映画レビュー0847 『黄金』

定番になって参りました、「ネトフリ終了間際で観たい映画が無い時はBSから古い映画をチョイス」のコーナーです。どうも。

今回は今からちょうど70年前の映画、モノクロです。

黄金

The Treasure of the Sierra Madre
監督
ジョン・ヒューストン
脚本
ジョン・ヒューストン
原作
B・トレヴン
出演
ウォルター・ヒューストン
ティム・ホルト
バートン・マクレーン
アルフォンソ・ベドヤ
ジョン・ヒューストン
ロバート・ブレイク
音楽
公開
1948年6月6日 アメリカ
上映時間
126分
製作国
アメリカ
視聴環境
BSプレミアム録画(TV)

黄金

メキシコの港町で貧困に喘いでいたダブズは、偶然知り合ったカーティンとともに安宿に泊まった際、金鉱掘りを生業にする山師・ハワードと出会う。なんとか最初の資金を集めて3人で山へ入り見事金脈を見つけるが、次第に報酬を巡ってそれぞれが疑心暗鬼に陥り…。

人間って変わんねーなー!

8.0
文字通り“一山当てた”男たちの相互不信
  • 昔の映画らしい「金を得て本来の性格が露呈する」シンプルなお話
  • それぞれの価値観、美学の対立はわかりやすく、また今も変わらない普遍性を持つ
  • 気の利いたラストに人生訓を見る

タイトルがそのものズバリで良いですね。ひねってないストレートな感じが。

一言で言えば「金を掘り当てた男たちの、文字通り“黄金”を巡る深謀遠慮」ってところでしょうか。

主人公はハンフリー・ボガート演じるダブズ。彼はアメリカ人なんですが、今はメキシコの港町で暮らしている…というかなんとか生きていると言ったほうが良いような状況。毎日日銭をねだってその日暮らししているような、かなり貧しい状況に身を置いています。ちなみに数回たかった白いスーツを着たアメリカ人は監督のジョン・ヒューストンだそうです。

ある日たまたま隣のベンチで寝ていた、これまたその日暮らしの男・カーティンと知り合い、たまたま誘われた大工仕事に向かうとカーティンもたまたま参加していたってことでつるむようになるんですが、しかしその大工仕事は見事賃金を踏み倒され金が無いぞってことで超の付く安宿に一緒に泊まることにするわけです。

その安宿では結構な先客がいて、その中の一人の爺さんが金鉱掘りについて語っていたのを聞いていたダブズは、後日「これしかない」ということで爺さんに相談、じゃあカーティン入れた3人で掘りに行くか、ということで山へ。

街ではただの爺さんだと思っていたハワードがマジ山師感を発揮してグイグイ引っ張る中なんとか金脈を掘り当てた3人、順調に金を掘っていく中で「金をいつ分けるか」でちょっと議論になり、結果「毎日3等分でそれぞれ管理」という方法に落ち着くんですが…これが疑心暗鬼の始まりになるわけです。そりゃ「隠して管理」はいろいろ問題あるべやと思いますわね。そりゃあね。

その他いくつかの想定外の事態がありつつ、果たして3人は無事金を持ち帰ることができるのか、欲望はどこまで行くのかという人間の性との戦いを描いた物語でございます。

やっぱり「3人で大金を得てから欲望を潤滑油にして関係性が動き始める」点で、だいぶ後発ですが「シンプル・プラン」にも似た構図ですね。鑑賞中はサッパリ忘れていて今思い出したんですが。あの映画はこの映画にちょっと影響を受けているのかもしれません。

映画としてはやはりどうしても古い映画なので、最近の映画と比べるとややスピード感に欠けて少々テンポが悪い感は否めないんですが、しかし物語としては今でも十分通用する普遍的なものがあります。まあお金ですからね。古今東西を問わず、もはや人間であれば必ず直面するであろう「利を取るか徳を取るか」の内面の争いが対人関係に影響を及ぼすよってなお話ですよ。

序盤の「山に入るまで」のくだりがそこそこ長めなのと、途中途中のエピソードが結構間をたっぷりとって展開される分、今であればもうちょっと切り詰めてより鮮烈な印象を残しそうな感もある映画ではあるんですが、ただその昔ながらの丁寧さから来るある種の不器用な雰囲気のおかげで、より生々しい「そうだよね、そうなるよね」的なリアリティを帯びているような気もして、筋自体はシンプルなだけに間延びしてでも人間描写に時間を割く作りの方が合っているのかもしれません。

割とわかりやすい形で序盤に「俺は変わらないね」とか前フリしてくれるので、「コイツこんなやつだったのか…!」的な意外性もない、至って予想通りに進む話ではあるんですが、ただ終盤の展開はちょっと自分の予想とは違ったし、またその帰結に対する対処の仕方も自分の身になりそうな示唆に富んだものに(僕には)思えたので、なるほど「ありがち」と済ませられない味のある映画だなぁと思います。

ということでシンプルなだけに特に書くことも多くないわけですが、何せテーマが普遍的なものなだけに古い映画の中でも観やすい部類の映画に入ると思います。

僕はこの手の、ただの「古い映画消化」に留まらない、美学やその時々の立ち居振る舞いに関わるお話が好きなタイプなので、エンディングのまとめ方は後々自分の行動に置き換わる時が来るんじゃないかな、という気もして観てよかったなと思いました。

機会があれば、ぜひ。

黄金のネタバレ

ひねりようがないタイトルなのでひねりがないですサーセン。

僕が唸ったのは途中で出てくるコーディの使い方でしたね。正直ラストまで「いらねーじゃねーか」と思ってたんですが、最後の最後でカーティンの目的地としてコーディの家族の話が出てくる、っていうのはなんとも素敵で粋なラストだなと思いました。

カーティンの性格上、コーディの家族に知らせに行くのは違和感がない流れだし、自分もお金を失ったから後ろめたさも少し軽減された上でお金とは気持ちを切り替えて次に進める、というなかなか良い終わらせ方だと思いますよ。

あとはやっぱり「笑え!」って言うのがすごく良い。もうどうしようもない不幸に見舞われた時、あとはもう笑って気持ちを切り替えるしか無いんだよ、ってメッセージは実はバカに出来ない良いメッセージだな〜と思いました。

いい加減な終わり方じゃないんですよね。「笑う門には福来る」じゃないですが、やっぱりしんどい時ほど前向きになれるように無理してでも笑う、って実はすごい危機管理能力なんじゃないかなと妙に感心しましたね。それ故にあのエンディングは好きです。コーディの件も合わせて見事な終わり方だと思います。

このシーンがイイ!

エンディングですね。パッと見勢いでいい加減に終わらせたようにも見えそうですが、実はすごく示唆に富んだ見事なエンディングだと思います。これは忘れないでいたい。

ココが○

古くても観やすく、またエンディングの良さで価値観の醸成にも役立つのが最高。

自分が彼らの中に入って金を掘っていたとしたら果たしてどういう行動を取っていたのか、ありきたりですが「こうあるべき」を核に持って生きていくべきだなと改めて思いますね。

あとオープニングの街の風景が合成なんですが、地味ながら古い割に綺麗で違和感がないのが良かったです。

ココが×

上記の通り、そこが良さでもあるものの今の感覚で言うとややテンポが悪く感じられる面があるので、眠くなりそうなタイミングで観ると寝ちゃってもおかしくはない気もします。絵面も地味だし。

MVA

ハンフリー・ボガートは今でも名の知れた名優の一人ですが、同時期のスターと比べると特に二枚目感が強いわけでもなく、むしろアクの強い悪そうな役柄も多いんですよね。この映画でも主人公だけどダメな男だったし、「ケイン号の叛乱」でも嫌な上役だったし。そこが良いなと思うんですが、今回はこの人で決まりでしょう。

ウォルター・ヒューストン(ハワード役)

山師の爺さん。ちなみに監督のお父さんだそうです。

この役で助演男優賞を受賞したらしいんですが、それも納得の好々爺&人生の先輩っぷり。まさに「矍鑠とした老人」そのものでしたね。「かくしゃく」ね。読めませんよね。僕も変換したから漢字で書いてますけどね。言葉は知ってても字は知りませんでしたよ。

この人の笑顔がすべてを物語る、存在感たっぷりな名演技でした。

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