映画レビュー1408 『ザ・インタープリター』

今年1発目のなんプロアワードに書きましたが、引っ越し前のブログから唯一移植漏れした欠番の映画がこの映画で、「観る予定はない」と言いつつアマプラで終了間際のラインナップにあったのでなんか欠番も気持ち悪いし改めて観直すか…とまさかの再鑑賞しました。そこまでの映画でもないんですが…。

あとどうでもいいけど正確には「ジ・インタープリター」なんじゃないの?

ザ・インタープリター

The Interpreter
監督
脚本
原案

マーティン・スティルマン
ブライアン・ウォード

出演

ニコール・キッドマン
ショーン・ペン
キャサリン・キーナー
イェスパー・クリステンセン
イヴァン・アタル
クライド・クサツ
シドニー・ポラック

音楽

2005年4月22日 アメリカ

公開
上映時間

129分

製作国

アメリカ・イギリス・フランス

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

ザ・インタープリター

二転三転する主人公の立ち位置の描き方がお上手。

8.0
国連通訳が偶然耳にしてしまった要人暗殺計画
  • ヤベー話を聞いてしまった国連通訳と彼女を護衛するシークレットサービス
  • 最後まで主人公が信じきれない立場の曖昧さが◎
  • シークレットサービスが捜査もしたりで意外と新鮮
  • しかしニコール・キッドマンが美人すぎて話が入ってこない

あらすじ

前回いつ観たのかは記録に残っていない以上当然記憶にもないんですが、このブログ(なんプロH)への引っ越しが確か2017年なので(もう7年経ってるのかマジカヨ)、最低でも前回鑑賞から10年は経っていると思いますが…しかしほとんど内容を覚えていないのでもうほぼ初鑑賞ぐらいの感覚で観られました。記憶力の悲しさ。

アフリカのマトボ共和国にあるスタジアム廃墟でなんかヤバい事件が描かれたその後──。

マトボで育ち、同国の言語であるクー語ネイティブのシルヴィア(ニコール・キッドマン)はその能力を活かして国連の通訳として働いておりますが、忘れた荷物を取りに戻ったある夜、ヘッドホンからヒソヒソ話し声が聞こえてきたもんで聞いてみたらマトボの大統領を暗殺する計画の話し合いの最中だったようでこれはヤバい、ということで急いで家に帰りますが、その後周りで不穏な動きが発生。

結局彼女にはシークレットサービスが護衛につくことになり、その中心人物であるトビン(ショーン・ペン)からいろいろ根掘り葉掘り聞かれますが彼女の証言はあまり信用されておらず、どちらも不信感を抱く形で“決行の日”まで守りを固める形に。

その後も不審な出来事が相次ぎますが、トビンへの相談もなしに独断で行動し、さらに“過激派”っぽい過去もあってやはりシークレットサービスは彼女を信じきれない状況の中、いよいよ問題の日が迫ってきますが…あとはご覧くださいましよ、と。

社会派サスペンスの良さ

忘れたから観直したのにその後忙しくてレビューを書くのが遅れてしまい、さらにまた忘れかけているというダメ人間街道まっしぐらの状況でお送りしております。でもまあそこそこ覚えてるしさ。

冒頭のスタジアムの風景は明確に覚えていたんですが、上記の通りその後の展開はまるで覚えておらず、自分でもびっくりするぐらい新鮮に観られました。そして記憶にあった印象よりも全然面白かったですね。

一人の国連通訳が耳にした暗殺計画が真実か否かわからないまま護衛しなければならないシークレットサービスと、そんな「信用されていない自分」もお構いなしに自分の理念に従って行動する主人公(ニコール・キッドマン)のお話なんですが、この主人公がなかなかいろいろ設定を持っていてそれを小出しにしてくるので最後の方まで「こいつ怪しくない?」が続く引っ張りっぷりが面白い。そりゃ振り回される方(ショーン・ペン)も大変だわなと思いつつ、でも主人公は主人公で思惑があり、それによって二転三転するサスペンスっぷりはあんまり他にない形のような気もするし、これは(記憶に残っていた感覚よりも)意外と良作なのでは…と。

なお普段は許可が降りない国連内部で撮影がなされた相当レアな映画らしいです。

ジャンルとしてはいわゆる「社会派サスペンス」なんですが、最近あんまりこの手の「創作だけど社会派」な映画も少ない気がするし、この辺大好き人間としてはもっと観たいぜと改めて思いましたね。「フィクサー」(ちなみに監督のシドニー・ポラックが出演だけしてます)とか「消されたヘッドライン」とか「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」とかああいう系の。史実の出来事が背景にはあるものの「マージン・コール」もそこに入れても良さそうです。

印象としては実話系が増えてその分創作が減ったような気がしているんですが、自分が知らないだけなのかもしれないし本当のところはよくわかりません。あとは日本では地味に思われてあんまりヒットしないとかもありそう。面白いのにさ…!

この映画はシドニー・ポラックの最後の監督作だそうで、ポラックの死が社会派サスペンスの退潮に拍車をかけた…とかなんとかしたり顔で言っておりますが別にポラックもそういう映画ばっかりだったわけでもないという噂。でも今思えば「トッツィー」なんてちょっとジェンダー的に面白い視点で見られる部分もありそうで、その意味では社会派コメディだったのかもしれない…。

ちなみに「社会派映画の巨匠」と言えば僕の中で真っ先に名前が挙がるのは同じシドニーさんであるシドニー・ルメットなんですが、ルメットはポラックの3年後の2011年に亡くなっており、遺作である「その土曜日、7時58分」はこの映画の2年後公開なので、その辺を踏まえると十数年前あたりから創作社会派→実話系社会派映画への転換が進んでいたのかもしれない…とこれまたなんのソースもなくいい加減に想像している次第です。

ぶっちゃけ実話系の方が元の話がある分作るのも楽そうな気がするんですよね。映画制作の大変さは変わらないでしょうが、0から1にする作業という意味では。

速く、確実な成果という意味でも実話系の方が諸々読みやすいだろうし、なんというか…他にも(ゲームとかでも)目にするような“無難な作り”を求めるが故にこの手の創作系社会派映画が減ってきちゃったのかな、なんて思いますがどうなんでしょうか。

文化のためにももっと作って

ちょっとこの映画自体の話からはだいぶ逸れましたが、ある意味では時代を感じるような「気付けば最近こういう映画減ったな」とふと思わされる映画という意味で久しぶりに観た甲斐があったなと思います。

映画も当然流行り廃りはあるだけにその流れの一つでしかないと言えばそうなのかもしれませんが、今回再鑑賞して「思ったより面白いぞ」と思ったと同時に「作る手間の割に絵面は地味だし大して稼げなさそうだから減ったのかな」と思ったりもしたよと。

ただ裏を返せばこの手の「手間がかかる地味なオリジナル社会派映画」が減ると結局残るのはスーパーヒーローモノか展開がベタすぎる話かの二択が大半になりそうな気もして、それこそが今の自分が感じている“ハリウッド飽き”につながってるんじゃねーのとこれまたソースもなく印象でダラダラ書いている次第です。

やっぱりこういう映画をある程度生み出していかないと、文化としては深みが出ないように思うんですが…そんな殊勝なこと、誰も思わないんでしょうね。

このシーンがイイ!

詳細はぼかしますがニコール・キッドマンがベンチで涙するシーン。ショーン・ペンも合わせて良かった。

ココが○

架空の話とは言え、今の国際情勢的にも置き換えられるリアリティがあり、この点は割と将来的にも腐らなそうな普遍性が有りそうな気がします。良く出来てる。

あと「護衛」のみの印象が強いシークレットサービスが捜査もしてたりと、シークレットサービスの見せ方としてもあまり他にない形なのが新鮮でした。FBIとかと揉めそうだけど実際はどうなんでしょうね。

ココが×

やっぱりどうしても地味になってしまうところでしょうか。それはそれで良いと思うんですけどね。

MVA

みなさんさすがにレベルが高いんですが…無難にこの人かなぁ。

ニコール・キッドマン(シルヴィア・ブルーム役)

主人公の通訳。ただ何か隠してそうな感じも強い。

最後まで主人公らしからぬ「信じきれない怪しさ」もあってなかなか面白いタイプの主人公だったのが良かったですね。演技も文句無し。

ただ一方で当時30代後半の彼女はその美貌がピークじゃねーの、ってぐらいに美人すぎて話が入ってこない難点もありました。ビジュアルが強すぎる。まあそれだけ「強い女」感が似合ってもいたんですが。

まーお綺麗でしたね。今さらですけど。

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