映画レビュー0604 『コングレス未来学会議』
これまた「今週末見るべき映画」で知った映画。
ポール・ジアマッティが出てる、っていうだけで観たかったんですが、「途中アニメになる」のを知ってどうもシュールすぎるんじゃないかと借りられずにいたところ、つい最近「ビデオニュース・ドットコム」で社会学者の宮台真司先生がポケモンGOを見た時にこの映画を思い出した、と語っていたのを観て、じゃあいっちょ観たかったし観てみるか、と借りてきました。
コングレス未来学会議
やっぱりシュールでしたわ…。
今回は起床直後に観たので眠くはなかったものの、想像通り、いや想像以上にシュールな時間が長かったため、我ながら最低だと思いますが、スマホをいじってセリフ見逃して巻き戻して、という映画好きの風上にも置けないクソ鑑賞をしてしまいました。申し訳ございません。今は反省している。
まあ要はそれぐらい、人によっては集中するのがしんどい展開があった、ということです。
概要からもわかる通り、主演のロビン・ライトはそのまま彼女本人の「ロビン・ライト」役として出演しています。昔の映画の話が出てきたりもして。いい加減「フォレスト・ガンプ」、観ないとね…。
今や50も目前(劇中では44と言っていましたが)となったロビンはもう盛りを過ぎた女優として、「このままではこの先オファーはない、だから今のうちに自分をデータ化して映画に出続ける道を選べ」という感じで、自己のデータ化のオファーを受けます。しかしそのためには生身の自分が今後一切の演技をしないこと、という条件が付けられていて、いわば役者として究極の選択になるわけですが、障害を抱える息子を持つ身としてそれを受け入れる、というのが前半。
しかしこの前半は、文字通り後半のネタ振りというか…彼女の「役者としてどういう選択をするんだ」みたいな葛藤は本当に些細なお話でしかなく、この「役者をデータ化する」未来に待ち受ける、人間の根幹に関わる技術革新が本題となる物語です。
そしてその人間の根幹に関わる技術を描くためにとられた手法が「アニメでの本編」になるんですが、このパートがまーーーーーーーシュールで。
現実とアニメの境目が曖昧になる、というのはまあ良しとしましょう。ただアニメになった瞬間に、周りに謎の生き物が飛び交ったりする…という過剰なまでの“アニメ界アピール”はどうなんでしょうか。アニメだからと言って想像の世界ではなく、そこで描かれる人たちは実際に生きている人たち(ロビンもその一人)なだけに、絵のタッチは別としても、世界に関してはきっちりリアルに沿って描くべきだったんじゃないかな…と思うんですが。アニメになった途端にでっかい魚が空飛んでたらイカンでしょ。リアルと地続きの世界なんだから。
…とまあそういう気に食わない点は置いとくとしても、その後「幻覚を見ているアニメの世界」に突入した辺りでもう止めどないシュールワールドと化してしまい、この辺りでもう一気に興味を失いました。
幻覚だけにシュールで当然、なんですが、それをアニメで延々と(本当にかなり長い)やられると、そもそもアニメにあまり耐性のない人間としては、集中力を維持するのが困難でですね…。おまけに絵のタッチも好きじゃなかったので、余計に辛かった。
そう、辛いんですよね。観てるのが。根本的に面白いと思えない、興味を持てない絵が延々と続く感じ。これはしんどい…。「ツリー・オブ・ライフ」のオープニングと似た感じ。
時間を測ったわけではないのでわかりませんが、感覚としては5分の2はアニメだった気がします。
やがて終盤にまた実写に戻り、物語が動くわけですが…。この実写パートがすごく良くてハッとさせられただけに余計にアニメパートが悔やまれます。ただ、アニメあっての「ハッと」だったのも事実なのでもどかしい。アニメパートは本当にうんざりするほど嫌だったんですが、それがないと実写が光らないジレンマ…。
あまりにもアニメパートが辛かったので、やっぱり全体の印象としては「つまらなかった」で終わるんですが、ただ観て損したかと言うとそういう気もしないんですよね…。なんというか、映画好きを自認するなら観ておかないといけないような、変な使命感に駆られる映画というか。それだけある意味ショッキングで、意欲的な映画であることは間違いないんだと思います。
そして描かれる近未来像というものはやはり無視できないリアリティを感じる部分もあったし、この映画とは違う形になるかもしれませんが「操る一部の支配者層と理解しないまま掃き溜めにたまる一般人」という構図は、ありがちですが実際の未来を言い当てていそうな気がして、やはり考えさせられるものがありました。
映像の奇抜さと好みに左右される面は存分にあるので、必ずしも観るべきだとは思いませんが、ただディストピア的なものに興味がある人は観ておいてもいいんじゃないかなと思います。
つまらなかったんですが、考えさせられました。自分の中での立ち位置もなかなか珍しい作品だと思います。
こう言う映画って「つまらなかった」と思いつつも忘れないものなんだよね…。
面白かったけどすぐ忘れる映画も多いだけに、どっちが良いのかという意味でもまた何か考えさせられる気がします。
このシーンがイイ!
終盤の実写に戻ったところはやっぱり良かったですね。あそこでまた一段、リアリティが増した感じ。それだけにアニメパートをもう少しうまく描いて欲しかったけど…。
ココが○
バーチャルが行き着いた未来として、あり得なそうだけど面白い世界を描いてるのは唯一無二だな、と。その導入が一人の実在する女優、っていうのも面白い。
ココが×
やっぱりアニメパートでしょうね。
この映画特有の世界観を表現する上で必要な要素なのはよーくわかるんですが、絵のタッチ含め、どうにも好きになれなくて入り込めなかった。あそこまで個性が強い絵にする必要があったのか…でもそこは監督のアイデンティティなんだろうし…となかなか歯がゆい感じ。
MVA
ポール・ジアマッティとハーヴェイ・カイテルはともにとても素晴らしかったんですが、ちょーっと出演時間が短すぎるかな、と。特にポール・ジアマッティは宣材用の写真でマイクの前にいたので、てっきりタイトルにある未来学会議で喋ってるのかと思ってたら全然違う役だったという…。哀しみ。でもすごく良かったけど。
ということで、ベタですが少し痛いところを突かれつつも頑張ったこの方にしましょう。
ロビン・ライト(本人役)
特にどこが良かった、とかもないんですけどね。
ただ終盤の実写化で見すぼらしいながら劇中もっとも綺麗に見えた不思議。なんつーか、かっこいいですね。この人は。