映画レビュー0870 『グッド・ライ 〜いちばん優しい嘘〜』
つい最近なんですが、一部ツイッター界隈で話題になったブログがあったんですね。
軽く炎上してたんですが、ただ悪い方ばっかりじゃなくて功罪両面で話題になったような感じで。「スリービルボード」の真犯人についての考察記事を載せていたブログなんですが。
僕もその記事は読みまして、考察自体はすごいなぁと純粋に感心しつつ、ただ架空のキャラを作っての掛け合い的な構成が寒いなぁと半分眠くなってました。(かなり長い)
結局は「スリービルボードに真犯人はいないしこじつけがすぎる」みたいな感じでプチ炎上したようなんですが、まあ僕としては考察自体は好きにやれば良いし別に誰にも迷惑かけてないから良いんじゃね(そもそもヘイトでもない個人ブログに難癖つける時点で違うんじゃないの感)と思いつつ、ふと「俺はこんな浅い紹介ブログやってていいんだろうか…」と我に返った部分があって。
「スリービルボード」自体、自分としてはあんまりスッキリしなくて理解しきれていないと思ったし、それ故「面白い映画だとは思うけどそんなに高評価はできないな」と思った映画だったんですが、ところが映画好きの人たちが選んだ年末のベスト10には軒並み入っていて、「自分はやっぱり映画の見方がなってないのかな…」とちょっと不安になったところにこの記事を読んでしまい、有り体に言えば僕程度の読解力で映画ブログなんて書いていて良いんだろうかと恥ずかしくなった面がありました。
まあでも即座に「自分で振り返る用だからいいか」って思い直したんですけどね。
結局、リンクを辿れるデータの作り、各種端末を使用してのアクセスのしやすさ、記録の残しやすさから「ブログ」という形態を選んでいるだけで、オンラインで誰でも見られるようになっているのは副産物的なものだよな、と改めて確認したというか。
そもそも僕は自分の読解力(と文章力)の程度はそれなりにわかっているつもりなので、シネフィルの人たちにドヤ顔でご紹介しようなんてさらさら思っておらず、自分確認用以外の価値ではどちらかと言うと「映画に興味がある」「映画は好きだけどそんなに観てきていない」人たちに伝われば良いかなぐらいのものとしか考えていないので、すごく立派に考察しているブログと比べるのも違うよな、と改めて己の立ち位置を再確認したわけです。こっちは定食屋なんだから高級フレンチと争ってもしょうがないぜ、みたいな。
この「なんプロ」はひっそりとかれこれ10年目に突入しているわけですが、なぜほとんどアクセスも無いのに続いているのかと言うと、これはもうひとえに「後々自分で(オススメ映画を聞かれたときとか)振り返るために有用」「自分の記憶に残しやすいツール」としての価値がほとんどなわけです。ご覧の通りコメントなんて年に1回あるかないか程度で交流もほとんどないですからね。
だからもう最近思うのは、実は「映画鑑賞が趣味」もそうなんだけど、それに加えて「映画鑑賞後のブログ更新が趣味」なんじゃないかみたいな。もう単純にブログ自体が趣味と化してるんですよね。構成変えたりデザイン変えたりが趣味になっているという。
で、その延長線上で今年は文章力も上げたいなと思っていて、何冊か本を読んでみようかなと思ってます。効果が出るかどうかはわかりませんが。
つらつらあーだこーだ書いちゃいましたが、もし自分の中で「映画鑑賞記録をつけたい」とか「観て思ったことを残したい」のであれば、やっぱりブログは良いと思うんですよ。ここは一応サーバーを借りているので有料ですが、こだわりがなければ無料で十分できるものだし。「有料でコレかよ」は言わない約束でお願いします。WordPressを使ってみたかっただけなので。
マネタイズにこだわるのであれば別でしょうが、基本的には人と比べるものでもないし、一言残していくだけでも映画との接し方が全然変わってくると思うので、「これから映画を趣味にしたい」と思っているような人でも気楽に始めてみても良いんじゃないかなと。
そもそも自分が始めた動機が「観た映画を記録したい」「せっかく観るならレビューを書いておきたい」というのと、逆に「ブログを書くと決めることで映画をもっと観るようになって映画鑑賞がちゃんとした趣味になるんじゃないか」という狙いだったので、そういう意味でもやっていて良かったとは思っています。
ってことでダラダラ書きましたけども、映画に限らず何らかの趣味を「趣味としてしっかり続けたい」のであれば、ブログにつけていくというのは相乗効果で続く可能性が高くなる…ような気がするのでオススメですよ、というお話です。はい。
前段がなげぇわけですが、今回もネトフリ終了間際の映画から。
グッド・ライ 〜いちばん優しい嘘〜

映画の中だけでも優しい世界で良いじゃない。
- 難民キャンプで育ったスーダン出身の若者たちがアメリカに移住する話
- 文化や価値観の違いから戸惑いつつも順応し、別れた家族を求めていく
- ややプロパガンダ臭はするものの、優しい世界に理想を目指す大切さを感じる
あらすじ
物語はスーダン内戦により親たちが死亡、集落を追われる子どもたちの姿から始まります。
「隣国のケニアなら安全だ」ということで1000キロ以上をひたすら歩き続け、途中命を落とす者や兵士に連行される者が出てきつつもなんとか難民キャンプへ到達したのはたったの4人。
彼らはその難民キャンプで生活を送り、やがて青年となった頃にアメリカによる「スーダンの孤児たちを迎え入れる事業」に選ばれ、晴れてアメリカへ移住することになるんですが…当然ながら先進国の生活や風習をまったく知らない彼らは「普通の日常生活」を送る方法すらよくわかっていない状態で、そこで就職して暮らして行くようにと言われてもなかなか難しい状況。
そんな彼らの就業斡旋を担当するリース・ウィザースプーン演じるキャリーが中心となり、「アメリカでの生活」をサポートしようとする人々と、移住してきた“ロストボーイズ”の姿を描いた映画です。
実際に行われた事業がモデル
「スーダンのロストボーイズ」というのは、スーダン内戦で孤児となった少年たちの集団を指す言葉だそうで、その彼らをモデルに、実際にアメリカで行われた受け入れ事業と絡めて物語にしたもののようです。一部では「実話」的な書かれ方をしているっぽいんですが、実話の部分はその事業とロストボーイズの存在についてであって、物語自体は創作だと思われます。
ちなみにその「ロストボーイズ」役を演じる中心人物である3人の男性はみんな実際のロストボーイズだそうで。自然な演技に見えたけど…やりますね。
みんな優しすぎて少し綺麗に描きすぎ?
そんな彼らがアメリカにやってきて、別れた家族との再会を願いつつのアメリカでの生活がテーマとなるお話なんですが、主人公である職業紹介所のキャリーはまあ主人公らしく鬱陶しそうな感情も含めそれなりにリアルな人物像で良かったと思いますが、彼女の上司であるジャックだったり役所のお偉いさんだったり、ちょーっと普通に考えると良い人すぎるんやおまへんか、というような人物像が若干のプロパガンダ臭を漂わせており、額面通りに「(この頃の)アメリカは偉いなぁ!」と感動してもいられないぜという気はしました。そこがちょっと気になった点。
特にお役所の動きが早い部分はプロパガンダにご都合主義がくっついたような印象で、話を進めるためにも仕方がないとは言え少しリアリティに欠けているような気はしましたね。
アメリカの「あの頃は良かった」映画かもしれない
とは言えこの事業の頃のアメリカは(多分)クリントン政権下、つまり民主党政権時代だし、映画が作られた頃は同じく民主党政権であるオバマ政権時代だしで、社会的に包摂の精神が優勢だったような側面はあったんでしょう。今の大統領じゃ絶対こんな事業もやらないでしょうからね。ただ映画としては“今だからこそ作られる”可能性は逆に高いのかもしれませんが。「ペンタゴン・ペーパーズ」のように。
たかだか4年程度でこの話が「あの頃は…」と語られるぐらいに今と様変わりしてしまったのがまたいろいろと考えさせられるところでもあり、映画の面白さ云々以外の価値も生む辺りが興味深いところ。
優しい社会派映画が観たいときに
嫌なヤツも出てこないし全体的にとても温かくて良い映画なのは間違いないと思うんですが、ただあまりにも綺麗すぎるし序盤の難民フェーズが長い割にアメリカに来てからの適応フェーズがあまり描かれなくてあっさりしていたりして、もうちょっとメリハリをつけて(アメリカに来てからの)しんどい部分を観たかったような気はしました。そこが無かった分、余計にプロパガンダ臭を感じたのかもしれません。
ただこれは裏を返せば「観ていてしんどいような部分があまりない」ということでもあるので、ほっこり優しい気持ちになりつつ社会派映画を観たい、というような時にはなかなか良いチョイス足り得るのではないかと思います。
ということであえて物語の根幹の部分はほとんど触れないでおきましたが、タイトルの「いちばん優しい嘘」は何なのか、ぜひ観て確認して頂きたいところですね。
このシーンがイイ!
ジャックがマメールの話を聞くシーンですかね。あそこが一番グッと来た気がする。
ココが○
日本にいるとなかなか難民の実際のところはわからないので、世界で何が起こっているのかがわかるという部分だけでもこういう映画はとても価値があると思います。なので一応ヒューマンドラマではあるんですが、実際は社会派映画の意味合いの方が強いかもしれないですね。
ココが×
序盤の難民フェーズがちょっと長いかなぁという点と、上記の通り「ちょっとアメリカを綺麗に描きすぎ」かな、という点。もっといろいろ苦労があるはずだし、それを見せないと最後の盛り上がりももったいなくなっちゃうんじゃないかな、と。
MVA
ロストボーイズ側の主人公、マメールを演じたアーノルド・オーチェンがとても優しそうかつ聡明な雰囲気があって、まさか本当のロストボーイズだとは思いもせず…良かったです。
が、今回はこの人に。
コリー・ストール(ジャック役)
キャリーの上司のハゲ。
最近ちょっと観る機会が増えたコリー・ストールですが、人格者っぽい雰囲気がなかなかマッチしていて良かったですね。この人は見た目が目立つ分、良い人役の方がギャップがあって良いのかも。
主人公を演じたリース・ウィザースプーンもあんまり好きではないんですがこの映画ではなかなか良かったと思います。すごくいそうなその辺のキャリアウーマン感が。
今ふと思ったんですがキャリアウーマンって死語なんですかね。怖いですね。