映画レビュー1609 『ザ・ワン』
前の週に観た「エクスペンダブルズ2」であまりにもジェット・リーが軽んじられていたせいでジェット・リー成分が不足してしまったため、追いジェット・リーです。
ただ今週のステイサムでもあります。
ザ・ワン
グレン・モーガン
ジェームズ・ウォン
ジェット・リー
ジェイソン・ステイサム
デルロイ・リンドー
カーラ・グギノ
ジェームズ・モリソン
ディラン・ブルーノ
リチャード・スタインメッツ
アーチー・カオ
ディーン・ノリス
2001年11月2日 アメリカ
87分
アメリカ
U-NEXT(Fire TV Stick・TV)

設定が中途半端に面白いのが逆に残念。
- 全125ある並行宇宙の“自分”を統合するために他のジェット・リーを殺していくジェット・リー
- 時代もあってか全体的に安っぽさが強く、漂うB級的なしょっぱさが最高
- ジェット・リーとステイサムが初めて共演した作品
- ステイサムはこの作品でのジェット・リーに刺激を受けて今の路線に行ったらしい
あらすじ
ステイサム史的にも重要な一作だと思われますが、それはそれとして良くも悪くもしょっぱい映画でした。
ロサンゼルスのとある留置場で、移送されようとしていた囚人ロウレス(ジェット・リー)が別次元からやってきたユーロウ(ジェット・リー)の襲撃によって殺害されます。
ユーロウは車と変わらない速度で走って逃走、彼を追い続ける多次元宇宙捜査局(MVA)の捜査官ローデッカー(デルロイ・リンドー)とファンチ(ジェイソン・ステイサム)は異次元へのポータルであるワームホールの出現場所で彼に追いつき、3人一緒にMVA本部と思しき場所へ転送され、無事ユーロウも捕らえられますがそこへやってきたセクシーガール(カーラ・グギノ)の手引きによってユーロウはまたも逃走。
彼は並行宇宙にいる「全ての自分」を殺害することによって自らへパワーを集め、唯一無二の存在「ザ・ワン」になろうと企んでいるのでした。
全部で125ある並行宇宙のうち、123人の自分を殺したユーロウは残り1人となった自分を追い、最後の並行宇宙へ向かいますが…あとはご覧ください。
B級感がたまらない
少し補足しますが、上記の通り「並行宇宙(パラレルワールド)はすべてで125存在」している…つまり125人の同一人物がそれぞれの宇宙でそれぞれ違った人生を送っていますよ、というのがまず最初の設定です。この辺は良くある話なのでわかりやすいでしょう。
ユーロウは元々MVA捜査官でローデッカーの相棒だったようですが、ある時たまたま別次元の自分を殺してしまった際にパワーが自分に入ってきていわゆる「みwなwぎwっwてwきwたwwwww」状態となったことで「全部の自分を殺せばとんでもない力が手に入る」と確信し、以降違法とされている勝手な次元旅行を繰り返しながら自分を殺し回り、最後の1人(ゲイブ)とユーロウとのバトル、そして追手であるMVA捜査官2人が中心になってくるお話ですよと。
日本だけなのかはわかりませんが、キャッチコピーに「125人のジェット・リーがバトル・ロワイヤル」とあって面白そうだなと思ったところで物語開始早々に123試合目が終了するのでかなり肩透かしを食らうことだけは覚えて帰ってください。即座に決勝です。
設定上、普通に考えればパワー的に124対1の対決になるのでどう考えてもユーロウが有利ではないか…と思うところですが、途中で「ユーロウにも劣らない強者」的な描写が入ってくるので、おそらく殺された人物のパワーは「残った同一人物に配分される」仕組みになっているんでしょう。よう最初の1人のパワーを124分の1だけもらって気付いたな、って話ですが細かいところは突っ込まない方が良いでしょうね、きっとね…。
この辺り、ちょっとFF14のアシエンのお話に近いものがあって面白いなと思うんですが、ただ設定の面白さを物語に活かしきれていないよくあるパターンでもあり、ちょっと惜しい映画だなという印象。
結局「ジェット・リー vs ジェット・リー」を見せたかったがために作った上っ面の設定でしかない感があり、非常にもったいないです。
これ(詳しくないくせに)ちょっとディックっぽいなと思ったんですが、ディック原作だったらもうちょっと面白くなっていたと思うのでやはり似て非なるものではありました。
また時代故に仕方のない面はありますが、ところどころ非常にチープなんですよね。鉄条網みたいなものが明らかにやわらか素材だったりして。
ジェット・リーは「超人的な力を得ている」設定なので、途中でバイクを片手で1台ずつ計2台持ち上げて追手を挟み込むシーンが出てくるんですがまーこのバイクが軽そうなこと軽そうなこと。
パワーがあるから軽そうではなく物質として間違いなく軽いな、というのがわかる感じでそのしょっぱさが逆に最高でした。俺は今B級を観てるぜ…! みたいな。
オープニングで「時速80kmは出てる…!」と言われる走るジェット・リーもそこまで速そうには見えず、でも早回しするほどあからさまな見せ方はしないB級感がすごく良い。頑張ってる感じが。
とは言え結局そんなニッチな笑いで話の微妙さをごまかすこともできず、愛すべきしょっぱさを持った作品ではあるんですが面白さとしては今ひとつというのは変わらない評価かなと思います。嫌いじゃないけど面白くはない、みたいな微妙なポジション。
またアクションの見せ方にしても、やっぱり今の時代ほどこなれてもいないしお金もかかっていないのでそこまで上手さも感じられず、「ジェット・リーとジェット・リーがガチンコで殴り合ってる」感じがもう一つ出切っていないのも惜しい。
うまく合成したりしてくれればいいんですが、それよりかは(昔よくあったような)「同じ人っぽいけど顔は見えない」みたいなカットを繋いで構成した部分がほとんどなので、やっぱり「おお、ジェット・リー対決!」とはなりにくいんですよね。
そこも含めてB級感が強く、それはそれでいいんですがグッと来るほどのものはなかったかなと。
映画史的にも重要かもしれない
最初に書いた通り、ステイサムはこの映画で初めて共演したジェット・リーに刺激を受けて本格的にアクション映画に取り組むようになったらしく、つまりこの映画がなければ今のステイサム一人百花繚乱は存在しないわけで、その意味ではステイサム史のみならず映画史的にも実はかなり重要な一作と言えるでしょう。だってあんなに似たような役で銃ばっか撃ってる人いないもの。
その後2人は何度も共演しているだけに、仲も良かったりするのかなと思うんですがどうなんでしょうね。
今作のステイサムはさすがに若く、中途半端に伸ばした髪もあってかっこよ…くないんですよこれが。びっくりしました。
映画自体のせいもあるのか「B級映画に出ている俳優です」感が強く、この映画を観た限りではよく今のレベルまで売れたなと感心するぐらいに微妙なビジュアルしてました。
まあこれを機に本格的にアクション映画に取り組むようになった=身体作りからしっかりやり始めたということもあるんでしょう、ここから身体も顔も“魅せる”俳優になっていくのが面白いところです。
ということで単体映画としては微妙ですが映画史的にはなかなか価値があるかもしれない一本、よかったらどうぞ的な無難なまとめでお別れです。
このシーンがイイ!
いいというかオープニングで殺された並行社会のジェット・リー数人のビジュアルがご紹介されるのがもう面白すぎてダメでした。
絶対狙ってやってるだろ。
ココが○
設定はすごく良いと思うんですよね。作り方が違えばかなり面白いSFになりそう。
それはそれとしてこの映画のB級感も嫌いじゃない。
ココが×
やっぱり見せ方がもう一つなところでしょうか。実はかなり眠くなりました。(疲れてたせいでもある)
MVA
まあ順当にこの人でしょうか。
ジェット・リー(ゲイブ・ロウ/ガブリエル・ユーロウ/ロウレス他役)
主人公でもあり悪役でもあり、まさにジェット・リーのための映画。
当時30代後半、動きもキレッキレでさすがです。若いからかまだミスタさんっぽさが控え目なのもポイント。
まあ正直役とか演技とかアクションとか云々関係なく、こういった企画を作られるだけですごいことですよ。それだけ“売れる”俳優ということですからね。
とてもオープニングだけでグッバイさせられる俳優とは思えない。エクスペンダブルズ2、おまえのことだぞ。


