映画レビュー0471 『イコライザー』
今回もまた、劇場公開作品。やっぱり映画は劇場で観るに限りますね。
イコライザー
デンゼルにサムライを見る。
予告編程度の内容であれば書いても差支えがないと思うのでその辺から書きますが、「昼はホームセンターの店員、夜は仕事人」的なコピーで語られていた主人公・マッコールですが、基本はホームセンターの店員なわけですよ。「仕事の次はまた、仕事」とかも言われてましたが、別に“夜の顔”は仕事でも無く。
簡単に言うと、ある“プロフェッショナル”だった彼は引退し、ひっそりと静かに暮らしていたわけですが、きっかけとなる出会いを経て、正義感から仕方なく“昔の顔”を出さざるを得なくなり、でもその相手が結構ビッグな相手だったためにちょっくら面倒なことになっちゃう…というようなお話です。
「普通のその辺にいそうなオッサンなのにめちゃくちゃ強い」という設定上、序盤はかなり「普通のオッサン描写」が長く、やや冗長な印象。もうちょっとテンポよくまとめられたんじゃないかなーと言う気がして、その辺は惜しい感じはありました。
ただ、設定からも「96時間」と被るんじゃないの、と若干の不安があったんですが、キャラがだいぶ違うおかげかその心配も当たらずに、全体的にはなかなか面白かったですね。
まあ、なんと言ってもこの作品はデンゼル・ワシントン演じる主人公のキャラクターに尽きます。
銃やナイフを持ち歩いているわけではなく、その場にあるあらゆるものを武器として利用し、即座に“始末”していくという、必殺仕事人のような佇まい。自分の実力を熟知しているためか、「やむを得なくなったら手を出すよ」というスタイルを貫いていて、最後まで相手に改心の余地を与えるという余裕のある感じと、「仕方ない、やるか」と自分のスイッチを押した後の迷いのない残酷さのギャップがかっこ良いんですよねぇ。
そして素早く殺した後も、最期までじっと相手を見つめるデンゼル。その目にはうっすら哀れみと怒りと悲しみが。
この目がイイ!
イイのよ!!
さっと殺してサクサク進む感じではなく、さっと殺してじっくり果てるのを待つ姿。これがかっこいい。
悪い相手を容赦なく殺してはいるものの、そこにはどことなく相手に対する敬意のようなものも感じられるし、今までの殺し屋的なキャラクターにあまり無い、哀しさを内包した強者というか。説明が難しいんですが、どことなく侍のような雰囲気があって、精神面の表現に長けたキャラクター、っていうのがすごく良かったですね。
マフィア連中とは言え、結局は一般市民でありつつ人殺しをしているわけで、そういう意味ではとても善人とは言えないわけですが、でも同僚を助けたりする姿はすげーいいやつだったりして、これぞ新たなダークヒーロー誕生か、と。キャラの良さと渋さから、十分シリーズ化も期待できそうです。
あとに残るものは特に無いとは思いますが、娯楽として楽しむ分には非常にオススメ。
このシーンがイイ!
「お前だけは例外だ」ってセリフにしびれましたが、一番良かったのはラストバトル。殺し殺されのシーンなんですが、バックにかかる洋楽と暗い室内の雰囲気とがすごくマッチしていて、これがむちゃくちゃかっこよかった。何なんだろうあのシーン。
ココが○
動と静の切り替えがここまで際立つ映画もなかなか珍しいです。基本“静”が長いのが惜しいんですが、それでもスイッチ入った後の高揚感はなかなか。
ココが×
序盤のダラダラ感は本当に惜しい。でもきっと(本編上での説明的な意味合いで)予告編込みの部分があったんでしょう。最初のバトルでの「ようやく来たか!」感は狙ってるのかもしれません。
それと、若干残酷な死体写真とかが出てきます。(それでもだいぶソフトにしてるっぽかったですが)その辺が苦手な人は少しご注意。
MVA
またもクロエ・グレース・モレッツはタマラン感じになっておりまして、彼女もやっぱりいいんですが、でもこの映画はやっぱりこの人でしょうと。
デンゼル・ワシントン(ロバート・マッコール役)
ちょっとデンゼル太ったかなーって思ったぐらい、体型とかもそんなに強そうに見えないんですが、でもなんか武道の達人的な、集中した瞬間の強さに説得力があるキャラクターなので、それもまた気にならなかったんですよね。社会派もアクションも似合う貴重な俳優さんだと思います。
そしてそういう人だからこそ、この「目で訴える」役が似合うのかな、と。本当に目が良かったんですよ。セリフより雄弁に語る目。