映画レビュー0878 『レボリューション・ティガ』
今回もまた大量に配信終了が予定されてまして、ずっと観たかった「グランドフィナーレ」とかもあったんですが、まあその辺はまだ観る機会も作れそうじゃないですか。レンタルもあるし、BSでやるかもしれないし。
そんな中、一部界隈で好評っぽいこちらのインドネシア映画にチャレンジしてみることにしました。去年観た「すれ違いのダイアリーズ」にこの前観た「メトロマニラ」よろしく、最近はアジア映画が熱いんじゃないか…と勝手に期待しつつ。
※情報が少ない映画なので一部名前表記がアルファベットですごめんよ
レボリューション・ティガ
アンギ・ウンバラ
アンギ・ウンバラ
Bounty Umbara
Fajar Umbara
コルネリオ・スニー
アビマナ・アルヤスティア
アグン・クンチョロ
プリシア・ナスティオン
ティカ・ブラファニ
Al
2015年10月1日 インドネシア
125分
インドネシア
Netflix(PS3・TV)

骨太ストーリーに激しいアクションの力作。
- “殺傷能力のある武器は違法”になった近未来のインドネシアが舞台
- それ故格闘技が盛んで体鍛える人多数
- かつて同じ学校で学んだ3人がそれぞれの道を歩み、違った立場で再び相まみえる
- それぞれの正義が衝突し、そして収束する先は…!
あらすじ
僕が観てきた中では、一応舞台としては「アクト・オブ・キリング」がありましたが、“インドネシア制作”の映画はこれまた初めてですね。
これは僕だけかもしれませんが…どうしても東南アジアの映画というと、国も発展途上なだけに妙に安っぽい映画が多いんじゃないかみたいなイメージが強いんですが、しかしこの映画を含め、最近観たいくつかの映画はどれもすごく頑張っていて、なかなかバカに出来ないものがありますね…。
っていうか(一部を除いた)邦画の方が熱意より商売臭が強くなっちゃっててダメなのかもしれない。詳しくないけど。
ということで舞台はインドネシアなんですが、西暦で言うと(確か)2035年ぐらいだった気がします。劇中のセリフで「20年前はよく聞いたな」的なセリフが何度か出てくるので、おそらく公開年である2015年の20年後辺りを想定しているんでしょう。
度重なる争いに終止符を打つべく、「殺傷能力のある武器の使用を厳しく禁じる」ことを掲げた政治家が国を変革、表向きは「武器による殺人が無くなった近未来」なんですが、ただ実際は当然ながらテロリストや警察も普通に実弾の銃を持っていて、表立っては使わないものの裏では割と普通に使われている…というような状況。
ただ殺傷能力のある武器の使用が厳しく禁じられているという建前上、世間的には格闘技に精を出す風潮が支配的になっているとのことで、この映画の主人公たちも格闘技の達人として成長した青年、という設定になっています。「格闘アクション見せたいが故の設定丸出しやな」とか言うのはやめてあげましょう。
この映画の主人公は3人いまして、それぞれ順を追って各人のパートを見せつつ最後はみんなで、的な流れ。
最初に描かれるのはアリフ。格闘技に長けた敏腕警察官として上層部からも認められているものの、とある事件の捜査中に想定外のトラブルに巻き込まれます。
2人目はラム。彼は新聞記者としてこれまた実力を認められているものの、この時代のインドネシアでは「テロリストの温床」的に見られている敬虔なイスラム教徒のため、いろいろと会社からも疎まれているご様子。これまた結構な格闘技の実力を持っている模様。
3人目はミム。この人はガチの宗教家として生活しており、これまた世間的には「テロリスト予備軍」的に見られているようです。
この3人はかつてともに学んだ友人同士であり、今も交流を続けているようなんですが、ある日起こったとある事件によって、それを捜査する警察の人間・アリフ、その事件を取材して記事にしようとするラム、そして警察からその事件を起こした集団の一人と見なされたミム、という形で引き寄せられる…というお話です。
そこにさらにアリフの元カノ・ララスが謎めいた女性として登場、果たして彼らの友情は、そして正義とは…! 的な…!
「頑張ってる」映像
そんなわけで近未来が舞台なので、「インドネシア版近未来SF」としてそれなりに未来感を演出しつつのアクション映画になっております。
遠景はCG感強めだし、PCやモバイル端末系は軒並み透明で「スケルトンブームなのかな?」的な感覚も覚えつつ、しかしなかなか頑張っている映像は良い意味で「東南アジアのSF」感を高めてくれるものがあると思います。
比べるのが酷なことはわかりつつ、どうしても普段観ているのが予算も(おそらく)文字通り桁違いであろうアメリカ映画なので、どーしても「頑張ってるね」と上から目線で観ちゃうのは避けられません。事実、「頑張ってる」レベルであって、同じかそれ以上とは言えないんですよね。
ただその辺の表現についてはサブ的なものなので、多少の違和感は目をつぶれるレベルだとも思います。「爆発時のCG丸出し感すげぇ」とか。
逆に僕としては「はー、東南アジアでもこういう映画作るようになったのかー」と驚きや感慨のような感覚の方が強かったです。この世界で勝負を挑もうとする勇気と実力があるってすごいな、と。「テ●フォーマーズ」より全然良くできてんじゃね、みたいな。観てないけど。
ジョン・ウー作品かのようなアクション
とは言えその近未来感が重要な映画というわけでもなく、ぶっちゃけ「武器の使用が禁じられたために格闘技が主流になる」時代にしたい設定上(今とは違う時代にするために)近未来にするしか無かったような印象で、物語自体は現代でも十二分に通用するお話でした。
そう、つまりはメインは格闘シーンなんでしょうね。
ほぼ事前情報無しに観たので、正直ここまでアクション寄りの映画と知っていたら(最近アクション映画にあまり興味がないので)多分観ていなかったと思います。それぐらいにアクション推し。
ただこのアクションがこれまたなかなか頑張っていて、ちょっと多用しすぎじゃないかとは思いましたがスローを効果的に使い、きっちりタメてキメてのアクションシーンはなかなか良かったと思います。
特に最初の1人目として描かれるアリフは、銃(ゴム弾)を持って格闘をキメていく辺り「これガン=カタじゃね!?」的な感じで楽しめ、ああ「リベリオン」観といて良かったぜ、みたいなどうでもいい情報。
スロー多めのアクションを観ている感じは、“初めて観たジョン・ウー作品”的な雰囲気でちょっと新鮮な印象もありました。
ストーリーもなかなか骨太
ちょっと「BGM音でけぇな」とか「効果音激しいな」とか「打音引っ張りすぎてズレすぎじゃない?」とか、ちょいちょい気になるポイントは出てくるんですが、それでもやっぱり(勝手に低めのハードルをスタートに設定しちゃってごめんなさいと思いつつ)「なかなかやるじゃねぇかインドネシア…!」とびっくりするぐらいにはちゃんと作られている映画だと思います。
何より物語がですね、どっかで観たような内容ではあるものの、きっちりと勘所を押さえた「陰謀渦巻くサスペンス風味」に仕上がっていて、これまたなかなか良いんじゃないかと。ただのアクションにとどまらないのが◎。
とは言えそこから「予想を裏切る」ところまでは行かないのが、少々目の肥えた映画好きの面々には物足りない感もあるでしょう。あそこでそっちじゃないチョイスであれば…とか。
その辺含めて全体的に素直な感もあり、そこがもう一歩だと思う反面、「全力で良い映画を作るぞ!」という意気込みのようなものも感じられ、やっぱりなんだかんだ言って「やるやないかインドネシア…!」という結論です。結局。
見事なまでに続編ありまっせ的な終わり方をするので、そういう意味では物足りないエンディングでもあるんですが、ただ一応この映画で描かれるものにはある程度の決着を用意しているし、ちょっと続編も観たくなっちゃったじゃねーかよ感も拭えません。
いやホント、なかなかやりまっせ。インドネシア映画。
このシーンがイイ!
雨降る中のバトルシーンはやっぱり見映えしますよね。足場も水浸しで大雨の中バトル、熱い。
ココが○
かなりこれでもかとアクションを盛り込んでいるんですが、その割にストーリーもおざなりにせずにしっかり作っているのは好感が持てます。むしろアクション減らしてもっとストーリーを丁寧にすれば良いんじゃね? とも思いましたが多分それは好みの問題。
ココが×
結構重要な人が急に出てくる気はしました。「あれ? なんかおなじみ感出してるけど出てきてたっけ?」みたいな。もう少しストーリー上重要なキャラをちゃんと見せてほしかったかなぁと。
あとはやっぱりラスト。「ついにここでこてんぱんに…!」と期待してたらあっさりケリがついてすごく寂しい。そして「まだまだ続くよ!」的なエンディングはやや消化不良感があって惜しい。
MVA
アリフ役のコルネリオ・スニーさん、どことなく「少しイケメン側にポイントを振り直したマイケル・ペーニャ」って感じでしたね。いや良かったけど。
彼が主人公なのは間違いないと思いますが、今回はなぜかジャケットでは中央に陣取っているこの方にしたいと思います。
アビマナ・アルヤスティア(ラム役)
ストロングスタイル新聞記者。
やっぱり「普段は新聞記者のくせに強い」ってズルいじゃないですか。一番男がグッとくるタイプの役だと思うんですよ。
おまけに一番イケメンだったと思うし。ただ(物語上は)多分3人で一番弱いっぽいんですけどね。みんな強いんだけど、比べると。
おそらく一番強いのはミムだと思うんですが、彼も彼でまた底知れぬ強さみたいなものが見えて良かったです。
まあ3人とも良かったですよ。やっぱり。ヒロインがシャクレ気味だったのがちょっと残念だったけど。