映画レビュー1219 『ザ・セル』
今回はウォッチパーティより。
これもまた自分ではおそらく観ない映画なのでありがたい機会でした。この辺の微妙に古いし今話題にも登らないし当時興味を持ったこともない映画ってなかなか選ばないんですよね。機会損失だとは思うんですが。
ザ・セル
ターセム・シン
マーク・プロトセヴィッチ
ジェニファー・ロペス
ヴィンス・ヴォーン
ヴィンセント・ドノフリオ
マリアンヌ・ジャン=バプティスト
ジェイク・ウェバー
ディラン・ベイカー
ジェイク・トーマス
2000年8月18日 アメリカ
107分
アメリカ
Amazonプライム・ビデオ ウォッチパーティ(iMac)
未だにオリジナルの世界観。
- 連続殺人犯が逮捕されるも誘拐された被害者女性が見つからない
- 彼女を探し出すべく犯人の内面に入り込んで手がかりを追う精神科医と警察
- 芸術的な内面世界は美しく、グロくもあって独特の世界観
- ちょっぴりインセプションっぽい
あらすじ
20年以上前の映画でありつつ、今もオリジナルな魅力を持つなかなか面白い映画でした。ただ若干好き嫌いが分かれそうな気もする。
昏睡状態の少年・エドワードの意識を回復させるため、特殊な機械を用いて彼の内面世界に入り込みながら治療を行う医師・キャサリン(ジェニファー・ロペス)。しかしまだ先進的で特殊な治療のようで、必ずしも結果はうまく行っていないようです。
一方、女性を誘拐しては水槽に閉じ込め、時間をかけて溺死させる形で殺人を繰り返す男・カール(ヴィンセント・ドノフリオ)は新たな“獲物”を誘拐するも、FBIの捜査によって逮捕されます。
昏睡状態で発見されたカールはそのままキャサリンの働くセンターに運び込まれ、彼女が内面に入ることで誘拐された被害者女性を探し出そうとするFBIですが、異様な内面世界に身の危険を感じたキャサリンは彼の世界から脱出。捜査は難航します。
その間も刻一刻とタイムリミットが迫ってくる中、果たして被害者女性は無事救出できるのでしょうか…。
今でもオンリーワン
ジャンルとしてはSFサスペンスと言った感じで、連続殺人犯の内面に入ることで事件解決を目指す…という、いわゆるマトリックス系な世界です。
ややバイオレンスでグロい面もあるものの、作り的にはちょっと「インセプション」っぽさもありますが当然こっちの方が先に作られているので、当時としてはかなり斬新な映画だったのではないかなと思います。
設定自体は今からすればそこまで目新しくもないかもしれませんが、しかしそのメインとなる「内面世界」の美術は今でもまったく古くならないオリジナリティがあり、奇妙に美しく不気味な世界観がとにかく印象的な映画でした。
物語は犯人逮捕以降がメインになってくるのでそこも少し変わってはいるし、サスペンスでありつつもテーマが“内面”なだけに、闇が深い犯人の救済的な側面もあってそこがまたすごく面白かったですね。犯人はインセプションで言うところのモルみたいなポジションも感じられると言うか。
主演は若かりし頃のジェニファー・ロペスが演じているんですが、これがまためちゃくちゃキレイでびっくり。つい最近「ハスラーズ」を観ていたせいで余計にびっくりしましたよ。神秘的な映像にマッチしたちょっとミステリアスな美女という感じで適役でした。
もう一人の主人公的な存在がFBIのピーターなんですが、これを演じているのが例のデカ男ヴィンス・ヴォーン。最近のコメディ俳優っぷりからは想像できないちょっと二枚目っぽさを醸し出す正統派主人公でこれまたびっくりですよ。なんならちょっと笑っちゃうし。ヴィンス・ヴォーンってこの路線の時期があったんだ、っていう。Googleのインターンシップになる前は刑事だったんだ、みたいな。
犯人役も途中で言われて気付いたぐらいにまったく面影がないヴィンセント・ドノフリオの熱演がすごい。この人本当に役によって全然違いますね…。
そんな役者陣の良さもあって、ややとっつきにくい精神世界のお話でありながらも惹きつけられてしまう辺り、未だにオンリーワンだなと思います。
一応僕の事前の予想ではもっと内面の、精神世界がほとんどの話なのかと思っていたんですが、実際は捜査もあれば普通に現実での会話も多くあり、実は時間的には精神世界にいる方が短かったような気がするんですよ。
ただもうその世界の映像、世界観がとにかく圧倒的で、そのビジュアルセンスたるや相当なものだと思います。これは監督や美術監督その他ビジュアルに関わったスタッフたちのセンスがずば抜けて優れていたのかな、と。
時代的にも今よりこういった前衛的な美術にお金を注ぐ傾向があったような気もするし、まさにこの頃だからこそ作られた映画であるが故に今観てもオンリーワンなのではないかなと適当なことを言うわけです。
ちなみに衣装デザインは石岡瑛子という日本人の方で、それを知ったからかどこか東洋のセンスみたいなものが入ってきているのも独特の世界観につながっているような気がしないでもない。とにかくこの美術は一見の価値アリでしょう。
衣装自体の数も多く、まージェニロペの着替えが多くて大変だっただろうなというのは想像に難くありません。着替えもメイクもしょっちゅうバチバチに変わってキメキメな感じ。本当にこだわって作られているなと思います。
きっとずっと古くならない映画
僕なんかは割と雑に見ちゃう方だと思いますが、それでもびっくりするぐらい気合いの入ったビジュアルなので、向き不向きはあると思いますがきっと誰が見ても驚きがある映画だと思います。
この手の見た目先行映画は物語がイマイチだったりするのがよくあるパターンですが、この映画に関してはそれもなく割ときっちり見せてくれたのも良かった。
話の展開自体はありきたりかもしれませんが、それ以外の部分があまりにも独特なのでまったく古くならないのがすごい。多分ずっと古くならない映画でしょうね、これは。
期待以上に面白く新鮮な映画だったので、「おっ、2もあるんじゃん」と思ったんですが2はキューブ的な感じで超駄作だそうです。なので観ません。無念。
このシーンがイイ!
やっぱり犯人の内面のシーンはどれもものすごく印象的ですごかったですね。華美で不気味。
ココが○
オンリーワンの世界観に尽きるでしょう。こんなのよく作るな、どういう脳みそしてるんだろみたいな。
もっとわかりにくいストーリーなのかと思っていたんですがそうでもなく、割とストーリー自体は良い意味で普通で理解しやすかったのも良かった。
ココが×
一部グロいのでそこは注意です。僕としては嫌レベル10段階中7ぐらい。最初の内面世界のお風呂の中身の描写があったら10でしたが無かったのでセーフ。
MVA
ジェニロペがすごく綺麗でとても良かったので選びたいんですが、こちらの方にします。
ヴィンセント・ドノフリオ(カール・スターガー役)
連続殺人犯。闇が深い。
とにかく狂ってるんですがその狂いっぷりの演技が素晴らしい。中でも外でも強烈。
当然ですが演技としては申し分ないし、その上「ドノフリオっぽくない」と思わせる雰囲気も良かったです。結構繊細な感じがして。