映画レビュー0749 『グレイテスト・ショーマン』

「あのラ・ラ・ランドのスタッフが贈る」という宣伝文句でちょっと尻込みしつつ、でも恋愛話じゃなさそうだし良さげだしってことで観に行って参りました。

IMAX 2Dにて鑑賞。

グレイテスト・ショーマン

The Greatest Showman
監督
マイケル・グレイシー
脚本
ビル・コンドン
ジェニー・ビックス
音楽
ジャスティン・ポール
ベンジ・パセック
公開
2017年12月20日 アメリカ
上映時間
105分
製作国
アメリカ

グレイテスト・ショーマン

勤め先の倒産によって仕事を失ったバーナムは、新しく博物館をオープンさせるも客の入りは芳しくなく、貧困に喘いでいた。しかしある日娘が言った一言からヒントを得て「奇人変人」を集めたショーを開くと、瞬く間に評判になり…。

化粧上手な映画。

8.0

僕はこれを観たあとに調べるまでまったく知らなかったんですが、この物語は実在した興行師、P・T・バーナムを主人公にした実話…のようでだいぶ事実とは違うお話のようです。「あのP・T・バーナムの半生を(良くも悪くも)ミュージカル調に美化した物語」という感じでしょうか。

そのバーナムさんを演じるのはヒュー・ジャックマン、幼馴染で奥さんのチャリティを演じるのはミシェル・ウィリアムズ。夫婦は娘2人にも恵まれ貧しいながらも幸せに暮らしていましたが、上流階級出身の奥さんに苦労させっぱなしで忸怩たる思いを抱いていたバーナムは、会社倒産で無職になったことを契機と捉え、自らの名を冠した博物館をオープンさせます。

しかしこの博物館もまったく流行らず、いよいよお金もないしヤバイぞ…ってところで娘2人の「(見せ物が)生きてないとダメよ」的なアドバイスにひらめいたバーナムは、日々世間はおろか家族にまで差別に晒されていた様々なマイノリティの人たちを集め、彼らとともに興行を開始します。これが評判となってお金も入ってくるわけですが…以降割愛。

まあ話の筋はそういう感じなんですが、やっぱりこの映画はミュージカルなので、話自体は二の次…とまでは言いませんが、一番の見せ所はやっぱりミュージカルシーンなわけですよ。宣伝もそれを推してたわけだし。

物語自体について考えると、やっぱりいろいろとアラはあったと思います。「そもそもバーナムってこんな良い人じゃない」みたいなご意見もかなり見ましたが、まあその辺は僕は知らなかっただけに特に気にならなかったとは言え、でもやっぱりところどころ「うーん」と思うところはありました。一言で言えば掘り下げ不足感みたいなものでしょうか。それ描くならもうちょっとそっちの話を見たかった、とか。

ただね、もうミュージカルシーンが圧倒的に良いんですよ。良いわけ。これが。で、歌もうまいわけ。

あえて比較する必要もないんですが、一応書いておくと「ラ・ラ・ランド」は主演2人(どっちも好きですが)の歌がそこまで響かなかったのもちょっと残念だったな、と改めて思ったぐらいにこの映画は歌が良い。

ヒュー・ジャックマンは相変わらずめちゃくちゃうまいんですよ。特に高音の伸びが素晴らしい。おまけに動きもキレッキレでダンスもめちゃくちゃうまい。さすがですね本当に。もう見るからにスターでしたよ。ヒュー・ジャックマン。同じヒューでも我らがおヒュー落ちぶれ役者がお似合いですからね。全然違う。

難航していた製作状況を歌一つで好転させたというカーラ・セトルも噂に違わぬ素晴らしさで、とにかく歌とダンス、要はミュージカルシーンの力が素晴らしい映画だと思います。

また同じミュージカル映画の「シカゴ」を彷彿とさせるような、場所・時間・状況の転換をうまくミュージカルに絡めてテンポよく展開する見せ方がとても巧みで、ミュージカル面での演出においてはかなりレベルの高い映画ではないでしょうか。奥さんとカーテンのシーンなんてハッとするぐらい美しくて。とにかく見せ方上手。

おまけに「ラ・ラ・ランド」では物足りないと感じたそもそものミュージカルシーンの長さ(数)についても、この映画はかなりミュージカルに比重が置かれているので「ミュージカル腹」も大満足というのも良かったです。これでまた歌のシーン自体が少なかったらかなり不満を感じていたかもしれません。

ということで観終わったあとはかなりの満足感が残る良い映画…ではあったんですが、やっぱり振り返るとストーリー的な不満がいろいろ頭をもたげてしまったのも事実で、早い話が「とても化粧のうまい映画」だったな、と。

批評家にはあまりウケが良くないものの口コミで広がった、という経緯もこの辺が関係していそうな気がします。歌と踊りの良さで圧倒させる力強さはあるものの、中身がやっぱり薄っぺらいのは残念ながら事実だと思うので、そこの辺りを見透かす(もしくは重視する)人であれば評価は落ちるだろうし、熱量で圧倒されて「なんかすごいまま終わった」みたいに浸れる人は評価が高い、みたいな。で、往々にして前者は批評家的な人に多いだろうし、後者は一般人に多いだろうしっていう。

僕は娯楽としては別に間違ってないと思うんですよね。ミュージカルありきでネタ元としてバーナムを持ってきたと考えるのであれば、これは(いろいろ不満はあれど)よく出来たエンタメだと思うんですよ。逆にバーナムを描く上でミュージカルを利用しましたとなると、掘り下げ不足だし良いように描きすぎだしどうなんだ、みたいな見え方がするのもまたよくわかるんです。

僕が見ている限りでは、バーナムその人を知っているか否かでだいぶ評価が分かれているようにも見えました。知らない人は素直に受け止めて「最高!」ってなってるし、知っている人はいろいろ違和感が出て「歌は良いけど…」みたいな感じ。僕にとっての「アビエイター」がそんな感じだったので、その気持ちもよくわかります。

ただ僕はもうひたすら「ヒュー・ジャックマンすげぇなぁ」と感心してたらあっという間に終わっちゃったような感じだったので、結局化粧の綺麗さに騙されて興奮して抱いて翌日よく見たらそうでもなかったけど後悔してないぜ、みたいな最低の男的な感想になるでしょうか。

ただ上にも書いた通り、ミュージカルシーンの演出の巧みさは一見の価値があると思うので、細々と不満は出るかもしれませんが観て損はない一本だと思います。

ネタバレスト・ショーマン

特にネタバレで語る何かがあるほどストーリーについて考察したくなるようなお話でもなかったんですが、一応。

ジェニー・リンドとの(男女を匂わせる)一件は完全に創作のようで、でもまあ浮気してないしイイんじゃねと思って観ていたんですが、ある人が「あれじゃあ奥さんがただヒステリックなだけで健気な妻像もぶち壊し」的なことを言っていてなるほどなーと思いました。確かにそうだわな。

奥さんの献身性はとても素晴らしかったですが、出て行った割に和解があっさりだったのも少々気にはなるところ。テンポを重視したのかなと思いましたが。

このシーンがイイ!

ミュージカルシーンは本当にどれも素晴らしかったです。まさに圧巻。

中でも一つ挙げるとすれば…一番“圧巻感”の無い、バーでのフィリップとのやり取りのシーンでしょうか。あの二人の掛け合いがすごく楽しくて。

ココが○

ミュージカルシーンは本当に(略)。見せ方がウマイ。とにかくウマイ。歌も良い。また歌自体ソロより複数で歌うものが多かったのが良かった気がします。やっぱり圧倒される感じがして。

ココが×

やっぱりストーリーはどうしても二の次感がありました。ただミュージカルを押し出せば押し出すほど語るのが辛くなる面はあると思うので、割り切ってミュージカルに注力した作りは正解だったとも思います。

なのでミュージカルではないもっとリアルなバーナム物語を別の映画で作ってもらえればいいんじゃないの、と。

MVA

スパイダーマン:ホームカミング」のときはまったく引っかからなかったゼンデイヤなんですが、まーかわいかったですね。かわいいというかセクシーというか。良い役でした。

ミシェル・ウィリアムズの健気な奥さんも柔らかい雰囲気がとても良かったし、出場時間は短めですがレベッカ・ファーガソンのハッとするような美人っぷりもめちゃくちゃ良かったんですが、とは言えやっぱり。

ヒュー・ジャックマン(P・T・バーナム役)

本当にスターですねこの人は。良すぎました。そりゃヒュー・ジャックマンが歌って踊ればどんな胡散臭い人間でも許しちゃうよね的な説得力。

あとはやっぱり改めて歌のうまさって大事だなぁと思いましたね。もう一度「レ・ミゼラブル」を観たくなるような、そんな説得力のあるミュージカルアクターぶり、お見事でした。

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