映画レビュー1054 『シュガー・マウンテン』

またも月末でネトフリ配信終了が迫ってきておりまして、いくつかある中からあんまり評判も良くないけどなんとなく気になったこちらの映画をチョイス。

シュガー・マウンテン

Sugar Mountain
監督

リチャード・グレイ

脚本

Abe Pogos
キャサリン・ヒル

出演

シェーン・コフィ
ドリュー・ロイ
ヘイリー・ウェブ
ジェイソン・モモア
ケイリー・エルウィス
アンナ・ハッチソン

音楽

Alies Sluiter

公開

2016年12月9日 アメリカ

上映時間

106分

製作国

アメリカ

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

シュガー・マウンテン

主要人物、全員ゲス。

7.0
“経験談”で一儲けするべく、偽装遭難を企む3人の男女だが…
  • “127時間”的なエピソードを作って一発逆転を企む兄弟&兄カノ
  • しかし当然ながらいろいろあって、事態は思わぬ方向に…
  • 主要人物全員ゲスいのでむしろ清々しい
  • 作りの良し悪し以上に人間の汚さが凝縮されていて○

あらすじ

あまりメジャーな映画ではなく(Wikipediaはおろかyahoo映画にすら情報がない)、フィルマークスでも微妙な評価なので観なくても良いかなと思ったんですが、なんとなく引っかかって観たところ「言うほど悪くないじゃん?」という感じ。むしろ意外と楽しめましたよ。

今は亡き母親から譲り受けた船を使って商売している兄のマイルズ(ドリュー・ロイ)と弟のリアム(シェイン・コフィー)ですが、借金がかさんだことでついに“命綱”である船も差し押さえられてしまい、文字通り首が回らない状態に。

2人とともに暮らす、兄弟の幼馴染で兄の彼女でもあるローレン(ヘイリー・ウェブ)と3人で協議した結果、「生死を彷徨うような体験を売れば金になるらしいから遭難したフリして生還した体験を売ろうぜ」と画策します。

リアムは山に詳しく遭難しそうもない(怪しまれる)ということで、“遭難役”は兄のマイルズに決定。前日に仕込みで兄弟喧嘩をし、あえてリアムが怪しまれるような状況を作りつつ、マイルズは計画通りに山へ向かいます。

リアムとローレンはマイルズが入山した方面とは反対方向で「遭難した」と証言し、町の人間総出で捜索しますが当然のように見つからず、狙い通りにニュースでも取り上げられ、大きな話題になっていきます。

しかしやがて事態は3人が考えていた状況よりもさらに深刻になってしまい、少しずつ歯車が狂っていくことで計画にもほころびが出てきますが…。あとはご覧くださいよよよ。

シンプル・プランっぽい

本人たちもまさに言及しているんですが、いわゆる「127時間」のようなエピソードを“作れ”ば、その体験談だけで大儲けできるはず…という安易な貧困脱出作戦でございます。定期的にこういう輩、現れそう。(現実でも映画でも)

しかし当然そうそううまくいくはずもなく、いろいろと計算違いの状況が起こって人間不信&今までの関係性にもいろいろと(タイミング悪く発覚する事情もあって)変化が訪れ、まあ大変ですねと。ある種因果応報的な側面もありつつ、そもそも「欲に目がくらんでニセ体験を売ろうとした時点でそりゃ堕ちていくよね」というお話でもあり、ゲスだらけの映画でありつつ話の結論としては真っ当というか、「普通に生きていくのが一番ですね」と再確認する一般人(おれ)、という感じでしょうか。

あらすじからもわかる通り、また寒そうな山というシチュエーション的なことからも感じる部分ですが、最初に思ったのは「シンプル・プラン」っぽいな、ということ。

果たしてさしてメジャーでもないこの映画に対し、同様にメジャーでもない映画に「似てる」と言ったところで誰に伝わるんだろうと疑問を感じる向きもございますが、とは言え世間的な評判が良くない割に「そんなに悪くないな」と思う辺りの感覚もすごく似ていてですね。きっと僕はこういう話が嫌いじゃないんでしょう。もっとも評価については相対的なものなので、これがものすごく評判の良い映画だったら「そこまで良くないでしょ」って話なんですが。

上に書いている通り、主要人物は軒並みゲスで全員問題がある人たちばかりなんですが、とは言え人間誰しも完璧ではないし、きっと極限状態だったりお金が絡んだりしてきたりしたときに思わず表出してしまう部分がゲスだった、というのは珍しい話でもないんだろうと思うんですよ。よほど普段から「こうはならない」と自分を律していない限りは。

例えばジェイソン・モモア演じるジョー(ネトフリのご紹介ページをはじめとした数少ない情報源を探るとさも主人公かのように出てきますが脇役です)なんかは、もう根っからのゲス野郎かつバイオレンス野郎なので「極限状態になって出てきた個性」とはまた違うと思いますが、主人公の…特に弟リアムと兄カノローレン辺りは「普段は普通の常識人っぽいのに一皮めくればカスだった」みたいな感じが非常にリアルで、むしろ入り口からカスのジョーなんかよりよっぽどたちが悪いしタイプ的に数も多いんじゃないかと思うわけです。そこに「言うほど悪くない」ポイントがあるのかな、と。

特に一番の主人公と言えるリアムに関しては、ひたすら評判が悪い兄貴と違って町の人達からも非常に愛され、買われている人間なんですよね。でもそこから滑り落ちるように評判を落としていってしまう、と。

彼自身は他のメンバーほど表立って「うわこいつカスだな」って感じはあまりなかったんですが、ただ受動的な性格であるが故に滑落を止められる場面で止めることもできず、ただただ堕ちていくのを許容する形になってしまうのが、いかにも「普通の“善人”」に見えてなかなかいいキャラクターだったなと思います。ただの「善人」ではなく、「カッコ付きの善人」ってやつですね。

ただのDQNが集まって金作ろうとしてダメになった、ではなくいかにもその辺にいそうかつ評価されている人物が実は大事なところでカスでした、というのはよくありそうだしリアルだしでイイなと。

平時にある程度評価されるのは難しいことではないですが、やっぱりトラブルが起きたときの立ち居振る舞いにその人の真価が出るんだよなーと再認識させてもらったような感じでしょうか。

あくまでも“それなり”

この手の映画は何が起きるだの誰がどうだの書いちゃったらおしまいなので、これ以上いろいろ書くことは避けますが…まあ暇つぶしに観る分には本当に悪くない映画だと思いますよ。そんなに長くもないし。

この手の「堕ちていく話」は反面教師として有用な面もあるので、例えば自分がリアムだったらどうしてたかな、とかいろいろ考えてみるのも一興でしょう。

ただあくまで「悪くないな」なので、そこまで期待されちゃっても困るよとは書いておきたいと思います。同様に評価が低い「シンプル・プラン」と比べれば、僕はあっちの方が好きでした。悲しさがあって。

こっちは悲しさよりも欲が出ちゃってるので、そっちの方が良い人もいるでしょうが、僕としては少々深みが足りないかなという気はしました。あくまで“それなり”ですよ、と念押ししておきます。

シュガー・ネタバレン

まー終盤が怒涛の展開でしたね。というか怒涛の展開にするためにいろいろごちゃごちゃ詰め込んで「どうだ」って感じがしちゃって少々雑な気はしましたが。

結局3人が救われちゃう辺りにモヤモヤ感があり、それ故余計に評価を下げているのかなという気はします。ただ「救われる」のはあくまで世間的な意味だけの話であって、3人それぞれの「それぞれに対する思い」というのはなかなかキツいものが残っただろうとは思うんですが。というかあのまま兄弟はローレンと付き合えるのかが一番疑問。その段階まで行かずに話が終わったのでアレですけどね。

結局「欲をかいて失敗する」のは観客の期待通りで良かったとしても、悪いやつが裁きを受けない終わりなのでそこに対して良しと出来ず、評価出来ないという気持ちはわかります。ローレンのお父さんである警察署長だって浮気も隠し子もそりゃ悪いけどさ、死ぬほど悪いってわけじゃないじゃない。っていうか一番悪いのは娘じゃない、っていう。

ただ彼は「一番悪いのは娘だ」って観客に思わせるために(物語上)死なされたようなものなので、そう言う意味では悪くない展開と言えるんでしょう。

結局最終的にマイルズは体験談を売る決意をしたし、おまけのエピソード(ジョーと署長の死)までついてきちゃったもんだから儲かっちゃってしょうがなさそうですが、果たしてそのお金を3人で山分けして万々歳、となるのかどうか…。

ただ“こんな連中だから”こそ、お金が入ればオールオッケー、って感じに落ち着いちゃいそうな気もする。そこがまた腹が立つんだけど。

なんならローレン、リアムが腹違いの弟(?)とわかりつつ二股しそうで怖い。

そうそう、あとマイルズの改心がいかにもな感じで雑かなと。結局死体隠蔽を画策しちゃうし。そんなんじゃお母さんに顔向けできんやん。

このシーンがイイ!

ラストシーンはなんだかんだ良かったと思いますよ。観客に対する問いかけにもなっていて。

ココが○

ゲスなやつばっかりですが、生まれながらのゲスだったり爪を隠したゲスだったり、多種多様なゲスが楽しめる辺りでしょうか。それだけゲスへの道はたくさんあるということでもあるし、自分がゲスに堕ちていかないように気をつけたいところ。

ココが×

最終的な結末については意見が分かれそうな気はします。どうしてもモヤモヤする部分はあったかな。

それと終盤を怒涛の展開にするために最後の方でいろいろ詰め込んで無理しちゃってる感じはありました。スピード感は出てたけど、もう少し丁寧な展開でも良かったのかも。

MVA

ジェイソン・モモアを除けばメジャーな人はあまりいませんでしたが、まあでも総じて役者さんは悪くなかったと思います。

そんな中…まあ役柄的にもこの人かなと。

ヘイリー・ウェブ(ローレン・ヘクスリー役)

兄・マイルズの彼女。

なぜこの人なのかは観れば納得、でしょう。きっと。

絶妙にかわいすぎず、絶妙にかわいくなさすぎない外見もかなりポイント高いです。かわいすぎたら話がブレるし、かわいくなさすぎても説得力がなくなるしで。本当に外見的に絶妙なキャスティング。

残念ながらおっぱいは確認できませんでしたが、体を張った演技もあってよかったかなと。

ちなみにジェイソン・モモアですが、ぶっちゃけヒーローなんかよりよほど似合ってるなと思うぐらいにカス野郎がお上手でした。マジでこんなやつじゃないのかって震えるぐらいにバイオレンスなカス野郎っぷり。

彼にしても良かったんですが、まあせっかくなのでこの映画ならではの人選ってところでしょうかね。ええ。

役者的には警察署長のお父さんが一番無難というか、ちゃんとしてたような気はしました。こなれた感じ。さすがベテランさん、ってところでしょうか。

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