映画レビュー0395 『Dr.パルナサスの鏡』

ご存知ヒース・レジャーの遺作となった作品。

監督を務めるテリー・ギリアムの代表作と言えば「未来世紀ブラジル」ですが、これがあんまり自分にはしっくり来なかったこともあり、またこの映画自体「よくわからん」、という評判を耳にすることが多かったので、若干観るのを渋りつつもあまり期待せずに鑑賞しました。

Dr.パルナサスの鏡

The Imaginarium of Doctor Parnassus
監督
脚本
テリー・ギリアム
音楽
ジェフ・ダナ
公開
2009年10月16日 イギリス
上映時間
124分
製作国
イギリス・カナダ

Dr.パルナサスの鏡

かつて悪魔との賭けに勝利し、不死の命を手に入れたパルナサス博士だったが、その代償として自分の娘を16歳の誕生日に悪魔に引き渡す約束をさせられ、苦悩していた。そんな中、博士は「中に入った人物の希望の世界をつくり上げる鏡」を使った興業で生活を送りながら、ある日橋に吊るされ死にかけていた若い男を助ける。助けられた彼は博士の興業を繁盛させるのだが…。

映像と世界観だけでホレる。

9.0

口コミ通り、かなり人を選ぶ映画だと思います。実際僕もこの手の映画はあまり好きではないし、「だから何が言いたいんだ!ヽ(`Д´)ノ」みたいに言いたくなりそうな部分もありましたが、そういうのをすっ飛ばす世界観が最高でしたね。正直、自分がファンタジーにここまで惹きつけられることがあるとは思いませんでした。

独特の世界観、果てしない虚構の世界の中に人間の性(さが)を描き、風刺っぽく人間と人間社会を語る映画とでも言いますか…。紛れもなく「これは映画だ」と思えるようなトランス感が最高です。夢を見せてくれるような、でも中身が空っぽではない風刺の味付けは趣深いですねぇ。

タイトルの「Dr.パルナサスの鏡」というのは、パルナサス博士が生活の糧としてやっている見世物小屋のメインアイテムで、この鏡の中に入って行くと入った人の希望・夢の世界を現実として見せてくれます。

僕が入ったらおそらく童顔地味かわいい系ミニスカニーハイ白パンツ着用アラサーだらけのエロい世界になることは間違いないですが、要はそういうアイテムです。

ただ「いいものだけ」というわけではなく、この辺は悪魔との契約のせいなんでしょう、途中で鏡に入った人に選択を突きつける場面が出てきます。

オープニングで言えば、泥酔した若者が中に入るんですが、彼は知らない場所に迷い込んだ恐怖からか「もう一滴も酒は飲まない!」と誓います。その直後、正面には登るのが困難な「酒を飲まずに生きていく道」、背後にはすぐ行ける楽しそうなバーがあり、彼は当然のように誘惑に負けてバーへ行き、酒を頼んで“悪魔の手”に堕ちます。

そんな「パルナサス博士と悪魔のどちらが自陣営に人を招き入れることができるのか」が賭けの内容になっていて、はてさて最終的には娘を悪魔に引き渡さずに済むのかどうか、博士は悪魔との賭けに勝てるのかどうか、というのを、娘やら助けたトニーやら最初から助手として働いていたアントンやらが絡みつつ物語が進んでいく…というお話です。

まずそのオープニングの若い男の話にしてもそうなんですが、映像に独特の魅力があり、また広大な世界を引きの画で見せてくれるので、呆然とするような迫力があります。もう映像自体がすごくイイ。

で、しばらくその「鏡の中」の世界が出てこないんですが、そのせいでちょっと飢えるというか、「も、も…もっと鏡! か…鏡の中をミセロ!!」と危ない感じで欲求が高まってくることウケアイ。

後半に出てくる鏡の中の世界は悪魔との賭けのキーになる物語なんですが、そこで急逝したヒース・レジャーの代役として3人の役者がそれぞれ登場します。最初はジョニー・デップ、次がジュード・ロウ、最後がコリン・ファレル。

最初のジョニー・デップなんて変わったのかどうかも半信半疑になるぐらい雰囲気が近いんですが、段々とヒース・レジャーの面影が無くなっていって、最後のコリン・ファレルなんてカンペキ別人です。でも、それがおかしいとか違和感を感じるわけではなく、「鏡の中は空想の世界」だけに顔が変わってもあんまり気にならないし、物語の進行上も「段々トニーが別人(記憶喪失から元に戻る)になっていく」過程のようにも取れるので、全然気になりません。別にヒース・レジャーが生きていたとしてもこうなってもおかしくないような感じで。やむなくこうしたようですが、なかなかこれはこれで逆に面白いし、こういうことがなければこんな贅沢なメンバーも出てこないだろうというのもあって、その辺りも不思議な魅力のある映画だと思います。

ちなみにこの3人はヒース・レジャーのお友達だったらしく、出演料は全員、ヒースの娘さんに寄付したんだとか。泣ける。

ストーリーそのものに関しては、風刺がきいてはいるもののあんまりビシっと「コレだ!」というような力強いメッセージがある感じではない…と思いましたが、これはおそらく僕が深く見られてないせいのような気がします。多分、裏にはかなり深いメッセージがあるんでしょう。自分はボンクラなのでわかりませんでしたが。

そんなことよりも、この世界観と映像がすごくよくて、そのオリジナリティだけでもイイ! と惹き込まれる映画でしたね。

ナカナカこういう映画は合わないんですが、あまり今まで感じたことのない不思議な魅力を感じて、見終わったら素直に「面白かったなぁ」と思ったのでやや評価を高くしましたが、ただ最初にも書いた通りかなり人を選ぶ映画だとは思います。

でも絵をみるだけでも楽しめる人は楽しめると思うので、気になる人は一度観てみるといいんじゃないでしょうか。ストーリーについてはあとからアレコレ考える、っていうぐらいでいいと思います。

今回はBSの録画で観たんですが、これはブルーレイで観てみたいかも。マンガとかでもよくある天使と悪魔の囁き、「ダメだよそっちは。君は良い子じゃないか」「んなこたぁねーよこっち行くと気持ちいいぜ」みたいなやり取りを映像化した感じ、面白かった。

このシーンがイイ!

鏡の中シーンはどれも良かったですね。

現実についても、すごくレトロな馬車のビジュアルが好きだったなぁ。

一番、となると難しいですが、悪魔と娘のダンスシーンかな。なんかよかった。

ココが○

雰囲気と映像を除けば、博士と悪魔の関係性が好きですね。まさに腐れ縁、って感じで。「悪魔」とは言っても極悪な感じではなく、憎めないキャラで。この二人はどっちも死なないだけに、永遠に賭け続ける悪友みたいな存在なんでしょう。

ココが×

物語については「難解」というわけでもなく、「何を言いたいのかわからない」ややフワフワした感じがあって、それがイマイチ、って思っちゃうのはわかりますねぇ。

ただそんなのが気にならないぐらい他が良かったと思います。

MVA

役者陣も非常に良くてですね。

娘役のリリー・コールのあどけないかわいさも良かったと思いつつ、今回はこの人に。

トム・ウェイツ(Mr.ニック役)

悪魔の方。

まさに人を喰ったような感じ。この人とクリストファー・プラマーの味わいがすごく良かった。

ヒース・レジャーは言っちゃなんですが普通でした。でも外のシーン全部撮り終えてて良かったですよね…。外も別の人となるとムリがあるので、多分ヒース・レジャーのシーンは全カットされていたんじゃないかと…。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA