映画レビュー0223 『ゴーストライター』
実は意外にも暇なので、GWは1日2本のペースで観てるんですが、一応出し惜しみしてボリューム感を出そうかなということで、観る&書くは休み中にやりつつも、レビューアップ自体はGW後にこぼれる予定です。どうでもいい情報でした。
さて、GW特別企画「これ観たかったんだよ」シリーズ第2弾。
「お前が勝手に特別言うてるだけやないか!」というツッコミは華麗にスルーしてお送りします。
ところでブログを更新するたびに婚活業者の広告が表示されるのは嫌がらせでしょうか。そういう検索してるわけでもないのに。さすが管理人の状況まで把握するとは…監視社会、怖いぜ。エシュロンめ。マキロンじゃないよ。
ゴーストライター
安っぽい煽りなし! 最上級、真っ向勝負のサスペンス。
いや~~~~~~~~~面白かった!!
公開当時すごく観たかったんですが、地味だなんだと公開劇場も少なく、行くに行けない無念さを噛み締めながら見送った作品。その後の評判もあんまり聞かないので、こりゃイマイチなのかな、と思いつつも観たわけですが…! すーーーーごく良かった。
自称サスペンス好きでこれが「ツマンナイ」って言うやつはもうそのサスペンス好きの看板を降ろせタコ野郎、と暴言を吐きたくなるデキ。※別にそんな人を見たわけではありません
政治音痴のゴーストライター(結局最後まで名前は明かされず)が、スター的な人気を誇った元首相の伝記を書くために彼らの別荘的なところにやって来るも、取材を進めた途端に元首相のテロ絡みのスキャンダルが発生、世間では大バッシング、内部は内部で嫁さんが旦那と側近の浮気を疑いーのの三角関係で気まずい雰囲気。飄々と「まあ俺関係ないし」なんて一歩引いてたくせに、ちょっとずつ「これ怪しくね?」と疑いを持ち始め、好奇心に抗えないまま核心へ…というお話。
まず。
このゴーストライター君のキャラがもうどうにもスバラシイ。なんというか、普通すぎる。「ただの(ゴースト)ライターのくせに超強ぇ!」とか「こいつ探偵でもないのに鋭すぎ」とか、そういう“物語的キャラ”の匂いゼロ。多分、僕が同じポジションに置かれたら、同じように進んで同じような結末を迎えていた気がします。それぐらい、ごくごく一般的な頭と好奇心を持った人物なので、とにかくストーリーに嘘臭さがない。その上、イギリス(と他2国合同)映画なので、いわゆるハリウッド的な大げさな演出も一切なし。
一歩一歩進んで、振り返ると戻れない。判断の迷いもすごく普通。気持ちがよくわかる。切れ味鋭い決断なんて下さない。流れに身を任せて、でも知りたい答えを探していく。そして最終的に…と。
これねー、なんでもないようで、実はものすごくストーリーに自信がないとできないと思うんですよね。アラを隠すのが派手な演出だったりご都合主義だったりするわけで、その辺を全部排して「普通の人が普通に推理を進めた結果」という映画に仕立てました、そしてそれが面白い、というのはかなり力量のある仕事だと思います。
これはもう、かなり自信を持って言えますね。地味ながら、すごく力のある映画だと思います。
例えば、中盤の「残っていたナビゲーション」で謎の目的地に着いたシーンとか。これ、自信のない映画なら絶対夜のシーンになると思うんですよ。無駄に不安を煽る演出。でもこの映画は昼。観客に、余計な恐怖で気を煩わせない作り。全体の展開も至極真っ当。まさかのいきなり登場「やぁ! 核心マンだよ」とかもナシ。
くどいですが、ものすーーーーーごく真っ当に作ってる。真っ当でこの結末、この後味。スゴイ。
それでまた、「ゴーストライター君」がユアン・マクレガーという配役が100点。フツーっぽいし、なんか抜けてそうだしっていうキャラクターがもう適役すぎる。これがケヴィン・スペイシーだったらもう。完全に違う映画になってます。配役の時点で「普通の人ですよ、裏切りませんよ」と告知しておいて、実際そういう内容で勝負する、この潔さ。
ところどころでちょっとした小ネタも織り交ぜ、終始ユルさも忘れない。これがまたイイつなぎになっていて、劇中の緊張と緩和のバランスが絶妙。原作&脚本のロバート・ハリス、監督&脚本のロマン・ポランスキー、このコンビは素晴らしい仕事をしましたね。ウン。「お前ら騙されるな」的な胡散臭いコピーが必要ない真っ当な映画です。
えー嘘臭いようですが、実は僕は昼休みとなると毎日政治ニュースを見て回ってるような政治オタク的な要素を持っている人間なので、この手の政治絡み&陰謀論が見え隠れ…みたいな話が大好物なのは疑う余地もなく、そういう意味では(その手の話に興味のない人は)話半分に取ってもらった方がいいかもしれませんが、それでもやっぱり、これだけ「脚本勝負」で作り切ったすごさというのは認められてしかるべきでしょう。
特濃サスペンスで大満足。ごちそうさまでした。
このシーンがイイ!
最初に伝記を読み切った時のいかにも「クソだな!」という表情だったり、鏡の前で「良くないアイデアだ」と言いつつ流されたり、ユアン・マクレガーの良さが出てるシーンが良かったですねぇ。
ココが○
奇をてらわない、観客を裏切らない作り。これに尽きます。
音楽もなんか最初は「ファンタジーっぽいな…」と違和感があったものの、最後まで観るとなんかその雰囲気が合ってる気がしてくるのが不思議。その音楽でちょっと軽さを感じさせて、「煽りません」って感じに見えたのがまた良かったんでしょうか。
そしてハリー・ポッターっぽいなと思ったら実際ハリー・ポッターの人だったという。目は節穴だけど耳は上出来だぜ?
ココが×
ナシ。断じてナシ。派手さは無いけど終始惹きつけられたし、すべてのバランスが絶妙。
MVA
「スター的元首相」がピアース・ブロスナン、っていうのがねー。もうバッチリだな、と。側近・奥さん含めて周りの配役も○。
キャスティングも文句なしですが、一人選ぶならもうこの人以外あり得ない。
ユアン・マクレガー(ゴーストライター役)
今まで観たユアンの中で、もっともハマってた役だと思います。
上にも散々書きましたが、きっと観ればその意味がわかるんじゃないかと。過去の印象すらもこの映画のためじゃないかというぐらい、「それっぽい」。さらに演技も文句なし。
もう彼も40過ぎてるんですよねー。全然見えないけど。今後もご活躍、お祈りしております。憎めない感じが割と好きです。