映画レビュー0947 『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』
我ながら意外な一本。
まったく観に行くつもりはなかった(というかやっていることすら話題になるまで知らなかった)んですが、例によってSNSで結構な話題になっていまして、「逆ジョーカー」とか「今年一番」とか散々煽りコメントを目にしたので、流されやすい勢として観に行ってきました。正直直前まで行っていいものかかなり悩んだんですが、おっさん一人です。
ちなみにもちろん英語タイトルなんて無いので適当に入れてます。
(その後判明したので修正しましたが前半はまさかの正解でした)
映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ

「子供と一緒に」観るには最高の一本。
- 絵本の世界に飛び込んで、ひとりぼっちのひよこのおうちを探すお話
- 日本の童話とナレーションベースで小さな子も理解しやすい
- 上映時間も短めでこれまた小さな子に優しい
- おっさんもひっそり涙
あらすじ
行く前のハードルが上がりすぎていたので、正直なところ「まあ…まあこんなもんだよね」という感じで(良い映画なのは間違いないものの)期待以上の驚きはなかったというのが率直な感想なんですが、ただこれはあくまで子供はおろか奥さんも彼女もいないひねくれ街道まっしぐらのおっさんが「映画として」観たときの感想であって、おそらくこの映画の最大のターゲットであろう「親子で一緒に観る」人たちにとっては間違いなく最良の一本だと思います。
というか多分制作側としてもここまでネットで“煽り文句”が流通しすぎたのは予想外だろうしありがた迷惑な面もあるんじゃないかなと思いますね。さすがにSNS上での評判はちょっと盛りすぎではないかなと。
ということでまずはあらすじ。
いつもすみっコを好む“すみっコ”&“みにっコ”たちが、ご飯食べに行きますかと行きつけのカフェに行くとウェイター(?)のおばけがいません。
直後に地下の倉庫らしきところから何やら大きな音がして、すみっコたちが様子をうかがいに行くとそこには一冊の絵本が。おばけはこれに吸い込まれたんですが、すみっコたちは気付いていません。
程なくしてすみっコたちも同じように絵本に吸い込まれてしまい、やってきたのが桃太郎の世界。
そこで自分の家がどこにあるのかわからないという迷子のひよこと出会ったすみっコたちは、「おうちを探してあげよう!」ってことでひよこを連れて絵本の中を旅することに…。
すみっコ初心者でも安心
すみっコたちが吸い込まれた絵本には、桃太郎の他にマッチ売りの少女やアラビアン・ナイトと言ったおなじみの物語の世界が入っていて、それらのキャラクターにすみっコたちがあてがわれててんやわんやしつつひよこのおうちを探してあげましょうという心温まるストーリーですよ奥さん。
話としてはこの「ひよこが何者なのか」が重要なわけですが、それはまあ観ていただくとして。その立ち位置と扱い方、それによって導き出される教訓…と言うと大げさですが、いわゆる道徳的なストーリーとしてとても良くできたお話だと思います。
「おっさんこそ観るべき」とかいろいろ事前に聞いてはいたものの、とは言え最大のターゲットは小さい子供たちであろうことはわかっていたので、極力素直に優しい気持ちで観よう…と思って観ていたんですが、もう改めてそう思う必要もないぐらいに全体が優しい世界に満たされていて、その上すみっコたちのかわいさがキャパオーバーしているというハンパない癒やしパワーを持った映画でした。
とりあえずもう今後すみっコグッズとか欲しくなっちゃうよね。絶対。ちなみに僕はざっそう推しです。
そうそう、書き忘れましたがもちろん僕はすみっコぐらし自体まったく知らない状態で観に行ったんですが、オープニングでちょっとしたキャラクター紹介もあるし、この辺はまったく問題がないのも嬉しいポイントです。広くすみっコたちのかわいさを知ってもらいたい、というような愛情を感じる映画でもあったので、「すみっコぐらし初めて」の人たちも安心して観ましょう。
ナレーションが優しく丁寧
映画としてはですね、主演と言えるすみっコたちはたまーにセリフが文字で出てくるぐらいでまったく声を発しないので、この映画自体が絵本を読んでいるかのような印象がありました。
この辺も優しいというか、受け手(観客)の側でイメージにブレがないようにすみっコたちを大事に扱おうとしている感じが伺えます。やっぱり喋っちゃうと誰かしら「ちょっと違う…」って思っちゃいそうですからね。そういう違和感を排除して、世界観を大事に守ろうとしている印象がありました。
となると話を進めるのは絵そのものとナレーションなんですが、このナレーションがまた優しく丁寧で、抑揚もあってとても良い。全然気付かなかったけどイノッチでした。やるなイノッチ…!
また「絵本朗読風」のナレーションとして本上まなみが声をあてていて、これもまたとてもピッタリだったし気付かなかったし、っていう。
イノッチの方はすみっコたちと近いポジションで“保護者のような”ナレーションなんですが、本上まなみの方はすみっコたちの心情と少し距離を置いた、(桃太郎とかアラビアン・ナイトとかの)元となる“物語側”のナレーションといった感じ。なのでちょっと深刻さにギャップが出たりして、ある種ボケのような役割も担っているのがお上手。
声が入るのはこの二人だけなわけですが、とは言え当然ながらずっと喋り倒しているわけでもないし、ただすみっコたちの動きを見てるだけの時間も多い。でもしっかり観られるのはやはりひとえに彼らのかわいさ故、でしょうか。かわいさは正義。
レイトショーでひっそりメソメソ帰るおっさんの姿が目撃される
事前に「ティッシュじゃ足りないタオルを用意しろ」とまで聞いていたのでかなり覚悟しながら観たんですが、結果は少量の涙で決着。結局泣いたよ、っていうね。
かなりハードルが上がっていたのでもっとすごいのかと身構えていたんですが、結果的にはそこまででもないな、となったもののエンディングはとても良いものだと思います。
というか子供と一緒に観るにはこの辺りが絶妙な落とし所というか、これ以上手を入れちゃうとそれはもう完全に大人向けのお話になっちゃうんじゃないかなぁと。だからこそ今のネット上の(感動したファンたちによる)“煽り文句”はありがた迷惑なんじゃないかなと思うんですが。期待させすぎちゃうという意味で。
ただ「子供向けだから子供は楽しめるけど大人はイマイチ」みたいなのって今の時代厳しいと思うので、両方に受け入れられるものを作ろうとした結果出来上がったのがこの映画、というのはすごく納得の行く内容だしレベルの高さがあったのも事実でしょう。文句なしに良い映画だと思います。
僕は上映中、もちろん全員がそうではないものの、小さい頃にこういう話を見て「素直さと純粋さから来る優しさ」の大切さを知っているはずなのに、どうして世の中は優しくできない人が多く、腐っていくのか…ということを漠然と、悲しい気持ちになりながら観ていました。
この映画を観て、すみっコたちのように優しい人に育つ子供が少しでも増えるのであれば、この映画の価値は計り知れないものだと思います。青臭いかもしれませんが、純粋にそう感じた夜でした。
このシーンがイイ!
やっぱりエンディングかなぁ。とても良かったですよ。原田知世の主題歌がまたね…優しい声でね…。
ココが○
かわいさに目が行きがちですが、結構笑えるシーンも多くてその辺りも良かったですね。
さりげなくタイタニックネタとかぶち込んできたりして、これ絶対子供わかんないだろっていう。
ココが×
あくまで「子供も大人も楽しめる」物語であって「大人向け」ではないので、深い感動を求めるものではないと思います。そこは間違えないようにしたいですね。僕はちょっとそこを期待しすぎた面がありました。
MVA
二択ですが…まあこの人かな。
井ノ原快彦(ナレーション)
いやーイノッチこんなナレーションうまいのか〜と驚きました。優しくときにコミカルに語りかける力量、大したものです。