映画レビュー1027 『レインメーカー』

ずっと観たかった映画の一つ、これまたネトフリ終了の折に鑑賞でございます。毎度まいどスミマセン。

レインメーカー

The Rainmaker
監督
脚本

フランシス・フォード・コッポラ

原作

『原告側弁護人』
ジョン・グリシャム

出演
音楽
公開

1997年11月21日 アメリカ

上映時間

135分

製作国

アメリカ

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

レインメーカー

法廷と人情のバランスの良さ。

9.0
新米弁護士&半人前弁護士が巨大企業と戦う
  • 巨額賠償を争う裁判で弁護士デビューする男
  • 相棒は長年司法試験に落ち続けているベテラン半人前弁護士
  • 偶然知り合った人妻とのちょっとしたロマンスもありつつ
  • 全体的にバランス良く、90年代らしい良作

あらすじ

今や映画監督と言うよりワイナリーのオーナーと化してしまったコッポラの監督・脚本作。彼はもう80を超えているので、今後映画監督としての復帰を望んだところで無理な話でしょうが…しかしやっぱり「コッポラ映画撮ってくれよー!」と思わず叫びたくなるほどの出来の良さでなんともしみじみ致しました。

僕はかねてより「映画は80年代が最高」で90年代は少々落ちる…と思っていましたが、しかし90年代の映画もまた80年代とは少し違った…ほんのり寂しさをまとったような良作も多いなと改めてこの映画を観て思いましたね。特に社会が現代のように効率化される直前の、最後に少しだけ残された“社会的ゆるさ”のような空気感が感じられて、この頃の映画はこれはこれでまた素晴らしいなと。

悲劇的な結末の多い「アメリカン・ニューシネマの時代」である70年代、世の中に活気があって希望に満ちた80年代、そしてそこから少し大人になって苦味を感じさせる90年代…というようなイメージでしょうか。どの年代も味わい深く、今の映画とは少し違った空気感が感じられます。

主人公・ルディは若かりし頃のマット・デイモン。まだあどけないぐらいの時期ですね。

詳細は忘れましたが彼はいわゆるロー・スクールを無事卒業、まだ司法試験前なので正式な資格は持っていないものの、卒業時点で就職するのが普通なんでしょう、大きな弁護士事務所からことごとくお祈りされた挙げ句どうも怪しい半分ヤクザじゃねーの的なブルーザー(ミッキー・ローク)の弁護士事務所と“契約”します。

この事務所は普通の月給制ではなく歩合制の事務所で、弁護士事務所というよりはフリーの弁護士たちが集まった…RPGで言うところのギルドみたいな感じの事務所です。

そこでブルーザーに「彼と組め」と言われてやってきたのがデック(ダニー・デヴィート)。なんでも彼は「司法試験は6回連続落ちて諦めた」とのことで弁護士資格を持たない半人前の弁護士なんですが、裁判でいちいち資格の有無なんて確認してこねーよと特に問題もなく“普通に弁護士”として振る舞っているというなかなかの人物。今だったらいくらなんでも通らなそうな気がしますが…これもまた90年代辺りとしては有り得そうな絶妙なゆるさが良いですね。

かくして「新米(司法試験前)弁護士と無資格ベテラン弁護士」という奇妙な組み合わせの二人が誕生。最初にルディがもってきたいくつかの案件の中でも最も“金になりそう”だとブルーザーが踏んだ仕事、「大手保険会社への保険金支払い可否についての裁判」を手掛けることに。

並行して手掛けるいくつかの案件をこなしつつ、病院で司法試験の勉強を進めていたルディは、夫に虐待を受けている女性・ケリー(クレア・デインズ)と知り合います。

彼女と少しずつ親睦を深めつつ、来たる裁判に司法試験と休む暇もないルディ。果たして「新米弁護士&無資格ベテラン弁護士」の初陣はどうなるのでしょうか。

人間ドラマとしての良さ

一応概要としては「新米弁護士が挑む巨大企業との裁判」なので、法廷モノの範疇に入れていい映画だと思います。実際法廷モノ好きとしてはその辺りの良さも存分に感じつつ、ただこの映画は「バリバリの法廷モノ」と言うよりはそこに挑む弁護士のドラマとしての色合いが濃く、そこがまたすごく良かったな、と。

裁判に関しては、いかにも役不足感漂う主人公サイドに対し、大企業の弁護士団ということでおなじみジョン・ヴォイトを始めとした「歴戦の強者」的弁護士たちとの戦いがメイン。裁判そのものでの対決だけでなく、被告・原告双方の事前聴取的な“前哨戦”もあり、むしろ「バリバリの法廷モノ」よりもより実情に近い、リアルな弁護士活動が見られたような気がします。「気がする」だけで想像なんですが。

それに加えて、原告である青年とその家族との(いかにも新米弁護士らしい)人間味のある付き合いであったり、その他の案件で関わりつつ部屋を借りることになった大家さんとの付き合いだったり、虐待を受けている人妻ヒロインとのアレコレであったり、ルディが日々接する人々との人間関係の描写に重きを置いた映画でもあります。

もちろん、相棒である“無資格ベテラン弁護士”デックとのやり取りも含め、ルディがどんな人たちと関わっていくのかを観ていくことで、彼の弁護士としての理念や素質を咀嚼しながら、それが(この当時における)現代においてどのような意味を持つのかを考え、最終的に描かれる結末でそれらがグワッと押し寄せてきて余韻を味わう、と。

もちろんネタバレになるので最後の部分は書けませんが、この物語の終わり方がとても素晴らしくてですね。思わず唸りましたよ。「なるほどそうかー、そういう話かー」って。

設定的にも少し「エリン・ブロコビッチ」に似たものがありますが、実話系のあちらと違ってこちらは創作なので、物語の終わらせ方によってだいぶ評価が変わってくる話になると思いますが、そこをしっかりうまくまとめてくれたおかげで「創作らしい良さ」の出たストーリーになっていることは間違いありません。

総じて最初から最後まで、主人公ルディの人間性に共感しながら「こういう弁護士がいて欲しい」と願える、人を信じたくなるようなストーリーが、もしかしたら今は失われてしまった“何か”のようにも感じられる「90年代っぽい感覚」がまたたまりません。

同時にそこがまた“今観る良さ”につながることも書いておきたいですね。きっと公開当時以上に受け取るものが多いのではないでしょうか。それが普遍性にもつながるし、さすがコッポラだぜと言わざるを得ません。

ソフトが欲しいレベルで好き

予想していた以上に素晴らしく、率直に言ってかなりお気に入りの映画の一つとなりました。

ちなみにタイトルの「レインメーカー」とは「雨を降らせるように大金を降らせる弁護士」のことだそうです。それだけ巨額の賠償金が見込める裁判を戦うことになるわけですが…結果はぜひご覧頂いて。

未見の方はもちろん、弁護士志望の方にもぜひ観て頂きたいですね。今さらですけど。

ネタバレーカー

最後、やめちゃうんですね。弁護士。もったいないよなぁ。

ただ彼が言ったように「自分がいつかドラモンド(ジョン・ヴォイト)のようになる時が来る」のが嫌なのはよくわかる。こういう「最もその仕事に向いている人物なのに純粋すぎるが故に残れない」ジレンマ、他でもよく観るよなぁと思いつつちょっとしんみりしましたね…。

本来であればこういう人たちが背負っていくべき業界なのに、そうではない人たちによって成り立ってしまっているから弾かれるという悲しみ。

この映画よりももっと後に日本であった話ですが、かつて検事でありながら調書をでっち上げ、良心の呵責からそのことを告白し、退職したとある実在の人物と重なります。真面目な人ほどドロップアウトせざるを得ない世界、これはなかなか見ていてつらい。

結局お金がもらえなかった=レインメーカーになれなかった、という落とし所は素晴らしいと思います。巨額賠償すぎるが故に無報酬になってしまうつらさ。でも結果が出てから会いに行ったジャッキー(原告母)の表情からも、もちろんルディの表情からも、「やるべきことをやった」満足感は十分に伝わってきたし、そこにお金がないからこそより感動的で良かったなと思います。

しかし僕は最後の方で「ここに無資格の弁護士がいます!」ってデックがやり玉に挙げられるんじゃないかとヒヤヒヤしてましたよ。結果そんな展開が出てこなくてよかったんだけど。

彼はまた“エセ弁護士”としてこの先も活躍していくんですかね。もうちょっと、ルディとのコンビを観たかったなと思います。

このシーンがイイ!

いろいろありましたが…差し障りのない伝え方ができるのは…ラストシーンかな。地味なようであの構図、雰囲気、セリフ、全部完璧だと思うんですよね。ものすごく良かった。

ココが○

細かくは書きませんが、綺麗すぎないお話なのが良いと思います。

それとやっぱり法廷に寄り過ぎないバランスの良さ。人間関係、キャラクターの描写がとても良かった。

ココが×

一つだけ…主人公がとある罪を犯すんですが、その扱いについては賛否両論ありそうな気もします。僕としては納得の展開でしたが、とは言え少し扱いが軽いような気もしました。

MVA

クレア・デインズは現状シーズン1だけ観終わっている「HOMELAND」の主人公でよく見ていたんですが、んまーこんなかわいい人だったとは。ショートカットが激お似合いで最高です。

もちろんマット・デイモンも良かった(若い頃としては一番だったかも)し、超イケオジちょいワル(古)時代のミッキー・ロークも良かったんですが…やっぱりこの人だよなー。

ダニー・デヴィート(デック・シフレット役)

ルディの相棒、無資格ベテランエセ弁護士。

もう最初にダニー・デヴィートが相棒、って時点で最高だなと思って観ていましたが、最後まで観て思っていた以上に最高だったなと。

この人のコミカルな雰囲気と人情を感じる立ち回り、半人前だけど現場に強い臨機応変さ、すべてが最高。これがただのイケメン先輩弁護士だったら全然つまらなかったんじゃないか、ってぐらいに大きな存在でした。

もっとも僕がダニー・デヴィート好き、っていうのもあるんですけどね。久しぶりに思いっきり彼が活躍する映画が見られて大変ご満悦でしたよ。

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