映画レビュー1372 『荒野の七人』
もうそろそろいい加減この映画観ないとダメだろ、とマイリトルおれが言ってきたので手持ちの円盤を引っ張り出して来ました。
なんか最近逆にディスク入れて映画観るの新鮮な気がするよね…。AVもストリーミングで観てるしね…。(不要な情報)
荒野の七人
ウィリアム・ロバーツ
ウォルター・ニューマン
ウォルター・バーンスタイン
ユル・ブリンナー
イーライ・ウォラック
スティーブ・マックイーン
チャールズ・ブロンソン
ロバート・ヴォーン
ブラッド・デクスター
ホルスト・ブッフホルツ
ジェームズ・コバーン
1960年10月23日 アメリカ
128分
アメリカ
手持ちブルーレイディスク(PS5・TV)
ややあっさり、精神性より娯楽性。
- 戦うための銃を買いに街へ出た村人、そこでガンマンと出会う
- 銃の撃ち方を教えてくれと頼むと「ガンマンを雇った方が安い」と助力してくれることに
- 言わずと知れた「七人の侍」のリメイク
- 大筋は似ているものの印象はだいぶ異なる
あらすじ
さすがにこれだけ名の知れた名作なだけに結構期待していたんですが、その分やや肩透かしを食らった感じであまりハマれず。残念です。
メキシコのとある田舎村では、毎年収穫の時期に盗賊たちがやってきては作物を奪っていく日々についに我慢ならんと長老ミゲル(ウラディーミル・ソコロフ)に相談、結果盗賊と戦うための銃を買おうということになり、村人3人でテキサスの辺境の町へ向かいます。
町ではちょうど葬儀が執り行われようとしていたんですが、亡くなった人間が先住民だったために(先住民を埋葬すると荒くれ者に襲われるので)葬儀屋が渋り、それを見かねた一人のガンマン・クリス(ユル・ブリンナー)が霊柩車の御者を引き受け、それを見た別のガンマン・ヴィン(スティーブ・マックイーン)が彼の助っ人を買って出ます。
当然のように「何してやがんだ」と襲ってきた荒くれ者たちを返り討ちにした2人を見た村人たちは、彼らに助けてもらおうと「銃の買い方と撃ち方を教えてくれ」と懇願。するとクリスは「銃を買うよりガンマンを雇った方が安い」と助っ人を引き受け、また彼の人柄に惹かれたヴィンも仲間入り。
しかし当然2人では話にならないため、知己を頼って仲間を集め始める2人。報酬は当然少なく、なかなか集まらない中様々な理由で7人集め、問題の村へ向かうわけですが…あとはご覧くださいよっと。
ほぼ一緒でも精神性がかなり違う
あらすじからもわかる通り、大枠はほぼ 「七人の侍」のまま。刀を銃に持ち替えました、的なお話です。
が、そんな単純な話でもなく、やはり「侍」と「ガンマン」の職の違い=メンタリティの違いが如実に現れた内容になっていて、それによって好みが分かれるのかな、と。
今振り返ると「七人の侍」はだいぶ侍のメンタリティに重きを置いている映画だったんだな、と思います。特に主人公の志村喬演じる勘兵衛の佇まい、生き様に。
そう、「生き様」が大きなポイントかもしれません。この映画でも(冒頭の葬儀絡みでわかるように)“損得ではない生き様”が重要な動機として描かれますが、逆に言えばそれぐらいで、つまり「戦いに身を投じるきっかけ」としてのメンタリティは七人の侍を引き継いではいるものの、それ以降はあまり精神性に光を当てることもなく、あちらよりも娯楽映画としての見せ方に重きを置いているように見えました。
やっぱりちょっと世界的に見ても「侍」は特殊な存在だと思うので、それをもっと(アメリカ人にとって)身近なガンマンに置き換えたとき、「七人の侍」のような精神性を表現するのは無理があるし、同じことをやっても仕方がないと思ったのか…もっと娯楽によせた“似て非なるもの”になっているように思います。
これはこれで当然つまらないわけではなく、先にこっちを観ていたらこっちの方が良いと思った可能性もあるかもしれないぐらい表面上はかなり近いものではあるんですが、やっぱり受け取るもの、「言葉の重み」みたいなものがまるで違うので、改めて「七人の侍」の凄さがわかった気がします。
僕としては「いい加減観ないと」が半分ありつつ、残りの半分はマックイーン目当てで観たようなものなんですが、マックイーンもかっこいいもののやはりキャラクターとしてあまり深掘りされている風でもなく、ガンマンみんな奥行きが足りないように思ったんですよね。「七人の侍」と比べると。
中には単なる裏読みで「実は大金が眠ってるに違いない」と参加してくるガンマンもいるし、それはそれで原作との差別化にはなるものの方向性が微妙な気もします。
戦いにおける戦略的な“美味しさ”も「七人の侍」と比べるとほぼ無いに等しく、やっぱりオリジナルを超えるのは容易ではないなと改めて感じた次第。
比較対象が偉大すぎる
こんなご時世だからこそ「損得度外視で弱者につく」存在の価値はこの頃以上にあるような気がするし、そういう意味でももちろん今も観る価値がある映画だとは思いますが、ただそれだったらせっかくだし「七人の侍」の方を観た方が良くない? という思いも拭えず、今となっては少々中途半端な映画に感じてしまいました。
何かしら「七人の侍よりこっちの方がいいな!」と思えるものがあればまた違ったんですが、もう主要メンバーのかっこよさからして圧倒的に「七人の侍」が勝っているので、後発でこれは「良いんだけど越えられなかったね」と言わざるを得ないのがつらいところ。
元が良いので良い映画なのは間違いないんですが、もう少し「絵面ではない深いところ」まで汲み取ったリメイクにしないと深さは出ないよな、と納得してしまう上っ面感があり、逆に言えば「七人の侍」は物語の筋以外のところに大きな価値があったんだな、と改めて思い直しました。
それはやっぱり一言で言えば「生き様」の描写なんだろうと思うんですよ。こっちも描いてはいるものの、元と比べるとどうしても浅く感じてしまう。
果たして両方観ても「七人の侍より荒野の七人の方が好き」という人がどれぐらいいるのかと考えると…役者に対する個人的な感情を抜きにすればほぼいないんじゃないか、と思いますね。
まあそれだけ「七人の侍」が偉大だった、ということなんでしょう。海外のランキングですらしょっちゅうトップの方に上がってくる映画ですからね…。逆に荒野の七人はそんなに見ない気がするし。
ちょっと厳し目に書いてしまいましたが、とは言え娯楽映画としては今でも十分楽しめる映画だと思うので、これまたやっぱり一度は通っておくべき映画ではあるんでしょう。
このシーンがイイ!
チコに散々ご飯盛り付けるシーン好きですね。ちょっと気を抜けるいいシーン。
ココが○
やっぱりねー、損得度外視で命をかけるような男になりたいもんですよ。今の世の中、損得とポジションで喋る人間ばっかりですからね…。それ故余計に光る物語です。
ココが×
どうしても「七人の侍」と比べざるを得ないだけに、いろいろな面で惜しさを感じてしまうのがネック。
順番的には正しい順番だったとは思いますが、「荒野の七人」を楽しむという意味ではもしかしたら逆の順番で観た方が良かったかもしれません。
MVA
マックイーンもよかったんですが…もっとかっこいい役と思っていたので良くも悪くも「ちゃんと二番手」でしかなく、もうちょっと活躍を見たかったような気はしました。
ということでやや消去法的にこの人に。
イーライ・ウォラック(カルベラ役)
盗賊団の首領。
いわゆるメインの悪役ですが、こちらは単純な悪役というわけでもなく、ちょっと律儀だったり村人たちにも硬軟織り交ぜた接し方だったりが印象的で、まったく悪役が記憶に残っていない「七人の侍」と比べて唯一と言ってもいいかもしれない良差別化ポイントだったかもしれません。