映画レビュー1005 『ジャケット』
本日もネトフリ終了シリーズ。
これはまったく知らない映画だったんですが、評判が良さげだったので観ました。こういうので当たりを掴むと思いの外嬉しいわけですが…!
ジャケット
ジョン・メイバリー
マッシー・タジェディン
エイドリアン・ブロディ
キーラ・ナイトレイ
クリス・クリストファーソン
ジェニファー・ジェイソン・リー
ダニエル・クレイグ
ケリー・リンチ
スティーヴン・マッキントッシュ
ブライアン・イーノ
2005年3月4日 アメリカ
103分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)

なるほど確かに隠れた良作。あの映画の原型っぽい…?
- 不運な経緯によって精神病院に入れられてしまった男の話
- 過酷な治療によってなぜかタイムスリップした彼は一人の女性と出会う
- SFサスペンスのように見せかけて人間ドラマ
- エンディングは後に公開された某映画を彷彿とさせる
あらすじ
いやーこれはまったく知らなかったのを恥じるぐらいに素晴らしい映画でしたね…。キャスティングもなかなか良いメンバーで大満足ですよ。
しかし(映画)ジャケットの(DVD)ジャケットには「拘束(しばら)れたい」とか書いてあってもう売り方がクソすぎてですね。まじでフザケンナセンスドゼロだなと申し上げておきたいと思います。キャッチコピーはただのドM映画やないか!
主人公はエイドリアン・ブロディ演じるジャック・スタークス。彼は湾岸戦争に派遣された兵士だったんですが、とある少年に声をかけたところその子が少年兵だったもんで頭を撃ち抜かれてしまい、なんとか生還したものの脳に外傷を負って記憶障害になってしまいます。
その後記憶障害に悩まされつつも退役して普通に生活していたようですが、ある時ヒッチハイクで乗せてもらった運転手がトンデモクソ野郎で彼の運転する車を停めようとした警官を殺害して逃走、残されたジャックはその時の記憶もなく容疑者に仕立てられてしまいます。
裁判では障害が認められつつも犯人であることは覆らず、そのまま精神病院に入れさせられることに。
精神病院では抵抗できなくなるほどキツく身体を締め上げる“ジャケット”に拘束され、遺体安置用の小さなボックスに数時間放置される“治療”を受け発狂せんばかりのジャックでしたが、ある日その“治療”時にいきなり外に飛ばされる謎の出来事が発生。
治療中のはずでは…? と一人立ち尽くす彼を心配した一人の女子・ジャッキー(キーラ・ナイトレイ)に声をかけられ、ひとまず彼女の家に向かったジャックは、そこで「かつてあの事件の直前に小さな女の子に渡した自分のドッグタグ」を発見します。
どうやら彼女はあのときドッグタグを渡した女の子が成長した女性であり、つまり今は未来であることに気が付いたジャック。自らの無実の証明=精神病院退院となるかもしれない出会いに「ジャック・スタークスを知ってるのか!?」と彼女に詰め寄りますが、彼女は涙ながらに言うわけです。「ジャックは死んだのよ!!」
何が何やらわからないまま再び現在=精神病院に戻ったジャック、その後も“ジャケット”の治療で未来へ行く機会を得ながら、自分が死んだ原因を探り始めます。
果たしてジャックの辿り着く答えは…なんなんでしょうね!?
事件の解決が本題ではない
主人公がジャックでヒロインがジャッキー、ってもうちょっと変えたれよと思うんですがあんまりアメリカ人的には気にならないんでしょうか。でも綴りだって多分JackとJackyだぜ!?
先に少しネタバレ気味ではありますが書いておくと、「冤罪によって精神病院に入れられた男がタイムスリップする」となるとその事件解決のために動くサスペンス的なお話なんじゃないか…と思いがちですがこの映画の本線はそこではありません。じゃあ何やねん、となるところですがそれは書かないでおきましょう。
差し障りのない言い方をすれば、彼は偶然タイムスリップし、しかもそれは独力ではできない(ジャケットに拘束された治療のとき限定の)もので、おまけに行き先が過去ではないために「自らの冤罪を証明して今いる精神病院から抜け出す」というのは難しい面もあったんでしょう、何か目的を持って行動するというよりは、未来で直面した状況に対応しているうちに自らの死の真相について触れていく…というような形になっていきます。
そしてそれこそが「サスペンスよりも人間ドラマ」っぽさにつながる脚本の妙を感じさせるものになっていて、最後まで観ると「そのつもりがなかったのに落ち着くべきところに落ち着く」展開のうまさが光る良作ですねと思うわけです。
なかなかよく出来たお話ですよこれは。結構グッと来ちゃいましたね…。
SF好きであれば一度は観て欲しい
とてもいい映画だったにも関わらず、正直書ける部分が少ないのでもうあんまり書くことも無いという。
とりあえずこの手の話(タイムスリップ)はSFとしてはよくあるものだとは思いますが、主人公にその主導権がない形なのは割合珍しいかなと言うのと、当然ながらリアリティはまったくない話ではあるんですが、だからこそ「SFにしか描けない」内容になっているのがすごく良かったですね。これぞSFだな、と。
改めて自分はこういうドラマを感じさせるSFは好きだなぁと再認識しました。「ガタカ」「プリデスティネーション」辺りと並べて脳にしまっておきたいぐらいに好きなSF。
これまたネタバレになるので書けませんが、この映画の終わり方は後年作られたとあるSFを彷彿とさせるものになっていて、こっちの方が古い映画なだけに…あの映画はこの映画に触発された部分もあったんじゃないかな…と想像したくなります。
なのであの映画が好きな人にはぜひ、と言いたいところですがご紹介時点で完全にネタバレになるので書けないという…もどかしいジレンマを感じつつ今日はこの辺にしておきましょう。
ざっくり幅広く「SFが好き」であればぜひ!
このシーンがイイ!
まあこれはエンディングでしょうね、やっぱりね…。わかりやすくタイムスリップの結果をお知らせてくれるエンディングでした。
ココが○
タイムスリップSFの割にややこしくもなければあまり相互への影響もなく、限定的なタイムスリップによってよりドラマチックな物語にしていると思います。文句なしにいい映画。
ココが×
ネタバレ項に書きましたが、2点ほど引っかかる点があり、特に2番目の方はもう少し上手いことできんかったんかいなと。いい映画なだけになおさら思いました。
MVA
007になる直前のダニエル・クレイグが脇役で登場しております。エイドリアン・ブロディ主役でダニエル・クレイグ脇役、って今だとなかなか考えづらい貴重な配役のような気がしないでもない。
ジェニファー・ジェイソン・リーが重要な役で出てきてたのも嬉しかったんですが、今回は順当にこのお方。
エイドリアン・ブロディ(ジャック・スタークス役)
主人公。優しそうな眼差しが印象的。
エイドリアン・ブロディは「グランド・ブダペスト・ホテル」の嫌な役の印象が強いんですが、こちらはうって変わって薄幸な優男感がお見事でした。あの雰囲気あってこその映画だと思います。
相手役のキーラ・ナイトレイもいい感じにやさぐれ感が出つつ、最終的にもさすがの雰囲気で良かったですね。