映画レビュー1183 『悪人伝』
今回もJAIHOですが、他のサービスでも観られるぐらいメジャーな作品です。たぶん。
悪人伝
客の求めてるものがわかってる。
- 殺人犯 vs 警察・組長連合軍
- 犬猿の仲が手を組むありがちな展開ながらマ・ドンソクが良すぎるのでOK
- エンディングもその後に思いを馳せさせる良い終わり方
- 時を経た続編が観たい
あらすじ
結構なバイオレンスっぷり、なんならグロいのも覚悟したんですが、そりゃあ確かにバイオレンスではありますが非常にエンタメに特化した形で大人なら誰でも無理なく楽しめる程度なので、非常にバランスの良い映画な気がしましたね。この辺りに最近の韓国映画のレベルの高さを感じます。
界隈では捜査が難航している殺人事件がいくつか発生しており、個々の事件のつながりは見られない…ものの熱血刑事テソク(キム・ムヨル)は連続殺人犯による犯行だと推測。しかし警察内部でもこの説は支持されず、やや孤立気味。
そんな中、暴力団組長のドンス(マ・ドンソク)が殺されかけるも返り討ちにする事件があり、ドンスは旧知の間柄であるテソクには刺されたことは言わず、裏で組員に調査させ復讐の機会を伺います。
一方捜査が行き詰まっているテソクは、ドンスが連続殺人犯に刺されたことを見抜いており、被害者で唯一生き残っているドンスを利用しようと画策しますが…あとはご覧くださいませ。
マ・ドンソクのファンサービス映画
基本的にテソクはずっとドンスを目の敵にしているため、スキあらば手錠をはめたいと思っているぐらいには犬猿の仲なんですが、まあなんやかんやあって利害が一致し“呉越同舟”で連続殺人犯を捕まえるぞ、というお話です。捕まえるというか、正しくは「先に捕らえたほうが好きにしていい」という勝負。もちろんドンスはなぶり殺す気満々です。
それこそ「呉越同舟」なんて言葉があるぐらいに古い古い、昔からある「犬猿の仲が手を組む」お話なので、特段物珍しい話ではありません。
ただ相手が連続無差別殺人犯というのはなかなか珍しい気もするし、その属性にちょっと韓国っぽさを感じないでもないかな、とか。「チェイサー」とか「殺人の追憶」とかその辺りの流れが感じられるような。
ただあの辺のしんどいお話とは違い、この映画はだいぶ娯楽・エンタメ寄りの作りになっているので、若干の重さはあれどかなり観やすく楽しみやすい映画だと思います。
ちょっと「悪人伝」というタイトルに加え、ジャケットとか場面写真がいかつすぎて身構えちゃう面があるんですが、全然そんな心配はいらないので気楽に観ちゃっていいです。
ちなみに早くもシルヴェスター・スタローンによるハリウッド・リメイクが決定しているんだとか。おまけにマ・ドンソクの役はそのままマ・ドンソクが演じるらしい…!
そう、なんと言ってもやっぱりこの映画はマ・ドンソクの魅力によるところが大きいのは間違いないです。
当然“組長”なので怖いんですが、ヤクザらしくキレどころのオンオフがしっかりしているので普段はなんなら優しそうにすら見える。っていうかかわいい。やっぱりかわいいんですよマ・ドンソクは。なにせマブリーですからね、愛称。ラブリー感すごい。
僕はしっかりとマ・ドンソクの映画を観たのは初めてなんですが、映画外の「マ・ドンソクほっこりシーン」みたいなのを頻繁に目にしていたこともあって、もう怖い役をやっててもかわいい人にしか見えないんですよね。どっちかと言うと人よりもキグルミに近いぐらいに“キャラ”化している印象があって、そして初めてちゃんと映画で観たけどやっぱりかわいいじゃん、みたいな。
作り手の方もそれをしっかり認識して利用して、そしてファンサービス的に「こういうマ・ドンソクが観たいんでしょ?」とばかりにいろんなマ・ドンソクの魅力を引き出すような内容になっているのが非常に良かったです。
ヤクザの組長って言うのがね。使い出があるというか。脅し殺しは当たり前の「怖さ」はもちろん、義理人情に厚い人間臭さも見せられるし、骨のある“漢”っぷりも見せられるし。もう美味しいところだらけなんですよね。この設定だけでも。
それでも普通のコワモテさんが演じたら普通の映画だった気がします。それを一気に「これこれー!」と観客を乗せてくれちゃうマ・ドンソクの魅力たるや…すごい。かわいい。おっさんでここまで「かわいい支持率」が高い人、世界中を探してもいないのでは…。
時を経た続編希望
あと書いておくべき情報はテソク刑事役の人が武井壮に似すぎ、ぐらいでしょうか。
やっぱり1対1ではなく2対1で、先に捕らえたほうが好きにできるというところになかなか妙味もあり、最後まで目が離せない面白さがありました。
良くも悪くも協力関係を築く形になった刑事と組長という関係、これだけで終わらせるのはもったいないので、ぜひ十数年かもしくは数十年経ったあと、テソクが出世したあとに対峙するなり再び共同戦線を張るなりのお話が観たいなと思った次第です。
もちろん組長はマ・ドンソクでお願いします。
このシーンがイイ!
エンディング好きですねぇ〜〜。「おっ、そこで終わりますか〜!」とニンマリしちゃう。
ココが○
なんと言ってもマ・ドンソク。どこまで行っても「極悪人」というタイプではないだけに悪い役をやるバランスの良さ。
これが例えば連続無差別殺人犯の方を演じていたらちょっとやっぱり違うでしょ、ってなると思うんですよね。個性が強烈すぎるが故に活かせる役を演じさせたら他の追随を許さない感があります。
ココが×
意外性はそんなにないので、良くも悪くもエンタメに終始した内容ではあると思います。ガツンと殴られるような魅力と言うよりも安心して楽しめる魅力の方。
ただそっち方面の韓国映画って少ない気もするし人に勧めやすい韓国映画かもしれません。
MVA
散々書いただけにこの人です。
マ・ドンソク(チャン・ドンス役)
暴力団組長。怖いけど根はいい人っぽい。そう見えるマ・ドンソクの良さ。
もっと他のマ・ドンソクも見たくなるぐらいに良かったです。存在感とかわいさがすごい。
一方武井壮はちょっと暑苦しかったかな〜。キャラクター自体がやや前時代的な熱血刑事、って感じでもうちょっと彼のキャラにひねりがあった方が良かったような気もします。勝手な意見。