映画レビュー0871 『タイタニック』

いやついにですよ。ついに。自分以外の人にはまったくどうでもいい「今さらかよ」ってチョイスですけども。個人史における歴史的和解ですよこれ。(別に喧嘩してない)

もう21年も前の映画になるんですか…当時はこの映画と「L.A.コンフィデンシャル」がアカデミー賞有力候補と言われていて、でもこの映画の方が超が3つ付くぐらいの大ヒットを記録していたために、L.A.の方は「良作なのに賞に恵まれなさそう」みたいな話をされていて、天性の天の邪鬼としては「それならこっち観に行きたいじゃん」と銀座のみゆき座まで観に行ったんですよ。懐かしい。

その後の流れはご存知の通り、なんですが…今となってはもしかしたら「L.A.」の方が映画ファンには評価が高いかもしれないですね。

去年の年末にAmazonで「ブルーレイ6枚3000円」というキャンペーンをやっていまして、その時に「いい加減フォー・ウェディング観るかぁ!」と買うことに決め、他何にしようと悩んでいたところに「タイタニックどうすか」とオススメされてチョイス、結果6枚中未鑑賞が4本という勝負に出たんですが、その中の1枚ということで手持ちのブルーレイによる鑑賞になります説明なげぇ。

タイタニック

Titanic
監督
脚本
出演

レオナルド・ディカプリオ
ケイト・ウィンスレット
ビリー・ゼイン
デビッド・ワーナー
フランシス・フィッシャー
ビル・パクストン
グロリア・スチュアート
キャシー・ベイツ
ダニー・ヌッチ
ジェイソン・ベリー
スージー・エイミス
ルイス・アバナシー
ジョナサン・ハイド
ヴィクター・ガーバー
バーナード・ヒル

音楽
主題歌

『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』
セリーヌ・ディオン

公開
1997年12月19日 アメリカ
上映時間

194分

製作国
アメリカ
視聴環境
自己所有ブルーレイ(TV)
タイタニック

キャメロン節への適性次第。

7.0
実際に起きた「タイタニック号沈没事故」をベースに描く、貧民とセレブの恋愛
  • 「タイタニック号沈没の時、裏ではこんなドラマが」的な恋愛物語
  • 現代のタイタニック号調査が発端のため、二つの時代を行き来する
  • 前半は恋愛強め、後半はパニック映画さながらの迫力
  • 映像は今観てもとんでもなく、お金かかりすぎ

あらすじ

ということでね。今さらこの映画のあらすじとかいるのかよと思いつつ書きますけども。

一応スタートは(この映画公開当時の)現代で、タイタニック号の沈没から84年後の1996年。いわゆるトレジャーハンター的なブロックを中心としたメンバーがタイタニック号の調査をしつつ「タイタニックと共に沈んだ」と言われる超希少ダイヤモンドのネックレスを探し出そうとしていたんですが、狙いの金庫にダイヤモンドは無く、代わりに見つかったのが一人の裸婦を描いた絵でしたよと。

それをニュースで観ていたお婆さんが「これ私だわ」とブロックたちに連絡を取り、現地に入ってその絵の経緯を語るテイで1912年のタイタニック号処女航海から沈没までを回想する、というお話です。ちなみにこれまた今さらの説明ですが、当時史上最大と言われた豪華客船・タイタニック号は処女航海で沈没しております。

主人公であるジャックはたまたま出港直前にチケットを賭けたポーカーに勝利して3等客室(要はエコノミー的な客室)に乗り込む貧しい若者、対するローズは超の付くお嬢様として1等客室(同じくファーストクラス的な)に宿泊、乗り気でないフィアンセとの結婚のためアメリカへ向かう、という状況。

この二人がひょんなことから出会い、交流を重ねていくことで惹かれ合い、果たして身分の差を乗り越えられるのか、そして“約束された”沈没を生き延びることができるのか、というようなお話です。

今も活躍する俳優二人の共演がやっぱり見もの

で、現代で回想している婆さんがローズその人なんですが、このローズの若い頃を演じるのがまだ駆け出しの頃のケイト・ウィンスレット、そしてその相手役となるジャックを演じるのがこの映画で世界的に人気が爆発することとなる、ご存知レオナルド・ディカプリオでございます。

最もケイト・ウィンスレットはあの我らがおヒューたちと共演した「いつか晴れた日に」でアカデミー助演女優賞にノミネートされていたり、ディカプリオは「ギルバート・グレイプ」(これも観ないと)でアカデミー助演男優賞にノミネートされていたりするので、二人ともいきなり出てきたと言うよりは「映画ファンの中で有望視されていたのが一気に世界的に知れ渡った」ような形なんでしょう。特にディカプリオの当時の人気ぶりたるや相当なものでしたねぇ…懐かしい。

この共演以降、いかにもミーハーな日本のファンからは「付き合ってたりするんじゃないの?」的な論調も結構見かけたような気がしますが、ご存知の通りこの二人は今でも親友と言える間柄だそうで、この映画とは違った形とは言え良好な関係性を築いているのはなかなか良い話だなと思う次第です。

それ故時を経て観るこの映画の感慨もまた一層深まることでしょうよ。実際。

恋愛としてはド定番、それ故恋愛映画としては今ひとつ

「身分の違う二人が恋をする」という作りは言うまでもなくドベタなものなので、正直恋愛の流れとしてはそんなに思うところって無いと思うんですよ。もちろんあのシーン良いなとかそういう細かい部分は各々出てくるとは思いますが、こと「恋愛映画としての恋愛の流れ」については特筆すべきところもなく、また結末もどうしても予想しやすい(船の沈没が絡んでくる上にローズが生きているのは最初に知らされる)ので、恋愛映画の作りという意味では「言うほどすごい映画かな?」と思っちゃうのは仕方がないのではないかなと思います。

これはちょっとこの映画のネームバリューが上がりすぎちゃった弊害みたいなものもあるでしょうね。同じキャメロンの「アバター」が抜くまで映画史上最高の世界興行収入を誇っていたわけですからね。そりゃあハードルも上がって然るべしですよ。

ましてやこちとら20年も「タイタニックなんかで感動してたまるか…!」とナゾの反骨精神を抱えていた天の邪鬼っぷりですからね。実は数年前にBSでやっていて録画して観ようと思ってはいたんですが吹き替えだったので断念した、という経緯もあったりするんですが。

気になるキャメロン節

ただ恋愛としてはそんなに期待もしてなかったし、なにせこれだけの大作なのである程度は情報も入ってきちゃうしで「まあこんなもんだろうな」とは思ってたんですよ。これ以降の恋愛映画もたくさん観てきたから目が肥えてきている面もあるだろうし、おヒュー好きだし。(関係あるのか謎)

おまけに僕はどうも「ラブコメは好きだけどド恋愛はダメ」っぽいので、なおさらそんなに惹かれなかった面はあったんだろうと思います。

ただその物語全体に対する感想を抜きにしてもちょっと気になったのが、キャメロン監督の個性と思われる部分。

アビス」以来2本しか観ていないのに個性を語るのもどうかと思いますが、両方に共通してどうもキャメロン監督の映画は純粋すぎるというか、「あざといものをあざといと思わずに素直に送り出しちゃってる」ような匂いがするんですよね。

この映画で言えば、主役二人が「お互いを見つめている」テイのカメラ目線の多用。もうこっ恥ずかしくて観てられない。一度や二度なら良いものの、それがまた結構出てくるんですよ。こっ恥ずかしくて観てられない。(再)

アビス」で言えば終盤の展開がそうだったと記憶していますが、共通してものすごく純粋無垢な世界を丁寧にわかりやすく提示してくれるような印象で、ひねたおっさんになってしまわれた存在としては「ああはぁ…まあそういうのはいいからさ…」ってなっちゃうんですよね。それがすごく気になりました。

一言で言うなら「うまく騙して欲しい」ストレスとでも言ったら良いでしょうか。素直にストレートに恥ずかしげもなく真っ向勝負してくる感じがして、それはそれですごく素敵なことだとも思うんですが、ただ「ドベタ恋愛を純粋無垢な目線で」描かれると…ちょっと乗り切れない面があったかなと思います。

素直な作りが良い映画もたくさんあるし、基本的にはそっちの方が好きな人間なんですが、ことキャメロン監督の映画となるとちょっと素直さにズレを感じると言うか、少しだけ観客をやや幼く見ているような作りが見え隠れするような印象があって、そこが自分には合わないなぁと。

後半の沈没フェーズは迫力も危機感も申し分なし

後半はいよいよ「タイタニック号沈没」のフェーズに入ってくるわけですが、こうなるともうパニック映画よろしく人間の(善悪両面での)本性が登場し、ドラマチックな展開に息を呑む時間になって大満足でしたよ。

好みで言えば、この沈没フェーズのパニック映画感を中心にして、各人のバックグラウンドやらその後のドラマやらを中心に描いてくれればおそらくかなり好みの映画になったと思うんですが、まあご存知の通り恋愛映画ですからね。

「うわーもうちょっと船長周り観たかったなー」とか消化不良感が強くなってしまい、少々残念でした。

とは言えさすがこれだけの大作なだけにお金のかけ方も半端なく、20年経った今でも(ブルーレイで映像が綺麗なこともあって)まったく古さを感じさせない迫力と危機感はお見事。それだけにこっち主体で観たかったよなぁ、と思っちゃうんですけどねー。

ポセイドン・アドベンチャー」的にパニック映画としてタイタニック号沈没のドラマを作る人、出てこないかな…。まあなにせこの映画がとんでもなくヒットしちゃったし、その上「沈没パニック」の大先輩もいるしで作ろうと思う人もなかなか出てきにくい面はあるんでしょうが…。

なんだかんだ言いつつ良い映画でした

結局あーだこーだ言いつつも最終的にはじんわり来たし、良い映画であることは間違いないと思います。あとはキャメロンの作りに合うか合わないか、それと「純愛映画」が好きかどうかがポイントかなと。

逆に言えばそのどっちも合わないと思った自分ですらそれなりに感動したし、「さすが“タイタニック”だな」と思った面も多々あったので、やはり歴史に残る名作であることは間違いないんでしょう。

ようやく肩の荷が下りたような気持ちもあり、観て良かったと思います。しかしようこんな長尺の映画がこれだけヒットしたもんだね…。

ネタバレック

一応それなりにハラハラしたいと思っていたので、絶対死ぬだろうと思いつつも「ジャック生き延びエンディング、ワンチャンあるんじゃね!?」と思うようにして観ていました。が割とあっさり亡くなってしまってちょっと寂しい。でもあそこはあざとくやると一気に醒めそうだし、あれでいいんだろうな…。

ラストシーンは解釈が割れているそうですが、僕は単純に「久々にジャックとの日々を細かく思い出した余韻で観た夢」なんだと思いました。ただ参列者的な人たちが全員沈没で亡くなった人たちだったそうなので、「彼らのいる天国に旅立った」という解釈もまたなるほどと思います。その方が劇的だしね。

そう言われればあのシーンに“不沈のモリー・ブラウン”を演じたキャシー・ベイツとかいなかったような気がするし、故人でまとめたならそっちの方が正しそうな気もする。

しかしそもそも論ですが「現代の話」はあった方が良いのかな? と少し引っかかった面があったことも書いておきます。

なにせ3時間を超える映画だし、現代の話はバッサリカットしてタイタニック乗船から悲劇の別れで涙エンディング(で2時間程度)の方がグッと来てたんじゃないかと思うんですが。

別にこの宝石グッバイエンディングも嫌いじゃないですが、果たしてこの現代の話があったおかげで感動が増したかと言われると…そうではなかった気がする。

おそらくはハッピーエンド(に感じられるような流れ)にしたかったんだろうとは思うんですが…。現代フェーズに上映時間をここまで長くする必要性があるほどの重みを感じなかったんだよなぁ。実はその後ジャックが生きていて…とか別のエピソードが挟まるなら話は全然違ってくるとは思いますけどね。

このシーンがイイ!

もうベタ過ぎて申し訳ないんですが、車のガラスに手がドンッ! でしょうね。あれはね。もう。いいシーンでしたよ。

次点でこれまたベタですが演奏を続けるメンズですよ。一応は史実に則っているらしいし、ああいう姿にはやっぱり弱い。

ココが○

僕はそこまでハマりませんでしたが、それでもやっぱり娯楽としての映画の一つの到達点ではあると思うんですよ。ものすごいお金をかけて、大量のエキストラも使いつつ実際にあった事故にフィクションを盛り込む、ってやっぱりすごい。

実際にあった事故なだけに、鑑賞後にいろいろ調べる楽しみ(いわゆるWikipedia見すぎる問題)があるのも好きです。こうやって少しずつ知識が増えていく、そのきっかけになる映画はやっぱり良い。

ココが×

あくまで好みの問題だとは思いますが、僕としてはやっぱりパニック映画的な人間ドラマ、人間の業の部分をもっと観たかったし、そういう匂いをさせていただけに消化不良感が強くて残念でした。

「世界一の豪華客船が沈む」までの数時間、そこを描くだけでも傑作になると思うので…恋愛いらねーな、っていう元も子もない感想。

それだけパニック映画としても惹きつけるものがあったとも言えるんでしょうけどね。逆にもうちょっとその辺を削って恋愛に特化してくれれば諦めがついたのかもしれません。

MVA

主演の二人以外は誰が出ているのか知らなかっただけに、最初にいつもとイメージの違うビル・パクストンが出てきてびっくり、さらに「キャシー・ベイツも出てたのか!」と嬉しい誤算。やっぱり良かったなぁ。

とは言えこの映画はやっぱり今も一流の演技派俳優&女優である主演のどっちを選びますか、って話なんだと思います。すごく悩むけど。こっち!

ケイト・ウィンスレット(ローズ・デウィット・ブケイター役)

今作のヒロイン、17歳(見えないけど)のお嬢様。

この頃のディカプリオはやっぱりあまりにも見た目が綺麗すぎて、もちろん演技も良いんだけどそんなことよりこの顔を見ろよ感がすごい。皮肉ですが演技とかどうでもいいぐらいに見た目が整いすぎていて、そういう意味ではあまり面白みがないなと。

一方のケイト・ウィンスレットも若いしかわいいし(今もだけど)肉感的でエロス漂わせてるんですが、「上流階級のお嬢様」であるというところが演技的な見どころ(3等客室の中に入ってギャップを見せたりとか)につながる面が大きいので、その分ディカプリオよりも美味しい役だったかなと。

そもそもこの頃、見た目的にはこの人以上に「ローズっぽい」女優さんは結構いたと思うんですよ。でもそこを演技力で完全に自分のものにした、やっぱりこの人女優やで、という当たり前の感想です。おっぱいも出てくるし。

もう一人、ローズのフィアンセを演じたビリー・ゼインが敵役としてとても良かったことも書いておきたいと思います。

もう終始クソ野郎なのでそこがベタではありつつ良いなと。逆に最後の方で良い人感出されてたらかなり醒めていたと思うので、この人の徹底したクソっぷりとそれに対する苛立ちを手助けする演技も良かったですね。

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