映画レビュー1043 『チェイサー』

今日も韓国映画、連続で観るのは初です。たまたまこの週はネトフリ終了で気になる映画が韓国映画だっただけなんですが。

この映画もタイトルは知っていて、ただグロいという噂も聞いていたので悩んだんですが観ろと言われたので観ました。

ちなみに検索のサジェストでも「チェイサー グロい」とか普通に出てくるので割とグロいのは有名なんでしょうね。

※なお、当ブログでは1977年にアラン・ドロン主演の同名映画もレビューしているため、一覧ページの方では便宜的に公開年数を入れています。

チェイサー

The Chaser
監督

ナ・ホンジン

脚本

ナ・ホンジン

出演

キム・ユンソク
ハ・ジョンウ
ソ・ヨンヒ
キム・ユジョン
ク・ボヌン
チョン・インギ
パク・ヒョジュ

音楽
公開

2008年2月14日 韓国

上映時間

125分

製作国

韓国

視聴環境

Netflix(Oculus Quest2)

チェイサー

よくできてはいるものの、話がつらい。

8.0
デリヘル嬢の連続失踪を追う“元締め”がたどり着いた真実
  • 自分の店のデリヘル嬢が連続失踪、引き抜きを疑った元締めが独自に捜査
  • 早めに犯人にたどり着き、また逮捕もされるが肝心の“嬢”が見つからない
  • 実際にあった連続殺人事件をベースとしたフィクション
  • 洋画ではあまり観られない展開

あらすじ

感情的な話をあんまり書いちゃうとねー。それだけで結構なネタバレになっちゃうんですが…ただそこを回避してレビューするのが不可能に近い映画でもあるので、まあちょっと臭っちゃうけどごめんね、ってことで書いちゃいますけどね…なかなかにしんどいお話でしたよ。

簡単にまとめると、「映画としては確かに良くできているものの、好きな話かと言われると好きじゃない」ってところでしょうか。確かに映画としての地力は素晴らしいと思います。

主人公のオム・ジュンホ(キム・ユンソク)さん、丸顔のおっさん感がとても親近感が湧くわけですが、彼はいわゆるデリヘル(デリバリーヘルス)の経営者をやっております。上に“元締め”なんて偉そうに書きましたがそんな大それたものでもなく、下っ端のチンピラ一人を部下に持ち、あとは数人の女性で回しているような零細デリヘル業と言ったところでしょうか。

オープニングで彼のデリヘル所属と思われる一人の女性がとある男性と待ち合わせした後に姿を消す様が描かれるんですが、それからしばらく経ってから再度「その時の男」と思われる客からしつこく「女を回せ」と電話を受けたジュンホデリヘル、オープニングで一人姿を消した件もあってもはや所属女性がカツカツの状況のため、「体調が悪いので休みます」と言ってきたシングルマザーのミジン(ソ・ヨンヒ)に無理強いして出勤させます。

派遣を決定した後に「(従業員が失踪した)あのときの客だ」と気付いたジュンホは、これは逆にあのときの件を問い詰めるチャンスだと思い、ミジンに「ついたらすぐに住所を連絡しろ」と指示。ミジンも指示に従って連絡を取ろうとするもののお決まりのようにつながらない携帯、電波ナッシン。

あからさまに怪しい家に危機を感じたミジンはなんとか逃げようとしますが捕まってしまい、あえなく男の手にかけられてしまうのでした…。

まったく連絡がないことを不審に思ったジュンホは独自に捜査を開始。元刑事のスキルを活かして犯人に迫りますが…あとはご覧ください。

私憤の先に

どこまで書いたらいいものか…本当に悩む映画なんですが…。

まず上に書いた通り、実際にあった“連続殺人事件”がベースのお話のため、まあ言ってしまえば…失踪したデリヘル嬢たちは殺されているわけです。

ただ、主人公のジュンホはまさか殺人とは思っておらず、いわゆる“引き抜き”の類だと思っていまして。彼は「飛ばし」と言ってますが、これは(客のフリをして依頼し)やってきたデリヘル嬢を別の業者に“飛ばし”てしまうことを意味するようですね。おそらくそこで人身売買のような形でお金を取って儲けているんでしょう。

ちょうどこの前ネットの記事で読んだんですが、日本でも少し前までは「風俗島」と呼ばれるようななかなかひどい島があって、お金に困った女性をそこに“飛ばし”て稼がせ、借金を返済させるシステムが存在していたとかいう話なんですが、ジュンホもこれと同じような形で従業員が奪われたと考えていて、「うちの商品を勝手に持っていくんじゃねぇ」とお怒りなわけです。

しかし実際はそんなものではなく、殺されていたと…。

いや本当にデリヘルという業態(客のところに女性一人で赴く)自体の危険性が高すぎて、こんな商売やってちゃダメだろと思うんですがそれは置いといて、このようにジュンホの行動原理は完全に私憤というか、自分の飯の種を持っていかれて頭に来ているのが出発点で、動機はほぼ全編「この事態を招いた男に清算させる」ことと、もう一つ「残された数少ない従業員であるミジンを探し、無事連れ戻す」ことにあります。

ミジンは最初の経緯からもわかる通り、体調不良で休むつもりが出勤を命じられて被害に遭っているため、言ってみれば「完全にジュンホのせい」で悲劇に遭遇するんですよね。おまけに途中から彼女の娘とも接点ができてしまい、二人分の“情”を抱え込むことになります。

ところがそのまま殺されていたとなると…当然とんでもなく責任を感じることになるだろうし、トラウマになりかねないレベルでメンタルに影響が出ることは疑いようがなく、彼は途中からはおそらく彼女のため以上に自分のために行動していたような気がします。この事態を招いた自分自身の尻拭いを必死にやるような。

ちなみに言ってしまうと、かなり初期の段階でジュンホは犯人の男と(事件の真相を知らないまま)相対し、騒動を起こして一緒に逮捕されるんですが、そのときに男は「女は殺した」って言っちゃうんですよね。警察に。何人も殺してきたと。

それによって警察も動き出すんですが、いかんせん住所がわからない(住所だけは頑なに言わず、わかるような所持品もない)ために証拠も出てこず、そのまま勾留しておくのも無理があるような状況になっていくわけです。犯人がそれを見越していたのかはわかりませんが、そのせいでとにかく捜査は難航し、ジュンホも警察と協力したり勝手に動いて独走したり、なんとかしてミジンを見つけ出そうと戦うことになります。

余談ですが、この映画にしてもこの前観た「キンダガートン・コップ」にしても、「証拠がないために釈放」というのは割とよく見るパターンなんですが、日本ではあまりこういうことは起こりません。それが世界でも悪名高き“人質司法”と呼ばれるもので、結局警察の裁量でいくらでも勾留が伸ばせるというシステムが“普通”になっているので、本人が自供までしているのに釈放するのは変じゃないか、という気がしてしまうんですが、これはある意味日本人しか持ち得ない危険な常識なんだろうと思います。

もちろんこの映画で描かれる事件については犯人も(物語上示されているので)確定しているから「釈放する方が良くない」と思うのは無理がないんですが、実際はこの段階で彼が犯人である確証は警察側にはないため、釈放するのも無理がない面があります。ここは履き違えると危険なので覚えておきましょう。

グロさはギリギリ我慢できるレベル…?

ちょっと話が逸れましたが、なにせ最初に書いた通りいろいろ書くとネタバレになりかねないお話なので、物語について語るのはこの辺にしておきましょう。

そうそう、一つ重要な情報としてはですね、「どれだけグロいのか」というところ。

あくまで僕個人の感覚でしかありませんが、「ギリギリ我慢できる」レベルかなと感じました。そのレベルは個々人で違うのでまったく参考にならないんですけどね。

僕が一番苦手なのは内蔵飛び出す系なんですが、そういうのはありません。少し“強い”表現は目立ちましたが、それでもサスペンスとして真っ当な描写にとどまっていると思います。

遺体の一部が出てきたりもするんですが、良くも悪くも作り物感はあるのでそこまで気にはならず、むしろすごく痛そうなシーンのほうが(気持ちの上で)観ていてしんどい部分がありました。ただこれもそこまで直接的な(被害者の)表現がなされているわけではないので、嫌だけどまあギリギリ許せるかな、と。

それなりに血が出てくるだけでキツいような人であれば観るのは控えた方が良いかもしれませんが、それこそサジェストで「グロい」と出てくるほどひどくグロい映画ではないと思います。それより話の内容自体の方が全然衝撃が大きかったですね。

ご参考になれば幸いです。

ネタバレサー

ご存知無理のあるタイトルシリーズ。

これはねぇ…やっぱり「実はミジン生きてましたからのダメでした」が一番キツいし趣味が悪い展開だよなぁと思います。

趣味が悪い=ダメな物語、ってわけではないですよ? その方がより観客に絶望感を味あわせる意味で効果的なのは間違いないし、そのある種の“意地の悪さ”みたいなものがこの映画の評価を引き上げている面があるのも事実だと思います。

でもね…でもやっぱりミジンは助かってほしかったよ…。創作だけどさ…。完全にソ・ヨンヒの美貌に影響されてる面も否めないけどさ…それでもやっぱり…なんとか無事で“多少は救いのある”話にしてほしかった。

この辺りは韓国らしいというか、おそらくハリウッドではあんまり無い展開でしょうね。きっと。最初にこういう展開で作っても、公開前のレビューの段階で評判悪くて蹴られそう。

僕はタバコ屋のオバちゃんがマジでクソ無駄口叩く頭の悪さに頭に来たんですが、とは言え彼女も立派な被害者なのでね…。怒りは犯人に向けるべきだな、と反省した次第です。

それと警察も無能すぎるだろとイラッとしたんですが、これもまあ…「タバコを買いに店に寄り、出てくるのを待ってたら事件が起きた」のを責めるのも酷なのかもしれませんね。いきなり尾行がバレる形で踏み込むわけにもいかないだろうし。でも観ている側としては「すぐそばで警察が待機してるのに」という無念さでよりダメージが大きかったのも事実です。

娘ちゃんはどうなるんでしょうね。ジュンホが育てるのかな。でもジュンホはもうこの仕事できないですよね。また刑事に戻ればいいのに…そんな簡単な話じゃないんだろうけどさ。

このシーンがイイ!

あんまり「いい」というような話ではないんですが…終盤、とある人物が震えるシーンがあるんですよね。あのシーンがもう…あらゆる意味で心に来るシーンでしたね…。

ココが○

監督さんはこれが初長編だそうで、初長編でこれだけ重いサスペンスを撮っちゃうのはなかなかスゴイ。

話の好き嫌いはあれど、映画の完成度の高さという意味ではあまり異論がないと思います。よくできてる。

ココが×

ただ好きか嫌いかで言うと…っていうね。非常に感情の置きどころが難しいお話でした。

あとはやっぱり上に書いた通り少々過酷なシーンがあるので、そこについてはそれなりに覚悟する必要があります。

MVA

当然のようにみなさん素晴らしかったですね。

特に主人公が善人じゃないのがすごく良いと思いました。業種が業種というのもありますが、決して「善良な市民」ではない彼が、私憤で行動していった結果自らの責任感にさいなまれるような形になる展開はお見事です。

ですが、この人にします。

ソ・ヨンヒ(キム・ミジン役)

熱を押して出勤し、悲劇に巻き込まれるデリヘル嬢。

まあとにかくものすごくお綺麗なんですよ。やっぱり同じアジア人の美人さんは欧米系よりもグッと来ちゃう気がする。こんなデリヘル嬢いたらさすがに風俗嫌いの僕でも頼みかねません。ダメじゃん。

彼女の悲劇性、か弱くて力のない一女性という立場と、そのか弱さと強さを感じさせる熱演は素晴らしいものだったと思います。撮影もしんどそうだったし。

それと犯人が普通っぽいのも良かったですね。ことさら異常者感を強調しない、いかにも普通にその辺にいる感じがリアルで。彼を演じたハ・ジョンウもまたお見事でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA