映画レビュー0880 『キングダム/見えざる敵』
今回もネトフリで配信終了になるものの中から評価が良さげなので選んだ1本。
キングダム/見えざる敵
2007年9月28日 アメリカ
110分
アメリカ
Netflix(PS3・TV)

せっかくFBIなのにCIAに転職しちゃってんじゃねーかよ!
- 同僚含めたアメリカ人を対象にしたテロの捜査のため、政府の反対を押し切って現地に入るFBI捜査官たち
- “現地のルール”に振り回されながら、徐々に捜査を進めていく
- 政治力学や捜査手法中心の前半は良かったものの…
- 最終的には敵失からの力技で解決、ガッカリパターン
あらすじ
この映画の舞台はサウジアラビアなんですが、オープニングでアメリカとサウジ(及び中東)の歴史をスピーディに振り返りつつ、(この映画当時の)現在で発生したテロ事件をきっかけに、「現地で捜査をしたい(サウジ任せでは解決が望めない)と考えるFBI」と、「アメリカ人を狙ったテロの後にまたアメリカ人が来たら火に油を注ぐのでやめて欲しい」サウジ側との微妙な関係を背景にしつつもゲリラ的に現地捜査に乗り出すFBIチームのお話ですよと。
この映画を観る限りでは、サウジアラビアには「外国人居住区」があり、治安の悪いサウジ国内とは別世界の「アメリカの一都市」のような欧米化の進んだエリアがあるらしいんですが、開幕でまさにそこを狙ったテロ事件が発生します。
現地にいたFBIのフランもテロで犠牲となってしまい、FBI本部の面々は「なんとしても我々で犯人を捕まえるべきだ」と考えるわけです。ちなみにこのフランさんを演じるのはカイル・チャンドラー、「うわっ、またFBIやってんのかよ」と思いましたが早々にご退場なさいました。
弔いの意味も込めて現地で捜査させて欲しいと願うFBI捜査官たちですが、サウジ側にもアメリカ政府上層部にもNGを食らってしまい、身動きが取れない状態。
かと言ってサウジ任せでは間違いなく犯人検挙につながらないだろう…と業を煮やしたジェイミー・フォックス演じるフルーリーは、サウジ大使絡みの醜聞を利用して入国できるよう揺さぶりをかけ、アメリカ政府上層部にも黙ったまま捜査官4人でゲリラ的にサウジに入国。
現地では「無事に帰ってもらうことが最重要課題」のために完全なるお客さん扱いでろくに捜査もさせてもらえない状況の中、少しずつ権限を得て捜査を進めていくフルーリー他FBI御一行は果たして犯人までたどり着くことができるのか…というお話です。
政治ドラマっぽい期待も最初だけ
序盤はアメリカ政府高官がボロボロ登場してきてですね、またどの人も割とよく観る面々だったりするので、「おっ、こりゃ政治と現場の板挟み系だね」なんつって楽しみにしていたんですが、結局その政府上層部のアレコレという話は序盤で出てくる程度で後半はほぼ触れられず、思わせぶりにやりあっていたFBI長官リチャード・ジェンキンスと司法長官のダニー・ヒューストンのバチバチバトルはなんやったんや、とひどく肩透かしを喰らいました。
前半はかなり(見せ方的にも)政治色を強く出していると思うんですが、それで政治ドラマ的な要素も期待しちゃうと確実にガッカリすると思います。実際はアクションサスペンスのような内容で、結局最終的にはドンパチでがんばりますみたいな展開は序盤の期待感もあっただけにかなりガッカリさせられました。
ユーたちCIAだったんですかね?
現地に入ってからの4人に関しても、終盤近くまでは武力的要素はまるでなく、証拠を地道に集めて聞き込みをして…といかにも「FBI捜査官のお仕事です」という感じが強く出ていて、よくある対テロ映画とはちょっと趣が違う感じで良かったんですよ。
王子との駆け引きで捜査権限を手にしていこうとする感じとか、バトル中心ではない知的な戦いが描かれる映画なんじゃないか…とかなり期待させてくれるんですが。
…が!
もーね、詳しく書きませんけども、最後の見せ場の部分が敵失でご都合主義的に核心に迫っていく上に、「お前らCIAだったのかよ」と突っ込みたくなるような戦いのエキスパートっぷりを発揮する面々に興醒めでした。申し訳ないけど。
そりゃFBIだって銃器の訓練ぐらいやってるでしょうが、それにしたってピストルじゃないですからね。武器を現地調達してゴリゴリ使い倒して戦い抜く、ってそりゃちょっと話が違うでしょうよと。文句の一つも垂れたくなるって話ですよ。
序盤と終盤で違う映画に
最初っからこういう映画なら別に良いと思うんですけどね。ストロングスタイルで行きますよ、全員ぶっ殺してやりますよぐらいの勢いなら。
ところが序盤は政治絡みに始まって現地ではいわゆる警察的な捜査手法を駆使する地道な対テロ作戦を描いておきながら、最終的には兵士とやってることが変わらない、っていうのはちょっとね…僕としては大変不満でした。
なので、最後まで観て思いましたが、この映画は「アクション映画」なんだと思います。ベースは。
僕としてはもっと政治とか策略とかジレンマとか、「力ではどうにもならない」部分を観たかったしそこを期待していたんですが、そういう期待を煽っておいての「結局力だよね」という流れなので、序盤と終盤で映画がまったく違うこの悲しさはなんなんだと。非常に残念です。
ラストのセリフは良い
なかなか評判が良さそうなだけに…好きな人は好きなんでしょう。
僕も決してつまらなかったとは思いませんが、しかしやっぱり序盤の期待感を裏切る終盤の見せ方には不満も大きかったですね。
「美味しいラーメン作るよ!」って言ってたのに出てきたのはうどんだった、みたいなね。おなじみの食べ物例ですけども。「ラーメンちゃうんかい!」っていう残念感。うどんでもいいよ、って人なら文句なく楽しめるのかもしれません。
ただラストのセリフはとても深いもので、こういう双方の行動が今につながっているのかと思うと…また少し世界の見方が変わるかもしれません。
このシーンがイイ!
これはラストシーンでしょう。あのフリと回収のおかげでラストは唸りました。
ココが○
序盤から中盤の流れはとても良いと思います。意外とこういう「地道な対テロ話」ってあんまり観ない気がするし。
ココが×
上に書いたのがすべてですね。結局最後はそれかよ、っていう。
MVA
なかなか渋い良いメンバーが揃った映画でしたが、今回はこの人にしたいと思います。
アシュラフ・バルフム(ファーリス・アル・ガージー警察大佐役)
FBIメンバーを受け入れる現地の警察指揮官。
結局彼が主役だったような気がしますねー。「いつものアメリカ人」たちはそれはそれで良いんですが、やっぱり新鮮だったのはこの人かな、と。良い顔してるし。


