映画レビュー0728 『フィラデルフィア物語』
今回もレコーダー削減のためのBS録画よりシリーズ。
古いですねー。1940年の映画でございます。昨日観た映画(ジョニーは戦場へ行った)が重かったので、軽そうな映画をチョイス。
フィラデルフィア物語
「どっちもあり得る」2大俳優の共演が良い目くらまし。
主演はキャサリン・ヘプバーンにケーリー・グラントにジェームズ・スチュワートというこの頃の豪華キャストがお送りするモノクロ映画でございます。この後、この映画を元にしたミュージカル「上流社会」が作られるそうですがよく知りません。
オープニングはいかにもな劇伴でキャサリン・ヘプバーン演じるトレイシーとケーリー・グラント演じるデクスター夫婦がうまくいってないよ、というような描写がトーキー映画のように展開され、「あれ? これトーキーなの?」と思いましたがもちろんそんなことはなく、普通にセリフのあるモノクロ映画です。
結局2年間の結婚生活もうまく行かずに別れた二人ですが、トレイシーは「体一つで上流階級の仲間入りを果たした」叩き上げの男・ジョージと婚約にこぎつけます。
いまだ前夫に対する怒り冷めやらぬトレイシーですが、今は素敵なフィアンセとともに幸せの絶頂。そんな彼女の再婚を聞きつけたゴシップ誌「SPY」編集部は、とにかく写真を撮らせずにプライベートを明かさない(今で言う)セレブ・トレイシーのプライベートを暴くべく、結婚式に潜入しようと南米支社にいる一人の男を呼び寄せます。
彼はトレイシーの兄と交友があるために結婚式に参列できそうだということで呼び出されたわけですが、その彼こそが…何を隠そうデクスターその人でしたよっと。
で、そのデクスターと一緒に「トレイシー兄の友人」として参列し、執筆担当として指名された記者がジェームズ・スチュワート演じるコナー。彼に加えていつもコンビを組んでいる女カメラマン・リズと3人で参列してやんぞ、と。
「SPY」側の準備は万端、さぁ招待してもらおうやないかい、と3人はトレイシーの自宅へ。
「まぁ! デクスターじゃない!」とトレイシーの妹や母や使用人たちに歓迎されつつもトレイシー本人には悪態をつかれまくるデクスター。さらに早々に「実はあいつら記者なんだよね」と身バレさせられてしまったコナーとリズ含め、はてさて結婚式はどーなんねん、という上流階級ロマコメと言ったところでしょうか。
まあ…こういうお話なのであえて書きますが、当然ながら「ラブラブ婚約者といるところに現れた前夫」なんてどう考えてもフラグなので、そのまま婚約者とうまく行ってもお話にならないのは明らかなだけに、まあどうせ前夫とくっつくんでしょ…と思いたくなるわけですが、そこに効いてくるのがジェームズ・スチュワート演じる記者ですよ。
彼は元々小説家だったもののそれだけでは食っていけない、ということでゴシップ誌の記者として働いているわけですが、そんな出自なだけに教養があるわけです。つまり上流階級との付き合いにも向いている、と。
彼は最初こそ(知り合ったばかりなので当然ですが)あくまで客人的なポジションであんまり深く入ってこないんですが、トレイシーたちと一緒に過ごすうちに徐々に友人として存在が大きくなっていき、「これはジェームズ・スチュワートも候補になるのか?」と期待を膨らませてくれるわけです。
婚約者、前夫、そして記者の3人とトレイシーが繰り広げる四角関係、果たして最後に勝つのは誰なのか…! ということであんまり期待せずに観ていたこともあってか、意外と楽しめる良い映画でした。
まーやっぱりね。このケーリー・グラントとジェームズ・スチュワートっていうキャスティングですよ。良いのが。
僕も詳しくはないのでアレですが、この頃の俳優のランクとしては結構いい勝負だと思うんですよね。この二人。出演作の傾向としては少しだけジェームズ・スチュワートの方が格が上というか、ちょっとアカデミー賞寄りな印象はありますが、とは言えどちらも当時はかなりの人気を誇った俳優さんだと思うんですよ。
今で言うと…グラントつながりでヒュー・グラントと、紳士っぽさが近いイメージのコリン・ファースって感じですかね。他のラブコメで観た気がする組み合わせですが気のせいです。
んで何が言いたいのかと言うと、そういうコンビが主演となると…最終的にどっちが勝つのか、キャスティングだけではわからないじゃないですか。どっちも主役を張れる人物で、どっちに転がってもおかしくないという。そこがすごく良いなと思ったんですよね。
コレ、やっぱり婚約者と前夫だけじゃ全然面白くないと思うんですよ。どうせ前夫とくっついておしまいでしょ、っていう。ところがそこにジェームズ・スチュワートという名優を配することでどうなるかわからんで、というのが良いなと。
話としては上流階級のアレコレなのでまったく(一般人として)リアリティは無いし、セリフや作りもちょっと舞台っぽいというか…良くも悪くも古い映画らしい少し気取った雰囲気がある物語なので、はっきり言って現在の映画ほど身近に感じられるお話ではなく、いかにもな作り物を観ている印象はありました。
ただ、それ故にやや含みを持たせた意味深なセリフもなかなか味わい深かったり、今の映画よりも…やっぱりちょっとオシャレな感じはありましたね。そこが良いか悪いかは観ている人の素養だったり、古い映画に対する経験値だったりで変わってくる気はします。幸い僕は割と古い映画を好んで観るので、その辺りは少しだけ汲み取りやすかったような気もしました。
あとは上に書いた通り、「ケーリー・グラントとジェームズ・スチュワート」という二人の俳優に対するイメージ自体が無いと正直イマイチパッとしない映画なのかもしれません。それだけ配役のウェイトが大きい映画のように思います。
そしてその二人に挟まる形でヒロインを演じるのが、あの大女優キャサリン・ヘプバーンですからね。美貌という意味では好みの問題もあってそこまででもないかなという気はしましたが、しかしコメディエンヌとしての演技はさすがの一言で、しっかり舞台を転がしてくれました。
とかなんとか言いつつも、正直中盤まではダラダラと観ている感じでイマイチ入り込めない面もあったんですけどね。
ところがラスト20分ぐらいでしょうか。一気にまとめあげてビシっと決めるエンディングにググっと評価が高まった印象。やっぱりエンディングがバチッと決まる映画はその分気持ちよく終われてニッコリってやつですよ。
ということで前フリ90分ぐらいあるぞという覚悟のもとで観てみると、なかなか良いエンディングが待っていると思います。
古い映画が好きな人には一度観て欲しい映画かもしれません。
このシーンがイイ!
これはもうやっぱりエンディングですよねー。ああいうスパッと綺麗に終わるエンディングって最近観ない気がする…すごく良いんだけどなぁ。
あとは密かにカメラマンのリズの存在がすごく大きかったと思います。物語的に。彼女の使い方がうまい。
ココが○
当時の三大スター共演なんでしょうが、その理由があるキャスティングがとても良いと思います。
あとはセリフもなかなかいいセリフが多かった気がする。ちょっと小説っぽいというか…やっぱり古い映画らしい粋な感じがあった気がしますね。
ココが×
上に書いた通り、まず役者陣に多少の思い入れがないと厳しいかなと思います。
舞台も今とは隔世の感がある上流階級のお話だからあんまりピンと来ないし。共感度が低い、っていうのはなかなかラブコメ的には厳しいものがあると思うので、あくまで舞台的に観られるかどうか、でだいぶ評価も変わりそう。
MVA
三人ともねー。それぞれとても良かったんですよ。
特に今回はケーリー・グラントが自分が今まで観た中では最も似合ってた役な気がしましたが、でも選ぶならこの人かなぁ。
キャサリン・ヘプバーン(トレイシー・ロード役)
ルックス的にはそこまで言うほどかな〜的な感じはあったんですが、でもやっぱり演技はさすがだと思います。
上流階級だけどサバサバした感じがあって、鼻につきすぎないセレブ感が良いというか。ところどころスキがあるから男どもがよく釣れるのもわかるし。心情の変化も丁寧に見せてくれたと思います。