映画レビュー0963 『手遅れの過去』
またもネトフリに戻りますが、この映画は元々ツイッターで「スモール・タウン・クライム」をオススメしてくれた奥様が「こっちもいいですよ!」と教えてくれた映画で、この度こちらもまた配信終了が来たので観たよ、と。
どちらもジョン・ホークス主演の探偵モノ、そしてどちらも日本では劇場はおろかソフトでも観ることができず、ネトフリで配信終了しちゃったらもう観るすべがないんですよね…。
良いのかそれで! おい! 関係者! 関係者バーロー!!
※パッケージが無いのでポスターを元にパッケージの比率で絵を描いたらジョン・ホークスがものすごく小さくなりました
手遅れの過去
デニス・ホーク
デニス・ホーク
ジョン・ホークス
ヴェイル・ブルーム
ジョアンナ・キャシディ
ジェフ・フェイヒー
ロバート・フォスター
ディーチェン・ラックマン
シドニー・タミーア・ポワチエ
クリスタル・リード
ロバート・アレイア
2016年3月18日 アメリカ
107分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)

長回しで余韻が残る、独特の味わい。
- 長回し数シーンのみで構成される独特な映画
- 事件解決は割と早いものの、そこから先が本番
- やや言葉遊びが多く鼻につく面もあるものの、全体的にたまらない雰囲気
- ほんのりメメントっぽさも
あらすじ
いやぁこれはなかなか…映画としてはかなり変わった映画だと思います。
ぶっちゃけ話としてはよくあるものかもしれないんですが、構成が変化球なので独特の雰囲気と味わいがあって、それ故に強く心に残る良い映画になってますね。“見せ方”の違いでここまで変わるのか、と勉強になりました。すごく良かったです。
主人公はジョン・ホークス演じる私立探偵のメル。彼は物語冒頭でどうもトラブっているらしいドロシーという女性から3年ぶりに連絡を受け、「わかった助けに行く」とすぐに彼女のところへ向かうんですが着いた頃には時すでに遅く、彼女はすでに死亡。
その後独自に捜査を続けていたメルは、彼女がなぜ殺されるに至ったのかを調べ、犯人の元へ向かいますが…あとはご覧ください。
長回し数シーンであるが故に理解しやすい巧さ
この映画、イメージ的にはハードでボイルドなアレですよ。いわゆるひとつの。なんならちょっと懐かしいなぁと思えるぐらいに昔のハードボイルド感を漂わせた物語です。
そんなわけで、おそらく最後まで観て振り返ると…そんな大した話ではないというか、まあどっかで聞いたことがあるような話ですよ。きっと。
でもその見せ方が重要なわけで、この映画はなんと全編”長回しのシーン”しかありません。
なんでも監督がフィルムにこだわって撮ったらしく、(詳しくは知りませんが)長回しそのものにフィルムの限界までという制約があるので、「バードマン」のように(あれはあれで編集でくっつけてるのでまた別ですが)全部つながった一つのお話という形ではなく、あくまで「長回しの数シーンで構成された」映画です。
何シーンなのかを書いちゃうと今が途中なのか終わりなのかがわかっちゃうので「数シーン」とだけ書いておきましょう。
それにしたって「全部が長回し」の映画というのは僕が知る限りでは「バードマン」以外に観たことがないし、当然ながらそれだけ役者さんたちもスタッフも大変なのは当たり前の話で…いやこの時点でなかなかすげぇな、変わった映画だなと思うわけですが。
ただその長回しという手法も、必ずしも珍しさ重視で採り入れただけということでもなさそうで、「長回しの数シーン」であるが故の理解する楽しさだったり後味だったりが重厚に押し寄せてくる感覚があって、これはなかなかすごいな、良い映画だなとしみじみ思いました。
当然ながら「数シーン」しかないので、観客が得られる情報は限られるわけですよ。それはつまり「ん? これどういうことだ?」と思うことはあっても、その内容自体は複雑に入り組んだものではないし、最後の方まで自分の中で抱える疑問がある程度ストックしておける良さがあるんですよね。
シーン数が少ない分、よくありがちな「そういやそんな話あったね」とか「結局アレなんだったんだよ」みたいなものが無く、ストレートにいくつか抱いていた疑問をきっちり答えて幕を閉じる話になっているので、おそらく観る人たちの理解度にあまり差が出ない映画なんじゃないかと思います。
すべての映画において必ずしもそれが良いとも限らないとは思いますが、この映画に関してはその理解のしやすさが「長回し数シーン」という作りによってもたらされていて、同時に長回しだからこその「デカい塊」状態の情報をガシッとくっつけていく気持ちよさみたいなものもあったんじゃないかなと。
物語自体はそんなに気持ちの良いスカッとした話では無いんですけどね。ただ「理解した上で物語についていろいろ考えちゃう」のはそれはもう物語そのものに対する好き嫌いの問題になってくるので、とりあえず観た人全員「好き嫌いが判断できる土俵」に上げてくれる作りの巧さみたいなものはあったんじゃないかなと思います。
なんでもこの監督はこれが長編初監督だそうで。すごいぜ!
てっきりジョン・ホークス主演でまたも脇役にロバート・フォスターが出てきてたから「スモール・タウン・クライム」と同じ監督なのかと思ってたぜ…。
この構成順だからこその後味
また長回し数シーンでありながら、時系列が前後するために「これはもしやこういうことか…!」と“気付き”が得られる気持ちよさもあり、なんならちょっと「メメント」っぽさすらある点も面白い。
メメントっぽいとなると難しいんじゃないか…と思いがちですが、上に書いた通り比較的理解しやすい内容なので、あの映画ほど頭を使う話でもないのにあの映画みたいに「そういうことか〜!」と頭を殴られる気持ちよさみたいなものもある、というなかなか貴重な映画ではないかなと。
これはやっぱり“どのシーンを何番目に持ってくるのか”がすごく重要で、最後まで観ると納得の順番だし、この順番にしたからこそ「メメントっぽくてニクいぜ」と思わされましたね。
特にラストシーンは、登場人物に起こる事柄自体は一番どうでもいい内容だったんですが、それでもやっぱりラストに持ってくるべき一番良いシーンが組み込まれているという…いや初監督でこれはなかなかエロいじゃねーか監督、と最大限の褒め言葉で讃えたいと思います。素晴らしいですね。ホント。
なんでこんな良い映画がもう観られないんだと激怒
またタイトルがねー。原題も邦題もどちらもとても良いですね…。手遅れなんですよいろいろと。一つじゃないの。いろいろ手遅れなの。その切なさたるやもう…。
「あとはもう観てくれよ」と言いたいところですがまたネトフリとかアマプラとかで配信してくれない限り観られないんですよね、これ…。なかなかひどい。
「スモール・タウン・クライム」共々ソフトで持っておきたくなるぐらいに好きなんだけどなぁ…。どっちも話としては変わったものではないものの、雰囲気が抜群に良くてたまに夜遅くしっぽり観たくなる魅力がある映画だと思います。
もうちょっと言いたいことがあるんですが…それはこの後に。
このシーンがイイ!
ラストの長回しの中にある1シーンなんですが…当然書けないっていうね。僕はアレで瞬間的に「バッファロー’66」を思い出しました。
それともう一つ、キスシーン。あれめっちゃかっこいいしあれができたら絶対モテるな、って思い知らされましたよ。女子はたまんないんじゃないかな、あのシーン…。
ココが○
上に散々書いた通り、他にない作りと、それを活かしたシナリオ。
IMDbでは7点行ってないんですよね。ものすごい解せない。かなり良い映画だと思うんだけどなぁ…。まあ評価は個人差ありますからね…。
ココが×
一つ思ったのは、少々言葉遊びがすぎるかなと。特に前半は何の物語かわかってない状態で、妙に気取ったやり取りが続くので…「うーん、ちょっと(セリフが)カッコつけすぎじゃないかなー」と感じました。そこがなければもっと評価してたかもしれない。
あと好みの問題で申し訳ないんですが…ジル役はもう少し綺麗な人が良かったなぁ。ドロシーはすごくかわいかったので満点です。
あと奥さんいい加減パンツぐらい履けよ。
MVA
オープニングで出てくるドロシー役のクリスタル・リード、すごいかわいくてその時点で最高でしたね。しかもストリッパーって聞いてワオ、みたいな。
でもストリッパーのときは化粧が濃くて残念でした。ちくしょう。人生なんてそんなもんだ。お前はいつもそうだ。
ということで今回もまたこの方に。
ジョン・ホークス(メル・サンプソン役)
主人公の探偵。
全然無関係の話なんですが、「スモール・タウン・クライム」で探偵に受かったので、その後の話としてこれがあった…とか妄想すると楽しいかもしれません。いや絶対違うんだけど。
まーね、とにかくかっこいいし色気がすごい。僕とは正反対の細身で渋いタイプの方なのですごく憧れますね…。こうなりたい、こういう男になりたい、って思わせるかっこよさ。
劇中で一曲披露する場面もあるんですが、そこがまたすごく素敵でね…。たった2本でかなりのお気に入り俳優になりました。またこういう映画作って欲しいなぁ…。