映画レビュー0506 『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』

2週連続の劇場公開作品。

かつて「エニグマ」のレビューにも書いた通り、エニグマ解読そのものの歴史について興味があったので観に行ってきました。

タイトル的には息もつかせぬ頭脳戦でテンション高く展開するサスペンス的な戦争映画なのかな、と思ってましたが、果たして…。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

The Imitation Game
監督
モルテン・ティルドゥム
脚本
グレアム・ムーア
原作
『Alan Turing: The Enigma』
アンドリュー・ホッジス
音楽
公開
2014年11月14日 イギリス
上映時間
114分
製作国
イギリス・アメリカ

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

第二次大戦当時、世界で最も解読が難しいと言われたドイツ軍の暗号「エニグマ」解読に情熱を注いだ、一人の天才数学者アラン・チューリングの物語。

想像以上に哀しい物語でした。

8.5

エニグマ解読と言えば前に観た「エニグマ」を思い出すわけですが、これが実はまったく思い出せないほど内容を忘れておりまして。思い出すのに思い出せない、という禅問答のような己の頭脳、もしやこれこそがイミテーション・ゲーム…! とかくだらないこと言ってないでですね。感想をば。

もうまた2週連続で文句言いたくないんですが、やっぱりこの副題「エニグマと天才数学者の秘密」ってすごく余計だと思うんですよね。なんというか、この副題のおかげですごく安っぽく、軽くなっちゃってるんですよ。「○○の秘密」ってタイトルがもう軽いじゃないですか。「未亡人の秘密」とかもう絶対エロじゃないですか。

こういう浅はかさが見える邦題の付け方、本当にいい加減にして欲しいわけですが、そんなタイトルから受ける“軽さ”、娯楽っぽい雰囲気とは裏腹に、とても真面目で、最後はとても哀しい気持ちになるようなほろ苦い伝記映画と言った内容でした。

そう、暗号解読のサスペンスを期待して観に行ったわけですが、そういう部分も語られるものの、それよりもっと広い、主人公アラン・チューリングの人生がメインという感じ。

“あの”エニグマ解読に最も貢献した人はどういう人物で、どういう人生でそこに至り、そしてどういう最期を迎えたのか。そんな一人の人生を、エニグマという強大な敵を通して描き出した映画とでも言いましょうか。

サスペンスよりも人間に寄ったストーリーは人によっては「期待外れ」になりかねない気がしましたが、僕としてはむしろ嬉しい誤算で、想像以上に深い映画ですごく面白かったです。

もちろん、彼一人ですべてを成し得たわけではないので、同じチームの仲間であったり、大切な人物との関わりも描かれていたり、“伝記もの”として過不足のない作り。

割と人間関係だったり、その進展の仕方であったりは定番とも言える内容だったりするんですが、やっぱり何と言っても実話ベースで、実在する人物の話というのが大きいですね。

お恥ずかしながら、僕自身エニグマの存在は知っていても、その解読に多大な貢献をしたアラン・チューリングという人は知りませんでしたが、その人がまさか現代人にとって無くてはならないアレの原型を生み出した人だったとは…驚きと同時に、当時の(差別的な意味合いを含めた)社会情勢を思うと、やはりいろいろ考えさせられざるを得ません。

そんな「考えさせられる」展開が盛り込まれているからこそのまさかの涙も流したりして、いやはや思っていた以上にいろいろ考えさせられる映画だったな、と。やはり実在する人物である以上、脚色の部分であったり、表現の仕方に若干異論が出ている面もあるようですが、僕としては、描き方次第ではもっとセンセーショナルでドギツイ内容にも出来そうだったところをあえて控え目にして、誰にでも観やすい形にまとめたのは良かったんじゃないかなと思います。

これだけの功績を残した人が、どういう人生を辿り、そして後世どう評価されたのか、それを知るという意味でこの映画はとても真面目に観やすく作ってくれているのが良いと思います。この辺り、やはりイギリス映画的な味わいが大きいのかもしれません。

こういう「(後につながる)知らなかった世界の事実」的なものを知ることが出来るという点だけでも観る価値があるし、その上よく出来ていて面白いという。やっぱり映画っていいなと思った2時間でした。

ぜひ、劇場で。オススメします。

このシーンがイイ!

ラストシーン、劇伴の盛り上がりと字幕で語られる後日談。あの後味はやっぱりなんとも言えないたまらなさがありました。バックで流れる映像がまたすごく良かったです。

ココが○

初めて観る監督さん(英語作品自体初らしい)でしたが、キャリアが短いとは思えないほど、熟練っぽい演出で素晴らしかった。

それと、暗号解読の話はきちんとありつつも、「その後」も丁寧に描かれていたのがこれまた良くて、「エニグマ」というメジャーな素材に頼りきらずにきっちり歴史と人物を描こうとするストーリーは文句無しですね。

ココが×

今回もまた、邦題のセンスがドゼロと言わざるを得ないわけですが、それ以外は…特に無いかな。少し仲間との信頼関係の構築の部分を端折ってる気はしましたが、あんまり丁寧にやられても長くなりすぎるし、まあこんなもんでいいんでしょう。

とかくこの手の伝記ものは長くなりがちな気もしますが、長すぎず短すぎず、きっちり描いて約2時間、お見事です。

MVA

カンバーバッチはあんまり好きではないんですが、でもさすがアカデミー賞にノミネートされただけあって、まったく文句のない素晴らしい演技でした。特にラスト近くの演技はすごく良かった。キーラ・ナイトレイはメイクが濃すぎる気がしたのが残念。

本当はカンバーバッチでいいと思うんですが、個人的な好みもあって、こちらの方に。

マーク・ストロング(スチュワート・メンジーズ少将役)

当時のMI6長官役。

この人、この手の役が多い気がしますが、それも納得の「画面が締まる」感がスゴイ。あの雰囲気は代えがたいものがありますね~。今回も良かった。

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