映画レビュー0825 『サブマリン』

悩みに悩んだチョイスその2。

正直に言って前回大外ししたので今回は頼むぞ、と…。

サブマリン

Submarine
監督
脚本
リチャード・アイオアディ
音楽
アレックス・ターナー
公開
2011年3月18日 イギリス
上映時間
97分
製作国
イギリス・アメリカ
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

サブマリン

ちょっと理屈っぽくて変わった高校生、オリバー。彼は同級生のジョーダナと付き合うために作戦を練る。一方母親のジルは隣に越してきた元カレのグラハムとちょくちょく出かけるようになってきて…。

腹が立つほどカッコつけてて、腹が立つほど決まってる。

8.0
通過儀礼の妄想思春期を過ぎ、成長する男の子
  • 恋愛・妄想その他思春期あるあると両親の問題をシニカルに見る男の子の青春物語
  • イギリス映画らしいオシャレな雰囲気でミニシアター感強め
  • テンポ良く、会話で笑わせるスキルが高い
  • 両親のキャスティングが最高

まず最初に、Netflixの作品説明には「悩める思春期の少年が抱える、2つの大きな問題。まずは、両親の結婚生活の大ピンチを何とかすること。そして何より重要なのが、誕生日までに童貞を捨てること。」ってあったんですが、これ劇中でそういう話まったく上がってこないんですよね。童貞捨てるとか。なのでネトフリの作品紹介も当てになんねーな、と言うことでちょこっと説明。

主人公のオリバーは普通の高校生。ちょっとひねくれた雰囲気というか…こじらせちゃった文学男子、って感じでしょうか。まあこういう話としてはよくあるタイプの主人公だと思います。

彼は思春期男子らしく、漠然と「彼女欲しいなぁ」と思っているんですが、そこで同級生のジョーダナに狙いを定めます。オリバー本人はいじめが嫌いなもののジョーダナはいつも楽しくいじめに加わっている…ということで彼もいじめに参加、ジョーダナとの距離を詰めることに成功。この経緯が結構残酷だなぁと思いますが、でも思春期の学生ってこんなもんだよなという気もする。そういう意味では生々しい。

そんなオリバーにやや過保護っぽく接する母親は、お隣に引っ越してきた(最初からだったかも)元カレのグラハムと一緒に出かけたりして急速に距離を縮めつつあるのに父親はあまり興味もなさげ。

このままじゃ離婚のピンチだ…! と焦るオリバーは、対ジョーダナの手を緩めて家族の再生のために策を練るものの…! というようなお話です。

話としてはよくある青春モノで、一人の少年が彼女を作ろうと奮闘し、大人になっていくお話です。そこに両親のピンチも加えた話をテンポよくややコメ路線でお見せしますよ、と。なので特に内容についてどうこう語るような部分はあんまり無いんですよね。ネタバレ回避的にも。

ただそういうよくある話だからこそ、なのか…監督の個性がかなり色濃く出ていて、その見せ方のクセによって好き嫌いがはっきり分かれるタイプの映画でしょう。

この監督は「嗤う分身」の監督でもあるんですが、今作が長編初監督作品ということもあってか、かなり「俺はこういう映画を撮りたいんだ!」みたいな嗜好が伺える、監督のセンスが前面に出ている映画だと思います。

ちょっと変わった主人公にちょっと変わった恋愛相手、両親もちょっと変わってるし母親の元カレは一番変わってるし。っていうか怪しいし。出てくる人、ほぼ全員変な人。

そのちょっとひねくれた世界にイギリス映画っぽい、生きづらい人間に寄り添いながらちょっと小馬鹿にしたようなイメージがありました。そこが良いんだけどね。

タイプとしては…あそこまで個性的ではないものの、ちょっとウェス・アンダーソンの映画っぽい雰囲気もあって、作家性が強い映画なのは間違いないと思います。僕はこういうのはすごく好きなので面白かったんですが、僕がダニー・ボイルのような“カッコつけ”が嫌いなように、この監督の“カッコつけ”が嫌いな人も間違いなくいるでしょう。ちょっとシニカルで斜に構えた感じ。それはそのまま主人公の性格にも当てはまるので、演出が気に入らないと主人公も気に入らない、倍々ゲームで嫌いになるかもしれません。

逆に言えば、「ちょっと演出が変わった映画が観たい」「イギリス映画っぽい皮肉さが味わいたい」と言うようなときには結構良いチョイスになるんじゃないかなと思います。

あんまりメジャーな作品ではないと思いますが、その割にかなりセンスに自信を感じる掘り出し物感もあるし、いかにもミニシアターで流してくれそうな良い意味でのマイナー感は映画好きにはウケそう。

気になる人はぜひ観てみてください。地味な雰囲気と地味なタイトルに反する、かなり意欲的な青春映画だと思います。

ネタバレン

大したネタバレでもないんですが、一つだけどうしても触れておきたかったので書きますけども。

「手でしてあげた」って話はもう爆笑もんでしたね。あんなバカバカしい話を大真面目に報告してて最高。

ただ考えてみると「浮気はしたくない、でもこの場を丸く収めたい」折衷案として手でしてあげるっていうのはなかなか巧妙な作戦のような気がしないでもない。自分で書いてて笑っちゃうけど。でもなんかそのシュールさと良い折り合いの付け方にものすごくセンスを感じました。

唸っちゃったもんね。笑ったけど。「なるほど〜〜〜〜wwww」って。深い。でもきっとオリバーにはまだわからない深さ。そこがまた深い。

このシーンがイイ!

「海にベッド」のシーンかな。あそこが一番鼻につくようなうまさを感じましたね。PVのような綺麗さ。

ココが○

上映時間も短めですが、それも納得のテンポの良さと、そのテンポを活かした会話劇の巧みさはすごいと思います。間とシュールな会話で笑わせるセンスの良さ。

それ故面白さがわかるには多少笑いのハードルが高いような気もしますが、でも映画好きじゃないと観ないポジションの映画だろうし、映画好きならある程度こういう笑いは通じそうなのであんまり心配はいらなそう。

ココが×

逆に言えば、面白さの大部分をシュールさとテンポに依存しているので、その辺がピンと来ない人にはさっぱりだと思います。ある意味ではかなり尖った映画と言えるかもしれません。

MVA

主人公の両親がノア・テイラーとサリー・ホーキンスっていう時点でもうたまらないでしょ。実際。映画好きとしては。渋いけど素晴らしい組み合わせだと思いますね。

少し太めで垢抜けてないズーイー・デシャネルっぽいヒロインのヤスミン・ペイジもひねくれた感じがぴったりでお見事でした。主人公も同じく。でも選ぶならやっぱりこの人でしょうか。

サリー・ホーキンス(ジル・テイト役)

夫役のノア・テイラーもそうですが、いつも全然違う雰囲気なんですよね。本当に良い女優さんだと思います。

この映画ではある意味で一番どうでもいいポジションで振り回してくれるんですが、本人は至って真面目だしちゃんと母親しようとしてるけど痛い、みたいな絶妙さがお見事。オリバーを車で送るシーンとか最高だったな〜。

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