映画レビュー0600 『パイレーツ・ロック』

いやー、超観たかったんですよこの映画。なので記念すべき600本目としてチョイスしました。

少し前に運良くBSプレミアムでやってくれまして、もはや僕にとってはこれほど100%間違いなく名作だろうなと確信を持てる映画も無いので、最高画質できっちり録画しておきました。

ということで、「なぜ100%と言い切れるのか」という僕の好みをツラツラ綴るレビューとなります。

パイレーツ・ロック

The Boat That Rocked
監督
脚本
リチャード・カーティス
音楽
公開
2009年4月1日 イギリス
上映時間
135分
製作国
イギリス・ドイツ

パイレーツ・ロック

1960年代、民放ラジオ局が存在しない時代のイギリス。おカタイ公共放送に対抗するかのように、24時間ロック・ポップスのみを放送する海賊ラジオ局「ラジオ・ロック」は、国民の約半数が毎日聞き入るほどの大人気を誇っていた。彼らを目障りに思った担当大臣のドルマンディは、新法を作ってでも「ラジオ・ロック」を潰そうと目論むが…。

オレ得映画万々歳。

8.5

最初にお断りしておきますが、採点的には結構贔屓目です。

思ったより普通で、実話ベースっぽい雰囲気を漂わせつつも実際はいかにも創作な展開だし、こういう映画が好きではない人たちからすればいろいろとケチが付きそうな気もします。要所要所もベタだし。

ちょっと意地悪な言い方をすれば「音楽の力を借りた上げ底ドラマ」と言えなくも無いかな、と。

ジャンルとしては…何になるのかな~。コメディっぽくもあり、ヒューマンドラマでもあり、青春ドラマでもあり、男の友情もあり、ちょっぴりポリティカルドラマの面もあり…と割とてんこ盛り。そして何より音楽ドラマでもある、と。

ちょこっと説明。

「海賊ラジオ局」の“海賊”は、いわゆる海賊版なんかの海賊と同じ意味になりますが、しかしこの「ラジオ・ロック」の面々は実際に船を住居兼ラジオ局(職場)として生活しているので、字面通り「海賊ラジオ局」になっているのもちょっと面白いところ。

結構年季の入ったでっかい船でDJとスタッフ十数名が生活し、毎日24時間ロック(とポップス)を流し続け、酒にタバコにドラッグ(ほぼ描写無いですが)にたまに女、という文字通りロックな生活を送っているわけですが、そんな彼らのもとに、なぜか「更生させるため」に母親から送り込まれた一人の少年・カールがやってきて、その彼の成長的青春ドラマを織り交ぜつつ、「ラジオ・ロック」と政府との戦いを描きます。

とは言っても“戦い”というほどギスギスしたものでもなく、「ラジオ・ロック」でのエピソードが中心の物語。

さて、そんな映画なわけですが、これがもうね…オレ得でしかない映画なんですよ。マジで。

監督・脚本はリチャード・カーティス。ハズレ無しでおなじみです。もう監督引退宣言をしてしまったので、たった3本しかない中の貴重な1本。他の2本は言うまでもなく良かった(「ラブ・アクチュアリー」「アバウト・タイム ~愛おしい時間について~」)だけに、これだけでもう期待度100%。

しかし当然、それだけじゃない。

主演は亡くなってしまいました、フィリップ・シーモア・ホフマン。この人の映画も大体ハズレがない。そしてご贔屓ビル・ナイ。問答無用で良いわけです。他にも通好みの名優たちが何人もいて、世間一般的には地味かもしれませんが、イギリス映画好きには最高に豪華な映画になっています。

あとあれだね。コルム・ミーニイも出てたら鼻血出ちゃうね。ホント。おまけにチョイ役ででも我らがおヒュー(ヒュー・グラント)なんて出てきてたらもう多分全身の血液が沸騰して蒲田くん(出典:シン・ゴジラ)みたいになっちゃうから出てこなくてよかったよ。むしろ。ほんとに。

まあそれだけ、とにかくドンピシャで最高だったわけですよ。僕にとっては。それが往年の名曲に彩られながら展開するってだけでもうたまらないんです。そりゃあ。

残念ながら洋楽には詳しくないものの、しかしここ何年か詳しくなりたいと思い続けている(が行動はしていない)だけに、耳にも嬉しいという眼福耳福脳福だらけの2時間強。こんなの褒めるなって言う方が無理ですリームー。

もう言いたいことは山ほどあるんですけどね。しかし努めて冷静に映画自体について書くとすれば、やっぱり最初に書いた通り、内容的には割と凡庸な気はします。誰もが愛せる物語だとは思うけど、それだけにどうしてもベタにならざるを得ないし、筋としてはそこまで褒めるほどのものではないと思います。

でもやっぱり、見せ方が素晴らしいんですよ。何なんだろうかリチャード・カーティスって人は。鼻につく演出なんて一つもないんですが、素晴らしくテンポよく、すんなりと頭に入ってくる作り。

そして当然ながら、最大の武器とも言える音楽の使い方も抜群にウマイ。こりゃーもうサントラマストバイですよ。マストバイ。最初見た時はマストパイ=帆のパイのことなのかなーとか思いましたけどね。そんなことはどうでもよくて。

そしてこの映画ならではの良さとして書いておきたいのが、その音楽、ラジオを聞く一般人たちの描写が頻繁に登場するんですが、それがめちゃくちゃいい。サッと一瞬映るだけなのに、その人たちのドラマが透けて見える環境をきっちり映すんです。恋人と、友達と、家族と、反対に家族に内緒で一人ひっそりと…いろんな人たちが、彼ら「ラジオ・ロック」の放送を大げさでなく生きがいのように楽しんでいる。その描写がとてつもなくイイ。

まだ娯楽の少ない時代、いかにこの当時の人たちにとってこの放送が大きなものだったのか、フィクションでもリアリティのある見せ方はさすがの一言。あんなの見せられたらこっちも嬉しくなっちゃうし、同じように「ラジオ・ロック」に肩入れしちゃうのは当然でしょう。

そしてそのラジオから聞こえてくるフィリップ・シーモア・ホフマンの声。めちゃかっこいい。なんなんでしょうね、彼の魅力は。ちょい太いくせにめっちゃかっこいいんですよ。本当に。途中、いざこざがあって戦うことになる“伝説のDJ”ギャヴィン役を演じるリス・エヴァンスと比べても、やっぱりフィリップ・シーモア・ホフマンの方がかっこいいと思う。それはやっぱり…あの声なのかなぁ。渋い声に髭面がめちゃくちゃかっこよかった。

「ザ・カウント」っていうDJネームも超かっこいい。なんか言いたくなるし。「俺だぜカウントだぜ」って。日本語なのに。言いたい。

とにかくかっこいいんですよ。フィリップ・シーモア・ホフマンが。「誰よりも狙われた男」でもかっこよかったけど、あれよりももっとセクシーでかっこいい。もーね、本当になんでこんな早く亡くなってしまったのか…悔しくて仕方がないですね…。

ちなみに、エンドロール一発目の曲は、あの「レッツ・ダンス」。これまた亡くなってしまったデヴィット・ボウイの曲ということで…ううむ、たった7年前の映画なのに、大事なパーツの二人も亡くなっているとは…なんともやるせないところです。

あーもう語り尽くせない感じですが、キャスティングに関しては言いたいことがまだたくさんあるので最後の方に譲るとしまして、とりあえずのまとめ。

「イギリス映画が好き」「洋楽ロックが好き」であればもう外れないかな、と。どっちか引っかかる人であれば、観て損はしないとお約束しましょう。

個人的に感じたちょっと変わった視点の感想としては、どことなく「現代版(とは言っても時代設定は古いですが)バグダッド・カフェ」的な印象もありました。映画としては全然似てないんですけどね。

ただ、なんとなく世間からあぶれた、道を外した人たちの物語という感じがどことなくオーバーラップした気がして。アウトローの物語というか。そんな素振りは見せないけど、どっかにドロップアウトした人たちへの優しさを感じる、そこがまたいいな、と。

とにかく個性的なDJの面々がかっこいいです。主義主張は別にして、「政治に音楽を持ち込むな」とか言っちゃうズレズレの皆さんはこういう話を観てどう思うんでしょうかね。音楽こそ政治と切り離せないものだと思いますが。

重箱の隅つついてないでロックしようぜ。

このシーンがイイ!

もうやっぱり名シーンだらけで上げ始めたらキリが無いんですが、カールが童貞を捨てられるのか…! っていうあの無理があるデイヴとの影武者作戦のシークエンスは最高でしたね。バカすぎる、でも男の友情っていいな、っていう。

ただ女性から観てどう思うかは…アレですが。

ココが○

さりげなく大きいのは、上にも書いたような「男の友情」の描写。

劇中、カールとデイヴにはとある出来事が起きるんですが、ただそれに対してもサラッとしていて引っ張らないのがとても良いと思います。

反対に、対決に至るほど深刻な対立になる二人の話も、決着の付け方や結末もまさに少年ジャンプの世界で、これまた男としてはたまらないものがあり。そうですね、やっぱりこの映画のメインは「友情」なのかもしれません。

おまえら最高だぜ。

ココが×

まあ最初に書いた通り、個々の話はベタでもあるし、この映画の世界が好きか否かで評価も変わるのは間違いないでしょう。僕としてもものすごく期待していただけに、もう一歩突き抜けて欲しかった気持ちはあります。

MVA

いやー、まだ語りますけどね。役者陣。

まずビル・ナイ。もう言わずもがなですよ。この手のイギリス映画には必須ですね。相変わらず渋くてかっこいい。一番常識人っぽいんですが、でも実際昔はチョイ悪だったぜ感が半端ない。「かなりヤンチャしてきたものの今は大人になって現在進行形のヤンチャ連中を捌いてる感じ」が誰よりも似合う。ダンスシーンも見逃せません。

それと書いておきたいのがニック・フロスト。おデブなのにモテモテ。確かにちょっとなんとなくかっこいい。自信がそうさせるのか…!「キンキーブーツ」に出ていた、と知って記憶をたどりましたが、もう全然違う!! いやー、役者やで。ほんまに。

そして悪役として登場、ケネス・ブラナー。この人、終わって調べるまで全然気付きませんでした。まさかケネス・ブラナーだったとは…。これまた今までとはまったくイメージの異なる雰囲気で、ンマー役者です。ややコミカルでオーバーな大臣でしたが、こういう映画にはこれぐらいがぴったりな気がします。良い悪役。

さらにチョイ役ですが、カールのお母さんとして出てきたのがエマ・トンプソン。これまた劇中は気が付かなかったのでビックリ。贅沢に良い人使うなぁ。ちなみに共演シーンはありませんでしたが、ケネス・ブラナーとは元夫婦だそうで。大丈夫だったんでしょうか。

そんな強豪ひしめく中、誰にすんべか、と悩んだっぺ。まあ…この人しかいないんですけどね。

フィリップ・シーモア・ホフマン(ザ・カウント役)

なんで死んじゃったんだよーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!

詳細は上に散々書いたので割愛。とにかくかっこよかった。

あともう一人。これまた登場シーンは少ないですが、マリアン役のタルラ・ライリー。めっっっっっちゃかわいい。

ビル・ナイ演じるクエンティンがカールに紹介する思わせぶりな初登場のシーン、ものすごく大事なシーンだと思いますが、完璧なまでに期待に応えるかわいさ。なんなのもう。衣装もパーフェクト。そりゃーカールも一発で惚れるわけですよ。当たり前。あんなの当たり前。クラッカーばりに当たり前。(激古)

またビル・ナイが隠しながらご紹介、って時点で「かわいいに決まってる」って思わせる期待感もスゴイ。ビル・ナイが紹介して外すわけがないという謎の安心感。

正直、MVAはこの子にしてもいいかなっていうぐらいに衝撃的に完璧な登場シーンでした。一番良いシーン、ここだったかもな…。

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