃないか、と勝手に思ってます。完全に妄想なのでまったく裏付けがない話なんですが。

話としては、女捕虜が来たからちょっと色めきだったりとか赤十字の査察のときだけ良い毛布が配られるとか本当に他愛もないエピソードばっかりで、それだけになかなか今観て唸るような面白さは難しいんですが、ただやっぱりまだまだ戦争が身近だった時代に、「人間としての捕虜」を伝える、という意味とその新鮮さは結構あったんじゃないかなという気がするんですよね。それ故今も名前が残る映画なんでしょう。

正直、ビリー・ワイルダーとしては話もシンプルだし、軽さとかオシャレさが際立つような映画でもないので、自分としてはちょっと期待外れな部分はありました。が、時代背景を考えれば仕方がないのかなあという気もします。

今あえて観るほどのものではないかもしれませんが、まだ「大脱走」も未見であればセットで観てみるのもまた一興かなと思います。なんとなく。

第十七ネタバレ収容所

捕虜界隈に詳しくないせいなのかわかりませんが、内通者だった「警備係」がどういうものなのかがよくわからなかったのもちょっと辛いところでした。

もう少し「警備係はこういう役割」っていうのがわかるような描写があれば、もっと驚きがあったのかもなぁと思います。

彼もあっさり陥落しちゃうし、セフトンが現場を見るシーンもいくらなんでも油断しすぎじゃね感が漂ってるしで、もうちょっと細部の詰めを頑張ってほしかったですねぇ…。

このシーンがイイ!

失意のアニマルがハリーをベティ・グレイブルと勘違いして踊りに誘うくだりかなー。アニマルのダメさが好きでした。

ココが○

最初と最後を除き、ドンパチが無いのは良いところ。戦争映画ですがきな臭さはありません。

あんまり悲壮感がないのも良い点でしょうね。割と気楽に観られます。

ココが×

やっぱりどうしても後年似たような映画で大傑作が作られちゃってるので、今あえてこれを観てすごく良い、っていうのはなかなか考えにくいとは思います。

全然悪い映画じゃないんですが、やっぱり今の時代から観ると少しスローに感じる面もあるし辛いところですね。

MVA

ウィリアム・ホールデンはさすがの存在感で、いかにもこの人らしい役と演技がバッチリハマっていたと思いますが、うーん…この映画はこの人な気がする。

ロバート・ストラウス(アニマル役)

無精ヒゲの中年丸出し捕虜。

この中年感がとても他人事に思えなくてですね、ちょっと油断するとこうなるぞ感がしんどかったりしましたが、しかし彼の存在はこの映画で最もコミカルかつ癒やしだったような気がするんですがどうでしょうか。

あと全然気付かなかったんですが、中心人物の一人・プライスを演じるのがあの「スパイ大作戦(=ミッション:インポッシブルシリーズの元)」のリーダー、フェルプス君でお馴染みのピーター・グレイブスだった、っていうのが驚きました。若い頃こんなキリッとしたイケメンだったのか…!

彼も役どころの良さ含め、とても良かったです。

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