映画レビュー1159 『Mr.Boo!ミスター・ブー』

最近はもうネトフリの終了間際は追わなくなり、変わってJAIHOの終了間際を追う日々です。今回はもうすぐ終了となっていたこちらの映画。

Mr.Boo!ミスター・ブー

The Private Eyes
監督
脚本

マイケル・ホイ

出演

マイケル・ホイ
サミュエル・ホイ
リッキー・ホイ
テレサ・チュウ
シー・キエン
リチャード・ン

音楽

サミュエル・ホイ
ザ・ロータス

主題歌

『半斤八兩』
サミュエル・ホイ

公開

1976年12月23日 香港

上映時間

100分

製作国

香港

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

Mr.Boo!ミスター・ブー

今となっては逆に新鮮なドリフ的コメディ。

8.5
ポンコツドケチ探偵が知らぬ間に巻き込まれた大陰謀(?)
  • ポンコツかつドケチな探偵が新入りとともにケチな事件をハシゴ
  • やがて結構な事件に巻き込まれるものの…?
  • 当時のヒット作品のパロディがふんだんに採り入れられたコメディ
  • 主題歌が妙に良い曲

あらすじ

いわゆるドタバタコメディってやつでしょうか。ドタバタコメディの定義もよくわからないんですけどね…。

最近(?)のシュールな笑いとは一線を画する体を張ったコメディが中心で、笑い的にはダウンタウンよりもドリフと言う感じ。

僕も尖ってた若かりし頃であれば「けっ、つまんねーな」とこき下ろしていたことだと思いますが、歳を取るのは怖いものでゲラッゲラ笑っちゃいましたね。もう。一周回ってすごく面白かったしめちゃくちゃ好きですこの映画。

主人公のウォン(マイケル・ホイ)は助手のチョンボ(リッキー・ホイ)と秘書のジャッキー(テレサ・チュウ)を従え、しがない探偵事務所を経営しております。主な担当は浮気調査や万引調査のような“身近な”案件ばかり。もっとも私立探偵なんてそんなものじゃないかって気もします。

彼はまー超が付くぐらいのドケチ野郎で、クソほどボロい車を使い倒しているような男なんですが、そんな彼の事務所ですら人が足りないのか求人を出していたようで、それを見て工場をクビになったカンフーが得意なキット(サミュエル・ホイ)がやってきます。

なんやかんやあって渋々“見習い”として(安く)雇うことに決めたウォンは、彼を従えまたケチな案件に精を出していたわけですが、ある日偶然大きな“ヤマ”に居合わせてしまい…あとは観てくださいませ。

古き良きコメディ

主人公とその助手を演じる3人の「ホイ兄弟」が手掛けるシリーズの3作目だそうですが、日本ではこれが最初に公開され、第1弾の作品とされているそうです。

タイトルの「Mr.BOO!」は原作とまったく関係のない邦題で、主演のマイケル・ホイが「当時の高木ブーに似ていたことと、タイトルに濁点を入れるとヒットするとのジンクスにあやかってつけられた」らしいです。(Wikipediaより)

今観ても特に高木ブーにも似てないし、別に太ってもいないしでなかなかひどい邦題だなと思うんですが、それでもこのタイトルがキャッチーだったことも手伝ってか日本でもヒットしたんだとか。この辺の邦題の付け方のエピソードからもいかにも昔の映画っぽいのがなんか良いですね。読みとしては「ミスターブー! ミスター・ブー」なんでしょうか。ファレス・ファレスみたいな。謎すぎる。

最終的には一応それなりに大きな事件に出くわすものの、序盤〜中盤までは本当に細切れの小さな事件を小ネタとともに解決していく話だけ。なので「結局どうなるんや…!」みたいなハラハラドキドキとは無縁(コメディなので当然ですが)なものの、なんとなくダラダラ観ているだけでなんとなく彼らが好きになってしまうのが不思議。古き良き空気感も手伝っているんでしょうか。言語化できないなんとも言えない魅力がある気がします。

詳しくはありませんが「返還前の香港」という舞台もその空気感に一役買っているような気がしないでもない。

笑いとしては上記の通り、一昔前のドリフ的な「きっちりリハーサルをやる練られた笑い」っぽいイメージで、今の瞬発力や頭の回転勝負っぽい笑いだったりシュールな笑いだったりではありません。

ただそもそも映画である以上、アドリブは別としても“瞬発力勝負”な笑いはあんまり無いはずで、そういう意味ではこの手の練られた笑いは映画との相性もよく、またそれ故長く続いてきた歴史もあるのではないかなと勝手に思っておりますが、そんな理屈っぽい話を抜きにしてもただただ単純に面白かったです。好き。

オープニングで満面の笑みのままポーズを決めて水に落下するシーンがあるんですが、もうその掴みの時点でグッと来ちゃいましたね。そして着水と言えば「男性の好きなスポーツ」と言う噂もあり、なるほどあれが好きな自分はこの映画も好きなはずだわ、と。

日本語吹き替え版も観たい

ちなみに僕が観たのはもちろん字幕版だった(そもそもJAIHOは邦画以外すべての映画は字幕版しかない)んですが、「Mr.BOOと言えば日本語吹き替え以外認めない勢」がいるとかいないとか言う噂もあるぐらいに熱烈なファンがいる日本語吹き替え版では、主人公のウォンをあの広川太一郎がアドリブ連発で強烈に演じ、また相方となるキットを若かりし頃のビートたけしが演じていると言うこれまた今からすると非常に贅沢なキャスティングなのも気になるところです。(そしてチョンボはビートきよし)

広川太一郎は「元がつまらないギャグ映画だった」と言っていたそうですが、そうこき下ろしちゃうのはちょっと酷なぐらいに面白かったですよ?

もっともそう感じるのも時代を経たからこその可能性もあり、観る時期や鑑賞者の経験によってコメディもまた評価が変わるとすれば、それもまた面白いところです。

ぜひJAIHOには続編やこれ以前のホイ兄弟の映画をまた配信してほしいところですね。ものすごく観たい。気楽にダラダラ観るには最高ですよ。

このシーンがイイ!

一番笑ったのはカメラの説明のシーン。期待しつつ観ていたんですが期待通りに綺麗に決めてくれて最高でした。タイミングが完璧すぎる。

またオープニング(とエンディング)の曲が妙に耳に残る名曲だったのも書いておきたいところ。労働者の悲哀を感じる名曲。鑑賞後にわざわざYouTubeで調べて聞き直したぐらい良かったです。

しかも調べて知ったんですが歌っているのもまさかのマイケル・ホイ…と思ったんですがその後また調べたら弟のサミュエル・ホイの方だそうです。「クソったれ〜」の高音コーラスも最高なんですが、あれはもしや兄弟たちなんでしょうか。

ココが○

この古き良きコメディ感はなかなか他では味わい難いなんとも言えない良さがありますね。懐かしくて面白い、みたいな。

今は香港も大変なことになっているだけに、こんなお気楽な映画なんてもう作れないんじゃないか…と心配になります。

それと密かに武術指導がサモ・ハン・キンポー師匠です。大した武術が出てくるわけでもないんですが…すごい。

ココが×

ドコメディなので笑いの質の合う合わないはどうしてもあるでしょう。合わない人は全然つまらなくてもおかしくない気はする。

MVA

まさか間抜けな顔した所長(失礼)とキリッと男前のキットが実の兄弟だとは思いませんでした。びっくり。

と言うことでどちらも良かったんですが順当に。

マイケル・ホイ(ウォン・ヨクシー役)

主人公の探偵事務所所長。ドケチ。

主人公なのにまったく人に好かれる要素が無く、ケチで小物でかっこ悪い…んですがそれを自らの監督脚本主演でやっちゃう、そこがいいじゃないですか。

おまけに主題歌まで歌っちゃってしかも良い曲って言う。コメディだけに軽く見られがちですが、非常に多才な方だと思います。他の作品も観たい!

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