映画レビュー1247 『ドーナツキング』

今回はJAIHOで気になったドキュメンタリー。ちなみに無駄に4Kでした。

ドーナツキング

The Donut King
監督

アリス・グー

脚本

キャロル・マルトリ

出演

テッド・ノイ
クリスティ
チェト・ノイ
サビ・ノイ

音楽

ピーター・ローリドセン

公開

2020年10月30日 アメリカ

上映時間

98分

製作国

アメリカ

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

ドーナツキング

1冊の本を読んだかのような濃厚ドキュメンタリー。

8.5
カリフォルニアのドーナツ店の礎を築いたカンボジア難民の人生
  • なぜカリフォルニアのドーナツ店はカンボジア系ばかりなのか、その歴史を作った一人の男のドキュメンタリー
  • 戦争から逃れ、無一文の難民がいかにアメリカンドリームを掴んだのか
  • わかりやすいサクセスストーリーからその後のジェットコースターっぷりもすごい
  • アメリカ人のドーナツ好きっぷりがよくわかる

あらすじ

例によってテーマでだいぶ評価も集中力も変わるドキュメンタリーなんですが、今作は明確に当たり、しかも大当たりと言っていい面白さでした。

身近な内容でもあるし、そもそも選ばれた人物の人生が面白い(テーマがいい)だけに比較的誰でも楽しめる、オススメできるドキュメンタリーですね。

ちょっとしたあらすじ。

アメリカ・カリフォルニアにはドーナツ店がたくさんあるんですが、そのほとんど(確か95%とか)はカンボジア系の個人店になっているそうです。

かつてダンキンドーナツのような大手もカリフォルニアに進出してきたんですがうまく行かず、撤退。

なぜそこまでカンボジア系のお店ばかりなのか…その端緒となった人物、「ドーナツ王」と呼ばれたテッド・ノイを追ったドキュメンタリーです。

アメリカ人ドーナツ好きすぎ問題

カンボジア内戦で追われるように国を出て、家族を連れて無一文でアメリカにやってきたテッド・ノイが、ある日ドーナツ店と出会って修行を積み、自分の店を開いた後に同じ境遇の難民たちをサポートしていった結果、あれよあれよと難民たちのお店が増えていった…というのが前半のお話。

後半はそこから「まさか」の展開がありますが、そこは観ていただくとして…全体通してまさに「映画のような」人生に驚きました。

この映画はドキュメンタリーでご本人も登場していますが、普通に役者さんを使って実在の人物を描きました的な映画になっていてもおかしくないぐらいにもう素材が面白い。いわゆる「ブロウ」とか「バリー・シール」とかああいう話に仕上がってもいいぐらいの波乱万丈っぷり。

しかも彼が礎を築いたそのドーナツ店が、今や二世たちに受け継がれてまた別の現代的な戦いに奮闘している様も面白くて、「昔はこうでしたよ」だけではないのが素晴らしいですね。歴史を知り、今を知ることができるまさにドキュメンタリーの鑑のような映画でした。

しかもテーマは身近で親しみやすいものなだけに、眠くなるようなこともなく最後まで飽きずに観られる映画としての質の良さもあり、ドキュメンタリーとしてはかなり間口の広い映画だと思います。

またそもそも論として「アメリカ人ってこんなドーナツ好きだったの!?」という新鮮な驚きもあって、そこもまた面白かったですね。

毎日ドーナツ2つにコーヒーがデフォルトの朝食です、みたいな。毒々しい色の激甘感漂うドーナツを毎朝2つとか明らかに食いすぎだろと思うんですが、もうここまで来ると国民食なんだなと妙に感心してしまいました。

エンドロールでドーナツに関する数字がいくつか出てくるんですが、それを見ても本当にドーナツが好きなんだなぁとわかるし、自分の想像以上にアメリカ人にとって大事な食べ物なんだなと思うと、そこに食い込んだのがアジア系難民だった、というストーリーがよりすごいものに感じられるのも面白かったですね。

ドキュメンタリーにしたくなる人生

個人的にドキュメンタリーは結構中だるみすることが多くて、だからこそしょっちゅう眠くなるんですが、この映画は本当に終始興味を惹かれる内容で演出もしっかりしてるし、知識不足故にどこがどうとは言えないんですが作りとしてもかなり巧みな気がします。

そして何よりテッド・ノイその人の人生そのものがすごすぎて、これは知ってたらドキュメンタリーにしたいよなぁと思わざるを得ません。

こういう「知らなかった身近な歴史」が見えるドキュメンタリーはやっぱりたまらんな〜と思わされた一本でした。オススメ。

このシーンがイイ!

ドキュメンタリーなのでこのシーンがどうこう、っていうのは無いんですが…うんこ絵文字を模したドーナツが衝撃的で食べたかった。

ココが○

テーマとしての面白さ、映画としての作りの良さ。

ココが×

特にありません。誰が観ても楽しめるし、誰が観ても安心だし。

MVA

ドキュメンタリーなので誰とか無いんですが、まあ一応。

テッド・ノイ(本人)

すごく好々爺っぽさが出ていて良い人そうだなーと思うんですが、やっぱり若い頃はいろいろあったみたいだし、その“いろいろ”のおかげで毒気が抜けたのかな…とか。

終盤の楽しそうな表情が印象的だったなぁ。自分だったらあの人生を歩んであんな笑顔になれるのか、ちょっと想像できなかっただけに人柄が見えた気がしました。

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