映画レビュー0844 『ザ・コンサルタント』
ネトフリ終了間際シリーズに戻ります。
これも結構公開時に気になってはいたんですが、ベン・アフレック(主演)の映画ってなんか「別に良いかな」って感じになっちゃうんですよね。別に嫌いじゃないんですけどね。なんなんでしょうね。監督作はすごく期待しちゃうんですけどね。
ザ・コンサルタント
やや説明臭いものの意外な展開で終わり良し。
- アングラ業界御用達会計士の生い立ちと真の姿
- よくある三つ巴の戦い…かと思いきや?
- すべてにおいて中途半端な要素をうまくつないで仕立てた印象
よくある宣伝文句的には「表の顔は会計士、裏の顔は殺し屋」という感じだったので、「ついこの前マッコールさん観た後だしなぁ…」と「イコライザー」の劣化版みたいな嫌な予感を抱きつつ観たんですが、実際は全然違う内容で一安心。なかなか面白かったです。
ベン・アフレック演じる主人公のクリスチャン・ウルフは田舎町の会計士で、大した仕事もしていないしがない会計士…かと思いきや、どうも複数のマフィアたちと仕事をしているらしい汚れ会計士のご様子。
人物こそ特定できていないものの、その「複数のマフィアと仕事をしつつ生き長らえている奇妙な会計士がいる」ことに気付いた財務省の犯罪捜査部トップ、レイモンド(J・K・シモンズ)は、弱みを握っている部下・メリーベス(ロザリオ・ドーソン激似のシンシア・アダイ=ロビンソン)に、「いくつもの組織のマフィアたちと仕事をしながら生き長らえている会計士が何者なのか」を調べさせることにします。
一方、ウルフは気まぐれ的に珍しく大企業からの財務調査の依頼を受けることにし、その企業で不正に気付いた経理のデイナ(アナ・ケンドリック)とともに速攻原因を突き止めますが、その直後にCFO(最高財務責任者)が自殺(に見せかけた殺人)してしまい調査は打ち切り。
打ち切りが納得できないウルフは独自に調査を続行しようと考えますが、しかし彼の元には殺し屋が現れ、また同様にデイナにも差し向けられていて…というようなお話です。
以上のようにわかりづらい概要で文章力のなさが大変申し訳無いんですが、なんだかすごく概要を書きづらい、とっ散らかったお話なんですよね。序盤は。
というのも、一応は「主人公のウルフ」「財務省犯罪捜査部」そして「ウルフを追う殺し屋」の三つ巴ではあるものの、まず「財務省犯罪捜査部」の立ち位置がかなり微妙。
ぶっちゃければ「ウルフとはこういう男」を語るためだけに用意された舞台回しみたいなポジションが前面に出てきちゃってるような印象で、はっきり言えばいらないんですよ。J・K・シモンズの名演でほっこり良いぜと騙されがちですが、もう完全に「ウルフの説明役」としてしか機能してません。
おまけに、ウルフはウルフで回想シーンで彼の過去がちょくちょく語られるため、もうコレでもかってぐらいに「ウルフはこういう人です」が繰り返されるお話になっています。
というのも彼はそもそも発達障害(≒自閉症)らしく、その描写が結構くどいぐらい登場するんですよね。それは後半に向けての布石でもあるんですが、ただ序盤から「ウルフの人となり」を両方向から説明してくれるのでひじょーに説明臭い映画に仕上がっていると思います。
もっと言えばアナケン演じるヒロインも「ぶっちゃけいらなくね?」感が強く、客寄せパンダ感も否めません。彼女もまた「ウルフはこういう人です」を描くために使われているに過ぎず、とにかく中盤まではあらゆる方向からウルフの説明が繰り返される映画です。
ただ、その辺割とうまくサスペンスっぽく展開してくれるので、観ている最中はそんなに気にならないのは良い点でしょう。終わってから振り返るとそう思うな、ってだけで。
冒頭に書いたように、僕は「イコライザー」と似たような映画なのかなと思っていたんですが全然そんな感じでもなく、また宣伝文句とも違って基本的にウルフは「会計士」でしかないです。ただし、超強い。つまり危機に対する防御力がハンパないわけです。
じゃあなんでその防御力を身に着けたのか、こんな特異な会計士になったのか…のヒントが過去のエピソードであり、そのエピソードを踏まえての終盤ということになるわけですが、その辺は観ていただくとしましょう。
最終的には「巻き込まれ型の映画なんだけどちょっと変わった主人公のおかげで珍しい内容に仕上がった」ような印象。ところどころ普通とはちょっと違う面があり、そこのおかげで「ありがちだな」と感じさせない巧みさがある映画だと思います。
正直、強く推すにはためらわれるぐらいに構成要素がチグハグな話だとは思います。マジで財務省の話いらないし。ただ、その分珍しくもあるし最後は良い驚きもあるしで、一見の価値はあるんじゃないでしょうか。
実はちょっと続編観たいかも。
このシーンがイイ!
(いらないと言いつつ)J・K・シモンズの見せ場が一番良かったですね。物語の本線的にはマジでいらないと思いますが。でも「やっぱりハゲ爺いいなぁ…」としみじみ感じさせる良さがありました。
ココが○
主人公のレア属性を活かした終盤の展開(と人間関係)でしょうか。逆に言えばその辺を使ったコーティングがうまい映画だと思う。
ココが×
結局は「ウルフのご紹介」が大半になっているので、もう少し説明部分をうまく観客に想像させるような作りにして本線をしっかり描いて欲しかったような気はしますね。
あとはやっぱり諸々ダミーというか、無駄な要素が多かったとは思います。
MVA
ベンアフさんはちょっとクセのある無表情感がなかなかうまかったですね。やっぱりなんだかんだ役者だな〜と。
J・K・シモンズは相変わらず最高ですがやっぱり役割的に微妙だったのが残念。アナケンも同様。ということでこちらの方に。
ジョン・バーンサル(ブラクストン役)
黒幕に雇われている殺し屋。
余裕たっぷりで常識人っぽく振る舞う殺し屋、ってまあベタなんですがその余裕感が良かったですね。ただの悪役ではないところも雰囲気出てたし、すごく良かったです。