映画レビュー0895 『サバイバルファミリー』
ついこの前公開になった映画のような気がしますが、もう2年前なんですね…。
ちょっと気になっていたのでネトフリ終了が来たこともあって鑑賞。久しぶりの邦画ですね。
サバイバルファミリー

案外笑えないかもしれない、割と真面目にピンチな家族。
- 「電力が来ない」ではなく電池含めた「電源が必要なもの」すべてが使用不可になった社会
- 当然公共交通も自動車も動かないので自転車可徒歩での移動を余儀なくされる
- 食料も飲物もろくに手に入らない社会で試されるサバイバル能力
- コメディながらそれなりに社会的メッセージ強め
あらすじ
矢口監督のコメディってことでもちろん笑えるシーンも多いんですが、ただこの映画が描こうとしているのは「もしこうなってしまったら」のシミュレーション的な側面が強いので、笑ってれば良いって話でもないんだぞ感が結構強く感じられる映画でした。
実際僕が一番ゲラゲラ笑ったところは笑うには不謹慎なシーンでもあり、今でも果たして笑って良かったのかは謎のままです。いやでもあれ絶対笑わせに来てるだろ。
舞台は現代日本、普通の一般家庭。
この映画の主人公であり、一家の大黒柱でもある小日向文世演じるお父さんは部長だったかな? それなりに偉いサラリーマンで、家族に対する態度からして“いかにも”なお父さん像と言ったところ。
深津絵里演じる奥さんは専業主婦で、のほほんとしたかわいらしい奥さんですが、その中にも主婦らしい強さを持ったこれまたいかにも“母強し”的主婦。
長男は大学生で片想い中の青春真っ只中で家族に興味なし、長女はギャル系のJKで親とは折り合いが悪い…とこれもいかにもな子ども像。
まあこう言っちゃなんですが、ステレオタイプなザ・日本人4人家族って感じですね。ただそれが悪いわけではなく、トラブルに巻き込まれるお話なのでモデルケース的に適任ファミリーということでしょう。途中で出てくる時任三郎×藤原紀香夫婦の一家が主人公だったら全然話が違ってきちゃうわけだし。
物語冒頭で早速「なんだかわからないけどどこもかしこも停電」というトラブルが発生します。当然ながら一般常識的に遅くても数時間…いや数日も待てば復旧するだろ…と高をくくってたところまったく復旧の気配がない。
その上、実際は「停電」ではなく「電気で動くもの」すべてが使用不可になる、という前代未聞の事態。
となるともうテレビもラジオも使えない、もちろん(描写は無かったですが)印刷だって出来ないはずなので新聞も動かない。文字通り「自分の目の届く範囲」以外の状況がまったくわからないわけです。
最初の数日は真面目に会社に通う人々が多い(僕だったら間違いなく初日から会社行きませんが)んですが、次第に「原因不明だしこのままここにいたら危ないのでは…」と危機感が募り始め、それぞれが移動を開始します。
中には山に行って自給自足を目指す人たちもいるんですが、「どうも大阪の方は大丈夫らしいぞ」という噂を聞きつけた人々が西へ向かおうという流れが本命。主人公一家もその流れに乗って西を目指すわけですが…あとはご覧ください。
コメディなので細かいところは気にしない方向で
物流も完全にストップしているのでまず物が買えない、となると食料も飲物も確保するのが難しいという状況で、最初500mlのペットボトルが1本1000円で売っているのを見て「ボッタクリじゃねーか!」と文句言ってたら先に行くほどどんどん高くなっていくという…この辺なかなかリアルで笑っちゃうけど笑えない、なかなか生々しい災害シミュレーションになっていました。
物語はところどころ数日飛んだり場合によっては1か月単位で飛んだりするんですが、その間よく凌げたねというある種のご都合主義的な展開はありつつも、その辺はコメディなんで大目に見てね感がお上手。
それこそ最初の設定的にも数日飛ぶ感じもちょっと似ている気がする「クワイエット・プレイス」みたいに大真面目なホラー辺りにしちゃったらもうドフザケンナ案件になりそうな気はしますが、程よく軽いコメディに仕立ててくれたおかげでまあ許してやるか、的な雰囲気。なので細かいところは気にしない方が良いんでしょう。
とは言えベースはシミュレーションなので、あまりにも常識外れな内容だったりはせず、割と真面目に「こうなったら日本はどうなる」を一つの家族中心に描いた映画、という感じでしょうか。
最低限のサバイバル知識を学んでおくべき…!
当然ながら水も食料も手に入らないという状況になってくると、求められるのはタイトル通り“サバイバル”能力なわけですよ。
それに長けた人たちが途中途中で出てきますが、やっぱり(ここまで極端な状況はないだろうと思いつつ)ある程度の知識として最低限は知っておくべきサバイバル技術ってあるよなぁとちょっと自分を顧みさせられる面はありました。
多分一生使うことって無いんだと思うんですけどね。ただ「使うことがなければ幸せ」な話で、万が一使う必要が出てきた時にそのスキルを持っているか否かで文字通り命を左右することを考えると、「水の確保」とか「火の熾し方」ぐらいは知っておかないと人としてダメなんじゃないか、ぐらいの危機感は覚えましたね。特にこの映画の主人公のように、家族を持つ身であればなおさら。
今のところ僕は持っていないので、その分すべて自己責任に完結するから楽と言えば楽なんですがなぜか流れる涙があるよ、と。
「火ぐらい簡単に熾せる」と豪語していたお父さん、こりゃフリだなと笑いつつやっぱり笑えない。自分だって多分こうなると思うし。
もう一度「マスターキートン」を全巻読み直すべきだなと言う気がしましたね。アレそういう話あったじゃない。確か。
あとは我々のバイブルゴルゴ13ね。こっちはあんまり出てこないけど一部あったし。水がなくても草の根っこかじれば補給できるよとか。
強烈なメッセージをどう受け取るのか
そんな自らの知識や日々の暮らしを顧みつつ、いかに今の社会インフラがある意味で脆いのか、というのを嫌というほど突きつけてくるなかなか厭らしい映画だと思います。良い意味で。
この映画のような極端な状況は考えにくいですが、それでもいかに現代が電気頼みなのかというのを痛感するわけですよ。その先にはやっぱり触れられてはいませんが原発含めた電源供給の問題にも思いを至らせてね、というようなメッセージもあったんだろうと思います。
それは「じゃあ電気減らして自給自足にするべき」とか単純なメッセージではなく、結局はバランスだったり“いざという時”の身の守り方だったり、日々に対する心構えのような面なんでしょう。
サバイバル知識にしてもそうだし、災害時用の備蓄品関係もそう。「お前ら日本人は日々安穏と暮らしすぎじゃないのか?」という強烈なメッセージに対し、じゃあ改めて何を準備できるのか、を問うてる映画のような気がします。
とは言ってもなかなか難しい面はあるんですけどね。災害グッズにしてもそれなりにお金もかかるし、「役に立つ場面が来るかはわからないけど知っておいた方が良いこと」ほど勉強に身が入らないのも人間の性ですからね…。
それでも“その時”がいつ来るかはわからない、もしかしたらすぐこの後に来るかもしれない…ことを考えて、できることから準備していきたいと思ったわけです。真面目か!
ということで「面白いけど笑ってて良いわけじゃない」、なかなか痛いところを突いてくる映画だなと思います。身近なことから始めなければ…。
このシーンがイイ!
川辺のヅラのシーン。詳細は伏せますが、笑って良いのか疑問を感じつつ笑いました。
ココが○
設定が荒唐無稽のように見えてなかなかバカに出来ないシミュレーションだと思うんですよ。そこがやっぱり一番のポイントかなと。
もうちょっと笑わせに来るコメディなのかと思ってたんですが、そうじゃなかったのが僕としては良かったなと。
ココが×
逆にそこが気になる人も多いような気はします。もっとちゃんと笑わせてくれよ的な。
あとは結末的に少しパッとしないというかあっさり目だった点と、もうちょっと原因だったり全国&世界的な話だったりを知りたかったような気はしました。
MVA
ん〜まあベタですが熱演もあったし、順当に。
小日向文世(鈴木義之役)
主人公のお父さん。
さすがの安定感で素晴らしいですね。この歳で深津絵里と結婚って設定がもう羨ましすぎてこれもフザケンナ案件でしたがそれはまた別の話です。
なかなか身を削った撮影だったと思うんですよね。よく頑張りましたということで。


