映画レビュー1154 『河童のクゥと夏休み』

この映画はJAIHOでも配信していたので気になってたんですが、めでたくウォッチパーティで観る機会があったのでありがたくみんなで観ました。

河童のクゥと夏休み

Summer Days with Coo
監督

原恵一

脚本

原恵一

原作

木暮正夫

出演

冨澤風斗
横川貴大
田中直樹
西田尚美
松元環季
安原義人
植松夏希
なぎら健壱
ゴリ

音楽

若草恵

公開

2007年7月28日 日本

上映時間

138分(劇場公開版)
141分(特別版)

製作国

日本

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ ウォッチパーティ(iMac)

河童のクゥと夏休み

人間の醜さが嫌と言うほど味わえる大人向けアニメ。

8.0
時を経て現代に蘇った河童の子どもが世間を騒がせる
  • つらい過去を背負った河童の子どもが現代に蘇る
  • ペット的に家族として迎える一家はいい人たちなものの、世間にバレてからは大変なことに
  • 野次馬根性たくましい一般人とマスコミの無責任さがリアルで胸クソ
  • 背景作画の良さが際立つノスタルジックなビジュアルも◎

あらすじ

最初に見た評判としては「大人も泣けるアニメ」みたいな内容だったんですが、泣けると言うか考えさせられる内容で「大人も」と言うより完全大人向けの社会に対する厳しい目線を感じる物語でした。でもそこが良かったですね。

江戸時代、池を残して欲しいと侍に嘆願したところ斬り殺されてしまった父の姿を目の当たりにした河童の子どもは、その直後に起きた地震によって地割れに飲み込まれ、化石化。現代(公開当時の2007年)になって小学生・康一に偶然発見されます。

家に持ち帰った康一が何の石だかわからないまま水洗いしたところ河童は復活。鳴き声から「クゥ」と名付けられ、康一と妹、そして両親の4人で暮らす上原家に居候することに。

あからさまにヤキモチを焼いている康一の妹・瞳には目の敵にされつつも、義理堅く礼儀正しいクゥは一家に馴染んでいきます。

もしかしたら他にも河童が生き残っている場所があるかもしれないと考えた康一は、夏休みに河童伝説で有名な遠野にクゥとともに旅行に行ったりしながら友情を育みますが、やがて「あの家には河童がいるらしい」という噂が広まって…あとはご覧くださいませ。

風刺を感じる社会派な内容

どうしても内容的に核心の部分は後半に入ってからになるため、上記あらすじ自体もその辺まで含まれる結構先の方までの話にはなってくるんですが、そこについて触れなきゃ話になんねーぜ、ということで書いちゃいますが…まあ「河童がいるぞ」となってからの世間の無責任さがリアルかつ胸クソ悪いしでいろいろと考えさせられる映画ではあります。

一緒に観ていた他のメンバーからは「(上原家以外に)1人ぐらい守ろうとする人間いないの!?」的なご意見が結構出ていたんですが、この「騒動に乗っかるばかりで相手(クゥを始めとした上原家)に対する気遣いを持てる人間がいない」描写が本当に生々しくて、きっと今「河童が発見された」となったら同じような“狂想曲”が巻き起こるんだろうなと暗い気持ちになりながら観ていました。

観客は上原家の目線で見ているので憤慨できるんですが、そうではなく距離感が遠い一般人として「河童がいるぞ」の状況に陥ったとき、おそらく興味本位“でしか”動かない人ってほとんどだと思うんですよね。

ましてや河童なんて妖怪なだけに、子どもだろうが人間よりもぞんざいに扱うであろうことは想像に難くなく、この映画の一般大衆のような「配慮の無さ」のリアルさはそのまま現代社会の嫌な一面の写し鏡になっている気がして、強く風刺を感じさせる映画だと思います。

それ以外にも、学校でのいじめであったり環境問題であったり、現代社会の問題を「河童」という異質の存在を通して見せるかなり社会的な側面を持った映画なので、これはもう完全に大人向けだよねと。

きっと子どもが観れば観たで子どもなりに感じるものがあるだろうし、それが教育的に良いものになるとも思いますが、ただ最も感じ取るべき内容は大人ではないと受け取れないものだろうと思うので、やっぱりこれは大人に向けたアニメなんだろうと思います。割とハードな社会批判の映画と言うか。

特にとある存在の役割(一応ネタバレ的に伏せます)がかなりしんどいものになっていて、まあ観ていてつらかったですよ…。置かれた状況も、周りの無責任さも。

ただ同時にそこを描けるのがアニメの強さだなとも思いました。詳細を書けないのでモヤッとしちゃいますが、きっとあれは実写だとキツすぎて描けない内容なので、そこをきっちり描いてより人間の醜さを際立たせる内容にできるのはアニメならではだし、そこをわかってやっているのが“強い”映画だなと思います。

作画が良い

もう一つ書いておきたいのが、作画の良さ。

絵の作風として、鑑賞前はやや古さを感じさせる気がした(詳しくないので気がしたレベル)んですが、実際に観ているとその古い感じがすごくノスタルジックなイメージを上手く引き出している気がして、これはこれで正解なんだなと納得。

「河童」自体古いテーマでもあるし、舞台自体はそこまで古くない(と言ってももう15年近く前になるんですが)割に妙に懐かしさを感じさせる作風が映画の内容にすごく合っていたと思います。

特に背景の作画がもう本当に素晴らしくて、そこに行ったことがなくても懐かしさを感じさせる、「ここはこういう場所だ」と説得力がある見事な背景ばかりで、もうずーっと「背景が良い」しか言ってませんでしたね。僕は。チャットで。

約15年経っても変わらない…どころか悪くなっている気しかしない社会の現実にこれまたいろいろと思うところがあり、また暗い気持ちにもさせられはしましたが、それだけよく出来ている映画でもあると言えます。

手放しに「面白いから観なよ!」とオススメするような映画ではありませんが、アニメだからこその深さを持った良作だと思います。単なる「河童と少年のひと夏の思い出」的な浅い話では無いので、興味があったらぜひ。

このシーンがイイ!

とにかく風景が良いだけに、遠野のシーンはどこも「行った気持ち」になれる良いシーンでした。特に宿なんて絶対良い宿だな、行ってみたいと思える雰囲気が感じられてとても良かった。

ココが○

やっぱり社会風刺は自分の立ち居振る舞いを見つめ直すきっかけにもなるので、間違いなく観て良かったなと思える点。ただの娯楽ではないです。

ココが×

少し重いのは否めないので、間違いなく人を選ぶ面はあります。特に上にも書いた、ある存在の扱いについてはかなりキツいものがありました。

MVA

監督の意向でプロっぽい声優よりも子供らしさだったり大げさでない演技を重視したそうで、タレントが多めの起用になっています。

その中でも誰が良いかと考えると…やっぱりこの人になるかなー。

安原義人(オッサン役)

オッサン。上原家の飼い犬です。

「犬喋るんだ!?」と思わせた初トークシーンからずっと犬とは思えない渋さをほとばしらせるにくいやつ。

このオッサンがね…めちゃくちゃいいんですよ…。観ればわかります。余計なことは言いません。

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