映画レビュー1196 『透明人間』

今回はウォッチパーティより。細かい話ですが今回はクソデカで観られないか試行錯誤した結果、Macの画面をTVに飛ばす方法で観ました。が、結構荒れちゃうので多分もうやりません。

これもタイトルは知っていましたが自分ではまず選ばない映画なので、こういう機会があるのは本当にありがたい限りです。

透明人間

The Invisible Man
監督

リー・ワネル

脚本

リー・ワネル

原作

『透明人間』
H・G・ウェルズ
『透明人間』
ジェイムズ・ホエール

出演

エリザベス・モス
オルディス・ホッジ
ストーム・リード
ハリエット・ダイアー
マイケル・ドーマン
オリヴァー・ジャクソン=コーエン

音楽
公開

2020年2月27日 オーストラリア

上映時間

124分

製作国

アメリカ・オーストラリア

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ ウォッチパーティ(iMac)

透明人間

ホラーからのサスペンス、からの…で大満足。

9.0
死んだはずの元恋人が透明人間になって追ってくる
  • 束縛の激しい天才科学者の元から逃げ出した女性、直後から感じる違和感
  • 元カレは自殺したと言われたものの…
  • 前半ホラー/後半サスペンスとしてどちらも上出来
  • エリザベス・モスの演技力がお見事

あらすじ

この手のホラーは大体「グロいかもしれないし」と思って観ないことが多いんですが、今回はウォッチパーティ開催に伴って確認したところ「グロくないよ!」とのことで観たらこれがまあ傑作でして、改めてこういう機会を作ってもらえてありがたいぜと思った次第です。

物語冒頭は、とある豪邸の夜から。一緒に就寝中の男女のうち、セシリア(エリザベス・モス)と言う女性の方だけベッドから抜け出し、彼を起こさないように慎重に部屋から、そして豪邸から脱出を図りますが、ギリギリ妹エミリー(ハリエット・ダイアー)の車に乗り込んだところで目を覚ました彼・エイドリアン(オリヴァー・ジャクソン=コーエン)がものすごい形相で追ってきて車のサイドガラスを割るなどして大暴れ、しかしなんとか逃げおおせた二人はその後平和に暮らしましたとさ…とはならず!(当然)

後日、エイドリアンの兄である弁護士のトム(マイケル・ドーマン)から、エイドリアンが自殺したこと、セシリアに500万ドルの遺産を残したことを告げられます。

絶対に自殺するようなタイプではないと疑念を抱きつつも新たな生活に馴染み始めたセシリアですが…しかし消えぬ違和感。誰かがそこにいるようないないような…!

まあタイトルがタイトルなのでエイドリアンは透明人間となってセシリアにまとわりつくようになるわけですが、果たしてどうなるんでしょうか…!

話が強い

元は1933年の映画「透明人間」を現代風にリブートしたものだそうですが、それを例に出すまでもなく「透明人間」は古典的存在でありつつ、でも「見えない恐怖を描く」のは(僕がこれまで観てきたホラーに無かっただけだと思いますが)逆になかなか新鮮な気がして、古くて新しい良ホラーになっているとかいないとか言う噂です。

前半は「死んだはずの男がどうやら姿を消してストーカーしているっぽい」感じで“普通に”ホラーとして気味の悪さが感じられるいい出来かつ救いようのない展開が素晴らしく、「これ自分だったとしてもどうしようもないな…」と絶望的になれるストーリーが非常に良いですね。

何が良い、ってやっぱり「見えてないけどいるのよ!」と必死に訴えれば訴えるほど「頭おかしいのかな」と思われちゃう不条理が生々しい点でしょう。セシリアの辛さはわかる、でも彼女を信じられない周りの人たちの気持ちもわかるわけです。

自分だって「透明人間に追われてる」と相談されれば「疲れてるのかな」とまずその真偽について考えるまでもなく「事実ではない」と判断するだろうし、でも実際はマジでそこにいるんだぜ、という状況の絶望感ったらない。

おまけにこの透明人間はかなり性格が悪いため、いわゆる「罠にハメる」ような形でどんどんとセシリアを追い込んでいきます。そして追い込まれていくからこそなおさら精神を病んでいってもおかしくないように見えてくるのがミソ。

例えばこの話、途中まで観ている限りでは「実は主人公(セシリア)が精神を病んでいた話でした」でも通っちゃうんですよね。実はそうなんじゃないか…と観客を疑心暗鬼にさせる辺りも非常に上手く、ひたすら追い込まれていくセシリアの辛さと「実は」パターンの間でいい感じに遊ばせてくれると言うか。良い意味で落ち着かないストーリーがとてもいいですね。

また後半は少し色合いが変わってきて、ホラーよりもスリラー的な要素が強くなってくるのも良い。

とにかくセシリアは追い込まれて追い込まれていわゆる“詰んだ”ような状態になっていくんですが、そこから果たして一発逆転でスカッとさせてくれるのか、でもそんなの絶対ムリでしょと思えるぐらいに救いようのない状況に陥るだけに「このまま胸糞エンドでも悪くないかも…」とどっちでも良いなと思えるぐらいに話が強いので、ある意味ではオチなんてどうでもいいと言えるほど話が強いのが素晴らしい。

実際のオチもそれはそれで「なるほど〜〜」と唸っちゃうような良いものだったので、まあ序盤から終盤までスキのないよくできた映画だと思います。

比較的誰にでもオススメしやすい

グロくもなく、人間的な怖さ、異常性で見せる部分も良質さを感じさせ、よほどホラーが苦手な人でない限りは割といろんな人にオススメしやすいレベルの良作です。

またいろいろと気になる部分もあって、他の人の考察も読みたくなるような内容なのもいいところ。「あれどうだったの?」とか「あれはこういうこと?」とかいい感じにモヤモヤが残るので、それを考察する余地がある“遊び”があるのも気に入りました。

最初に書いた通り、自分一人では「気にはなるけどピックアップしない」類の映画だと思うので、観る機会が与えられてとても良かったです。「ミッドサマー」と同じパターン。

やっぱり自分以外の人のチョイスも大事だよね、と本筋とはまったく関係のない話で締めようと思います。ありがとうございました。

ネタバレ人間

最後「実は兄貴が黒幕か!?」とか思ったりもしたんですがそれはないらしく、そのため終盤の展開は少々引っかかりを覚えました。僕が節穴のせいかもしれません。

なぜ最後にそこを読み違えてしまったのかを考えると、やっぱり友人刑事のところに襲撃に行ったのが兄貴だった、というのがいかにも出来すぎてませんかね、というのが一つ。

セシリアはもうそのからくりを理解しているからバレる=襲撃が失敗する可能性を考慮して替え玉を差し向けた…と言うロジックは理解できるんですけどね。兄貴がいきなりあのスーツを着るのも、エイドリアンが「監禁されていた」状況を作り出すのもなーんか不自然な気がして釈然としませんでした。はっきりとした理由を提示できない以上、これまた節穴なだけではあるんですが。

またラストもセシリアが復讐を遂げるのはスカッとして良いんですが、とは言えれっきとした殺人なだけに、もう少しはっきりとエイドリアンが「そうだぜ俺が黒幕だぜ」と思わせるような何かが欲しかったとも思います。

口で言っちゃうと友人刑事が聞いている手前「妹の復讐」ができなくなってしまうので、そうではない形で…例えば表情とか証拠とか、何かしら「やっぱり許せん!」と思わせるものが欲しかったかな、と。

そこに至るまでで怒りを買いまくってはいるものの、「僕じゃないよ」とひたすら否定するだけだと逆にセシリアが悪人になってしまう気がして、そこはもうちょっと悪いやつでいてほしかったと言うか。

その逆算で言えば、かつて同棲中にDVを受けていたらしき過去の部分をオープニングなりその後なりでもう少しだけでも語ってくれる部分があればまた違ったような気もします。いきなり脱出スタートなのでどこまでひどかったのかがわかりづらいし。

もちろん彼女を「透明人間として」追い込んでいった手口はクソ野郎すぎて憎むのに十分な理由ではあるんですが、そこで明確に「エイドリアンがやってたんだぜ」と言い切れない兄貴コンニチワ案件が出てきてしまったために最後少し憎しみが揺らいじゃう(面がある)のがもったいない。

まあこの辺は節穴故のご意見なのであまり当てになるものでもなく、総じてかなりいい出来だったのは間違いありません。

ぶっちゃけ最終的には「真犯人が誰であれ復讐したかった」のであればこれで良いのかな、とも思いますけどね。そう思わせるだけのラストの表情でもあるし。あれ絶対ニューヒーロー誕生のエンディングでしょ。

このシーンがイイ!

いろいろモヤモヤもしたんですが、それでもやっぱりラストの一連のシーンでしょうか。特にラストシーン。

ココが○

感情移入のさせ方がとてもうまい。とにかく救いようのない展開が良いですね。

また“音”の演出に迫力があってそこもすごく良かったです。

ココが×

少々気になる点はありましたが、これは自分の読解力のなさ故のような気もするしそこにイチャモンつけるのは難しいところ。まあよくできてますよやっぱり。

MVA

これはもうこの人しかいないでしょう。

エリザベス・モス(セシリア・カシュ役)

主人公。

どんどん追い込まれていって顔つきすら変わっていくかのような熱演。本当にすごく良かったです。

相手が透明人間なだけに一人芝居の比重も大きいんですが、そこでもまた素晴らしい演技で文句なし。正直ここまで良い役者さんだとは思ってませんでした。

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