映画レビュー1100 『新幹線大爆破』
今回は例のシリーズが無かったので例によってBSプレミアムの録画から古い映画を。
これねー、ずっと観たかったんですよ。設定的に「スピード」の原型として有名だとか言う噂です。
新幹線大爆破
佐藤純弥
小野竜之助
佐藤純弥
加藤阿礼
高倉健
千葉真一
宇津井健
山本圭
郷鍈治
織田あきら
宇津宮雅代
藤田弓子
多岐川裕美
志穂美悦子
青山八郎
1975年7月5日 日本
152分(国内版)
115分(アメリカ版)
100分(フランス版)
日本
BSプレミアム録画(TV)

ただのパニックモノではないドラマ性が素晴らしい。
- 最後まで目の離せない展開に大満足
- 犯人・警察・国鉄のそれぞれが最善を尽くし先の見通せないスリルは今でも健在
- 和製パニックムービーの金字塔
- 日本よりも海外での評価が高い映画だとか
あらすじ
いやー面白かった。予想よりも面白かった。
映画自体にしても登場人物にしてもそうですが、昔の日本人は元気があったなぁと妙に感心しましたよ。今これだけの映画ってなかなか作れないだろうし、出てくる乗客(一般人)なんてもっと大人しく待ってるんだろうな…とか。
ある朝、国鉄に「ひかり109号に爆弾を仕掛けた。その爆弾は走行速度が時速80kmを下回ると爆発する」との脅迫電話がかかってきます。
そんな仕掛けは作れないだろうと言う国鉄側を見越し、犯人は貨物列車で“テスト”を見せつけそれが嘘ではないことを証明、警察と国鉄には一気に危機感が広がります。
かくして「事件解決(爆弾解除)まで無事運行する」ために国鉄運行司令部、ひかり109号運転手、そして警察が最大限の努力を払いますが、しかしそれを見越した犯人側も巧みに計画を実行に移し、膠着状態のまま徐々に迫るタイムリミット。
果たして勝つのはどちらか、そして新幹線は無事停車できるのでしょうか…!
犯人側のドラマがあってこそ
国鉄ですよ皆さん。知ってますか国鉄。もはや知らなくても珍しくないって話ですけどJRの前身です。
一応キャスティング的には主役が“犯人側のリーダー”、ご存知高倉健です。そして爆破予告を受けて警察とひかり109号の間に立って事故を未然に防ぐべく司令を送るのがもう一人の主人公、宇津井健。ダブル健さんです。
加えてもう一人、ひかり109号の運転手に千葉真一。おなじみサニー千葉です。この3人が主要人物ということになり、よって警察はやや影が薄め。とは言え捜査はそれなりに進むので「犯人・国鉄・警察」の三つ巴というか…厳密には「犯人 vs 国鉄&警察」になります。
ですが例によって国鉄と警察の間にも思惑や被害に対する意識の違い等もあって一枚岩ではない、そこがまた面白いと。
僕はてっきり単純なパニックムービーの一つなんだろうと思って観始めたんですが、最初に電話をかけ終えた犯人の姿がドドンと写って高倉健、って時点で「おおっ!?」と一気に盛り上がったんですよ。だって健さんの時点で「ただのカネ目当ての犯人じゃないよ」って思うじゃないですか。そんなステレオタイプな犯人に健さんが使われるはずがないですからね。
事実、犯人でありながら主人公であり、最も感情移入させるキャラクターとして健さん演じる犯人・沖田哲男の「犯行に至った動機」の部分が非常に良いドラマになっていて深みが出ているし、さらに一刻を争う新幹線の危機的状況からその犯人側の過去話を挟み込むことでいい塩梅に緩急がついているようにも感じました。攻め一辺倒ではない映画と言うか。これが非常に巧みでしたね。
なんでも海外版では「長すぎる」という理由から犯人側のドラマがバッサリ切られているらしいんですが、それでも評価が高いのはなんだか少し不思議ではあります。この映画は犯人のドラマがあってこそ、そしてそれが高倉健であるからこその良さだと思うんですけどね。
まあそれだけ「純然たるパニックムービー」としても良く出来ている、ということなのかもしれません。
今では作れない大作
軽く舞台背景を書いておくと、当時はいわゆる高度経済成長期直後、そしてその象徴のように“安全神話”を誇る新幹線が題材になっていて、高度経済成長期にしても世界初の高速鉄道である新幹線にしても、当時は「日本にしか無いもの」、日本オリジナルとしてこの上ない舞台を使用しているわけです。
さらにシナリオとしてはその高度経済成長期に対する批判も込められていて、やや社会派の側面も持っているのがポイントでしょう。そしてそれを表現するのが犯人側のドラマなわけで、やっぱり「犯人の描き方」にこの映画の特徴や美味しさみたいなものが詰まっていると思いますね。
もちろん例によってネタバレになるため詳細は書きませんが、観客は高倉健さんが(役柄上であっても)「大量の乗客を死なせる」ような事態を引き起こすわけがないと思って観ているわけで、それ故に最後の最後までどうなるのか目が離せないシナリオになっているところもとても良い。言ってみれば役の外の印象まで利用した作りになっているのが素晴らしいですね。観客に対する信頼すら感じます。
それなりに長めの映画ではありますが、古い邦画の割に(?)中だるみを感じることもなかったし、テーマがテーマなので緊張感も絶えずしっかり観られるまさに良作です。邦画でこれだけの「やや社会派娯楽パニック大作」が作られていたのは本当に驚きだったし、今となってはもうここまでのものは作れないような気がしてなりません。
まあ、高倉健ほどの存在感を持った文字通りの“大スター”もいませんからね…。古い映画を観て現在の衰退ぶりを感じてしまうのも悲しいところではありますが、それもまた映画の良さなんでしょう。
このシーンがイイ!
終盤なので詳しく書けないんですが…。警察が仕掛けた罠に対して取った犯人の行動がすごく良かったんですよね。スルーして欲しくない、でも罠にかかっても欲しくないという観客の心情に完璧に応えてくれる良いアンサー。
ココが○
最初から最後まで終始一貫して良いですよ。多少のアラはあれど、先を読ませず最後まで予断を許さない、飽きさせない展開は素晴らしいの一言。本当にレベルが高い。
ココが×
妊婦さんのエピソードとか、結構いらないんじゃないの感漂う部分が多少あったかな、程度のことは思いましたが…全体的には非常に良く出来ていることは間違いありません。今もって邦画の最高峰の一本かもしれない。そんなに観てきてないけど。
MVA
皆さん良いんですが、やっぱりちょっと格が違うというか…。
高倉健(沖田哲男役)
犯人グループのリーダー。
上に「健さんが乗客を見殺しにするわけがない」イメージ云々書きましたが、しかし実は健さん、この手の役はこれが初めてだったそうで。
それまでは似たような役ばっかりでうんざりしてきていたところにこの役のオファーがあり、なんとしてもやりたいと熱望したんだとか。
確かに僕も最初に「あ、健さん犯人なの!?」って驚いたぐらいだし、犯人役自体レアな気がしますが、それ故上に書いたような「単純な勧善懲悪なはずがない」期待にもつながるわけで、当然ながら素晴らしいキャスティングだし健さんの存在感も言わずもがな、ってやつです。
余談ですが、僕は「ブラック・レイン」のときの健さんのほうがすごくかっこよく見えたんですが…こっちの方が全然若いんですよね。歳を取ってよりかっこよくなっていく辺り、これもまたさすが高倉健と言ったところでしょうか。


