映画レビュー0556 『おみおくりの作法』

今回のレンタル最後の1本。これを観たくて借りたと言っても過言ではありません。

いかにも地味で、イギリス映画らしいヒューマンドラマを期待して借りてみました。

おみおくりの作法

Still Life
監督
ウベルト・パゾリーニ
脚本
ウベルト・パゾリーニ
出演
ジョアンヌ・フロガット
カレン・ドルーリー
アンドリュー・バカン
音楽
公開
2013年12月12日 イタリア
上映時間
91分
製作国
イギリス・イタリア

おみおくりの作法

ロンドンの役所で身寄りの無い“孤独死”の人物の葬儀を担当している44歳独身男のジョン・メイ。本来であれば簡単な事務作業として済ませられる仕事だったが、彼はその生真面目で几帳面な性格から、故人の足跡を追い、故人のための葬儀を執り行っていた。しかし彼は人員整理として解雇されることとなり、最後の仕事として自分が住むアパートの向かいで孤独死した男性、ビリー・ストークの案件を担当する。

とても良いんだけど…。

8.5

主人公がエディ・マーサンというエラい地味なオッサンなんですが、そのビジュアルを裏切らない大変地味な映画ではありました。

たまたまかなり寝不足の日に観てしまったこともあり、序盤はかなりウトウト。ただ、終盤はもうホロホロと涙を流し続ける状況で、とても考えさせられる映画でしたね…。

本来であればこういう映画は大好きなので、9.0点付けたいところだったんですが、どーーーーーーーーしても終盤の展開が気に入らず、0.5点減点。

何が気に入らないのか、その感情を表す単語を出しただけでもネタバレになりかねないので、この辺の詳細は避けてレビューします。なのでいつも以上にぼんやりです。

主人公のジョン・メイは44歳独身一人住まいの男性。仕事も一人で淡々と、孤独死した人の葬儀を存在しない近親者の代わりとなって執り行う、というもの。

劇中でも語られますが、この手の仕事はもっと文字通りお役所仕事的に、事務作業と火葬でサクッと済ませられるのが普通なんでしょうが、このジョン・メイは大変生真面目で優しい人物なので、担当する案件はいつも故人の足跡を調査し、どんな音楽が好きだったのかを調べてはその音楽で葬式を行い、宗教の違いに合わせて“みおくり方”も変える、という故人にとっては大変ありがたい仕事をする人です。故人に対する敬意がある人物と言いましょうか。

最近は「クズは死んで良かった」ぐらいのことを平気でのたまうハゲ作家みたいな人間がたくさんいますが、そういう輩を除けば、この死生観は割と日本人と近いものがあると思います。とても思いやりのある仕事をする真面目な人物。

ですが、当然ながらそういう仕事は時間もかかり、時間もかかるということは経費もかかるわけで、あえなくリストラの対象となってしまいます。それでもジョン・メイは自分の仕事の意義を訴えることもせず、淡々とその事実を受け入れ、最後の案件として「ビリー・ストーク」の葬儀をきっちりやろう、と調査を開始します。

そのビリーという人は、粗暴で服役したりホームレスになったりとかなりアウトローな人で、かつての知り合いに評判を聞いてもあまりいい内容が聞けません。それでも少しずつ、情報を辿って行くことで徐々にその人となりが見えてきて…というお話。

結論から言ってしまえば、エンディングの光景でジョン・メイの仕事の意味がよくわかります。ラストシーンはとても素晴らしくて涙も頬を伝ったわけですが、ただやっぱり…そこに至った過程が好きになれなかった。でも、どう好きになれないのかを書くとネタバレになるので、これ以上は書けません。無念。

で、これ以上はもう書くことがないという…。

一つ言えることは、最初にも書きましたが本当に地味です。多分、それなりに映画を観てきた人じゃないと眠くて仕方がないと思います。劇的な展開があるわけでもなく、淡々と、粛々と進むストーリー。

ただ、その淡々とした展開の中でも、少しずつ手がかりを伝って「ビリー・ストーク」を弔おうとする様はやはり胸を打つものがあり、感情を表さずものすごくつまらない地味な人間に見えるジョン・メイも応援したくなることは間違いないでしょう。

彼も最後の仕事を通して次第に人間らしさを垣間見せるようになり、徐々に自然な笑顔も見せてくるだけに余計に彼に惹かれていくんですが…。

あとは観てください。多分、損をしたとは思わないと思います。ものすごく良い映画でした。ただ、間違いなく展開には賛否両論あると思います。僕はそこの部分がダメでした。

本当は「ダメ」以外の言い方をしたいんですが、そうするとアレなのでダメです。うーん、悔しい。

でもその展開含めて、劇中でも語られる「葬式は誰のためのものか」というテーマにつながる、すごく深い内容だとも思うし…。難しいところです。

いやー、でも良い映画だったな…。さすがイギリス映画、と言ったところ。

ネタバレの作法

基本的に主人公が死んじゃうのは逃げ…だとは思うんですが、この映画はそこがテーマなだけに逃げているわけでもないし、話の内容的に死んでもらわないといけないようなお話なだけにそこを否定するのは物語自体の否定になっちゃうのでダメなんですよね。

ただ、死に方と言うか死なせ方というかその見せ方というか…もうちょっとなんとかならなかったのかなぁとモヤモヤ。

でもダラダラ病気とかで「死ぬかも」みたいな見せ方をしちゃうと先が読めちゃって面白くなくなるし、急転直下でやるしか無かったのも事実でしょう。となると不満はやっぱりもうちょいうまく撮ってよ、ぐらいなのかなぁ。今改めて振り返っております。

普通に生きて幸せになって、って話でも良かったとは思うんですが、そうするとこの映画のオンリーワンなところも無くなっちゃうのでやっぱりジョン・メイは死ぬしか無かったんですよね。

切ない。

このシーンがイイ!

ラストを除けば、立ちションするところは大好きですね。しっかり見せない感じもすごくいい。この映画らしい演出。

ココが○

なんというか…テーマのチョイスと真面目な作り方はトップクラスだと思います。こういう映画は良くも悪くもアメリカでは出てこない気がする。それと極めて地味な主人公というのもすごく良い。

ココが×

賛否両論ある(と思われる)展開。

それと、その重要なシーン自体がかなりチープなのが残念。もうちょっとやりようがあったのでは…。あとは極めて地味なので、人は選びます。

MVA

まあ、ほぼ一人芝居に近いし、この人しかいないでしょう。

エディ・マーサン(ジョン・メイ役)

他ではシャーロック・ホームズシリーズで観た記憶がありますが、これだけしっかりこの人オンリー、っていうのは初めて。

すごく地味ながらすごく繊細な演技で、とても良かったです。笑うとちょっとかわいく見える感じもバッチリ役にハマってました。この人のビジュアルと演技が無いと、なかなかこのジョン・メイという役も生きなかった気がします。

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