映画レビュー0149 『コットンクラブ』
今日も早く帰って来られたので、BS録画シリーズよりお送り致します。
。コットンクラブ
「ゴッドファーザー」-ファミリー+恋愛。
まず何よりも、ものすごく「ゴッドファーザー」っぽい。華やかな舞台のウラでギャングたちが密談してたり。ラスト手前の、サンドマンの長いソロタップのシーンなんてもう完全にゴッドファーザーでした。
そりゃそーだ。監督一緒で、気付けば原案までマリオ・プーゾと来てる。なるほど、なるほど。やっぱりこのコンビは「ギャングの時代」の描き方がウマイ。だけど…なんか物足りない。
おかしいなぁ。あの名作コンビで、描く題材も似てる、のに…。
…っと考えた結果、わかりました。
すごく簡単に言ってしまえば、この映画は「ゴッドファーザーから“ファミリー”を引いた」感じ。家族の話も出てきますが、あくまで枝葉。ゴッドファーザーほどのぶっとい幹ではありません。
そのファミリーを引いた分、恋愛をプラスしました…という感じですが、やっぱり恋愛だとどうしても“軽い”。両作の主演の二人、リチャード・ギアとアル・パチーノという、この二人の違いにもそれは現れてるかな、と思います。
どっちもまだ新人に近い若い頃の作品ですが、恐怖すら覚える変貌ぶりを見せた若き日のアル・パチーノから比べると、やっぱりどうしてもリチャード・ギアは「甘い二枚目」路線から抜けきれなくて、そのちょっと浮ついたようなイメージと裏社会の重厚さがマッチしてない感じというか。ただこれはリチャード・ギアが悪いわけではなくて、彼の役どころからしても、求められたキャラクターからしても仕方のない面があります。
結局はその「ゴッドファーザー」と今作のストーリーの違いに対して、同じアプローチをしちゃった制作側のミスかな、と。
華やかな舞台と暗躍するマフィア、それぞれの描き方は「…さすが!」と唸らされるような良さがあっただけに、その惜しさが悔やまれる映画でした。
悪い映画ではなかったけど、これを観るなら例え飽きててもゴッドファーザー観るかな…。
このシーンがイイ!
良いシーンは結構ありましたが、一つ選ぶなら「ビンタダンス」のシーン。
あのシーンは、「この映画は恋愛映画なんだぜ」と思わせる勢いがありました。
ココが○
なんだかんだ言いながらも、やっぱりゴッドファーザー好きにはたまらない場面が結構あるんですよね。その最後の方の「サンドマンのソロタップ」のシーンもすごく良かったし。ゴッドファーザー PART IIIのオペラを彷彿とさせるような。
と言っただけでゴッドファーザーが好きな人にはどんなシーンか想像できると思いますが、年代的にはこっちが先なんですよね。これを昇華させたのがあのシーンなのかなー。そう思うと感慨深いものがあります。
それと、僕がジャズ好きなせいもあるんでしょうが、「ショー」のシーンはとにかく良い。音楽も良いし、歌もダンスもレベルが高い。劇中流れるBGMの心地よさは抜群でした。
ココが×
果たして「ゴッドファーザー」を観てない人が観て良さがわかるのか、というのはすごく思いましたね。なんというか、逆に言えば僕はセルフパロディ的な楽しみ方しか見出せなかったというか…。
気合いも入ってるし良いデキだと思うんですが、前例が良すぎるが故に、どうしてもそこを突き抜けられないジレンマみたいなものが付いて回る映画だな、と。ゴッドファーザーが好きな人は観ればそれなりに楽しめると思いますが、あくまで「それなり」。
逆に好きじゃない人とか知らない人が観たら、多分描く世界の良さがわからない気がするし、そういう部分でどっちにも寄せ切れなかった悲しさみたいなものを感じます。
MVA
候補は数人いましたが、今回はちょっとマニアックな方に…。
ローレンス・フィッシュバーン(バンピー・ローズ役)
割とチョイ役で、中心人物では無いです。
役柄的には黒人マフィアのボスらしいんですが、そういう表現もされてなくて、なんかいるなこの人、的な。
ただまあこの人の知的なルックスたるやすごいな、と。まだ若いからかシュッとしててかっこいいし、とにかく頭がよさそう。「雰囲気」という意味では、一番“持ってる”感じがしました。